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(どうしよう……この世界、当然のようにスマホなんてないし、はぐれる予定もなかったから待ち合わせ場所も決めてないし……)

「迷子になった時はそこを動かない方がいいってのは、この世界でも有効なんだろうか……?」

 リアーヌはポソリと呟くと辺りをキョロキョロと眺めながら、なるべく邪魔にならない場所へと移動する。

(目立ちにくくなっちゃったけど、道の真ん中で待ってるわけにも行かないしー。 ここからでも通りを歩いている人はちゃんと見えるから、流石にゼクスレベルのイケメンを見落とすことはないでしょ……)

 リアーヌは通りを歩く人々の中に見知った顔が無いかを確認しつつ、暇つぶしに人間観察を始めた。

(ーーしっかし……やっぱりこの世界の顔面偏差値バグってるよねー……店員さんなんか「あれ? 攻略対象者ですか⁇」ってレベルの人ゴロゴロしてるし、普通に歩いてる人たちも軒並みレベルが高い……ーーヨーロッパ系の顔立ちだから、彫りが深くて格好よく見えてるだけ……? イヤでも、美形は国を変えたって美形だろー)

 そんなことを考えていたリアーヌの前をゲームキャラのような愛らしい女の子たちが、キャラキャラと楽しそうな笑い声を上げながら通り過ぎていった。

(……このキャラデザの差よ……ねぇ開発チームぅ、私のキャラデザはもうちょっと頑張れたんじゃなーい? せめてあと数ミリ鼻を高くして、おっぱい大きくしてくびれさせてさぁ……ーーまぁ……実際のところは、私みたいなモブのキャラデザなんかやってないんだろうけどー)

 リアーヌは少し唇を尖らせながらも、ため息のような息を大きくき出すと、気を取り直したように再び道ゆく人々を眺めていく。

 元の世界ではありえなかったカラフルな髪色に目を輝かせつつ、様々な形の洋服に興味を惹かれた。
 ドレスを着ている者たちもいれば、普段着の者たちも多かった。
 その普段着も元の世界から見るとドレスのようなもので、リアーヌらふわふわと揺れる膨らんだスカートの中が少しだけ気になった。

(やっぱり骨組みみたいなスカート付けてから着てるのかな……? あれ付けると、スカートがいっさい足につかないから、履くの忘れたんじゃないかってたまに焦るんだよねー……)

 そこまで思って、一番初めにその勘違いをしてしまった自分を思い出して、思わず笑いが漏れた。
 ふふふっと漏れ出た自分の声が意外に大きくて、リアーヌは慌てて手で口元を隠すように鼻をいじってごまかした。
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