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「しかし……ラッフィナート男爵家の婚約は陛下の許しを得た正式な契約です。 ーー手出しできるかどうか……」
パトリックはフィリップが自分にゼクスとリアーヌの婚約をどうにかさせようとしているのだと勘違いをして、じっとりとイヤな汗をかきながら困ったように言葉を重ねていく。
「手はある。 あの二人が婚約しようと結婚しようと、我々が手出しできて、ラッフィナートを通さずに手を借りられるーーそんな状況への道筋さえあればいいんだ」
「道筋、ですか……」
はっきりとした願いを口にしないフィリップに、パトリックはその心の中で大いに慌てしつつ、必死に頭を回転させていた。
フィリップは時たま、こんな自分達を試すような物言いをするお遊びを仕掛ける時があるのだ。
ここで答えが分からずとも、見当違いなことを言ったとしても大きな変化は起こらないのだろう……ーーしかし必ず、小さな変化は起こる。
そしてそれが積み重なってしまえばーー
(そんな恐ろしいこと考えたくもないっ! 考えろ‼︎ 道筋……楔……ーー重要なのはリアーヌ嬢との繋がりだ。 それもラッフィナートを通さずとも直接働きかけられるような……ーー)
そこまで考えてパトリックは困ったように少し唇を窄めた。
現状でそれができる人物が、おそらくは一人しかいないこと。
そしてその人物であった場合、自分一人の判断では即答しかねる打診であると理解したためだ。
「私はもう無理でね……ーーパトリック手を貸してくれるかい?」
パトリックの表情から、フィリップはパトリックが正しく自分の願いを汲み取ったことを理解して、満足そうに微笑みながら続けた。
「ーーなんなりと」
フィリップからの期待に応えられたことへの高揚感に背中を押され、あっさりと承諾の返事をしてしまったパトリック。
そのことを少しだけ後悔しながらも、幼い頃より美しいと感じていた彼の人の姿を思い浮かべていたーー
◇
あれから数日たった、朝の教室ーー
リアーヌは朝の挨拶もそこそこに「はああああっ」と、わざとらしく、まるでこちらに聞かせるかのようなため息をついて見せたビアンカを怪訝そうに見つめていた。
「えっと……「どうしたの?」って聞いた方がいい?」
「ーー……ぜひ」
リアーヌの問いかけにピクリと肩を揺らしたビアンカは、ため息をもらした体勢のまま小さく頷きながら答えた。
「じゃあ、どうしたの? なんかあった⁇」
クスリと苦笑を浮かべながらそう言いつつ、席につきながらビアンカのほうに体を大きく傾け、机の上に乗り出した。
「ーーこの可能性は考えてもいなかったのよ……」
「ーーはい?」
(えっ……⁉︎ ーーまさかの説明がないままに話が始まってしまった件について……⁉︎)
パトリックはフィリップが自分にゼクスとリアーヌの婚約をどうにかさせようとしているのだと勘違いをして、じっとりとイヤな汗をかきながら困ったように言葉を重ねていく。
「手はある。 あの二人が婚約しようと結婚しようと、我々が手出しできて、ラッフィナートを通さずに手を借りられるーーそんな状況への道筋さえあればいいんだ」
「道筋、ですか……」
はっきりとした願いを口にしないフィリップに、パトリックはその心の中で大いに慌てしつつ、必死に頭を回転させていた。
フィリップは時たま、こんな自分達を試すような物言いをするお遊びを仕掛ける時があるのだ。
ここで答えが分からずとも、見当違いなことを言ったとしても大きな変化は起こらないのだろう……ーーしかし必ず、小さな変化は起こる。
そしてそれが積み重なってしまえばーー
(そんな恐ろしいこと考えたくもないっ! 考えろ‼︎ 道筋……楔……ーー重要なのはリアーヌ嬢との繋がりだ。 それもラッフィナートを通さずとも直接働きかけられるような……ーー)
そこまで考えてパトリックは困ったように少し唇を窄めた。
現状でそれができる人物が、おそらくは一人しかいないこと。
そしてその人物であった場合、自分一人の判断では即答しかねる打診であると理解したためだ。
「私はもう無理でね……ーーパトリック手を貸してくれるかい?」
パトリックの表情から、フィリップはパトリックが正しく自分の願いを汲み取ったことを理解して、満足そうに微笑みながら続けた。
「ーーなんなりと」
フィリップからの期待に応えられたことへの高揚感に背中を押され、あっさりと承諾の返事をしてしまったパトリック。
そのことを少しだけ後悔しながらも、幼い頃より美しいと感じていた彼の人の姿を思い浮かべていたーー
◇
あれから数日たった、朝の教室ーー
リアーヌは朝の挨拶もそこそこに「はああああっ」と、わざとらしく、まるでこちらに聞かせるかのようなため息をついて見せたビアンカを怪訝そうに見つめていた。
「えっと……「どうしたの?」って聞いた方がいい?」
「ーー……ぜひ」
リアーヌの問いかけにピクリと肩を揺らしたビアンカは、ため息をもらした体勢のまま小さく頷きながら答えた。
「じゃあ、どうしたの? なんかあった⁇」
クスリと苦笑を浮かべながらそう言いつつ、席につきながらビアンカのほうに体を大きく傾け、机の上に乗り出した。
「ーーこの可能性は考えてもいなかったのよ……」
「ーーはい?」
(えっ……⁉︎ ーーまさかの説明がないままに話が始まってしまった件について……⁉︎)
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