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「ーーギフトのコピーなんか初めてだったし、他のギフトの使い方なんて誰も教えてくれないもんねぇ?」
「……つまり?」
ゼクスの言葉にリアーヌが答えを返す間も無くフィリップが反応し、頬杖を付きながら挑発的な視線付きで詳しい説明を求めた。
しかしゼクスはそんな挑発に眉の一つも動かすことなく、にこやかな微笑みを浮かべながら説明を始めた。
「確かにその場ではそう答えたと聞いています。 そしてリアーヌ嬢自身もそう信じていたんです……ですがーーつい先日ギフトのコピーが成功していたことが判明したんです」
「ーーぇっ?」
(つい前日っていうか同じ日ですが……? なんならコピーしてから一時間も経ってないっていうか……)
困惑して小さく声を上げてしまったリアーヌ。
そんな彼女をニコニコと笑いながら振り返ったゼクスは「ねー⁇」と首を傾げながら圧が強めの同意を求めた。
「ーーソウデスネ。 ツイ先日デス」
(お口チャックってことですね……おまかせしまーす。 ーーうん。 だって言うてあれから十日も経ってないし。 先日っていえば先日なのよ……)
「なるほど? ーーつい、前日ね?」
フィリップは含みを持った視線と仕草で、言外に『きちんと把握しているぞ』と伝えたが、ゼクスはますますその笑みを深くし、「はい。 先日の話です」と悪びれることもなく答えた。
ゼクスとしては、リアーヌがいつコピーをしてしまったのか? フィリップがどこまで知っているのか? ーーなどということは、なんの興味もなかった。
大切なのは、今日けじめをつけること。
これでこの一件は全てが完了する。
ーー打てる手はすでに全て打っている。
リアーヌは自分の婚約者であり、たとえ王族といえどもそう簡単に手出しは出来ない。
加えて、ラッフィナート家も自分もパラディール家にはすでに目をつけられているのだ。
この程度の齟齬は微々たる誤差だと考えていた。
ゼクスからなんの反応も返ってこなかったことで、フィリップは不満そうに鼻を鳴らしながら面白くなさそうに視線を窓の外に向けた。
そんなフィリップを見て、ゼクスは小さく息を吐くと、スッとラルフに身体ごと向き直った。
「ーー改めまして、ラルフ・ベルグング様。 つきましてはこちらの品をお詫びの印、そして貴重なギフトをコピーさせていただいたお礼に、お納めいただければと……」
そう言いながらテーブルの上に皮袋を乗せ、ほんの少しラルフのほうに押しやりながら、恭しいお辞儀を披露するゼクス。
その拍子にリアーヌは再び四人の視線に晒されることになり、慌てて頭を下げた。
(ーーチラッとしか見えなかったけど、あの皮袋めっちゃ膨らんでた……あれの中身って金貨? 銀貨⁇ 銀貨だって結構な額になるけどーーあれが金貨だったらいくらになるのか……ーーあれ? 待って⁇ ……これケジメなんだよね……? んで、ゼクスは氷の人ーーラルフに礼金を払って……ーーあれぇ? あのお金って……ーー私の借金ってことになったりします……?)
「……つまり?」
ゼクスの言葉にリアーヌが答えを返す間も無くフィリップが反応し、頬杖を付きながら挑発的な視線付きで詳しい説明を求めた。
しかしゼクスはそんな挑発に眉の一つも動かすことなく、にこやかな微笑みを浮かべながら説明を始めた。
「確かにその場ではそう答えたと聞いています。 そしてリアーヌ嬢自身もそう信じていたんです……ですがーーつい先日ギフトのコピーが成功していたことが判明したんです」
「ーーぇっ?」
(つい前日っていうか同じ日ですが……? なんならコピーしてから一時間も経ってないっていうか……)
困惑して小さく声を上げてしまったリアーヌ。
そんな彼女をニコニコと笑いながら振り返ったゼクスは「ねー⁇」と首を傾げながら圧が強めの同意を求めた。
「ーーソウデスネ。 ツイ先日デス」
(お口チャックってことですね……おまかせしまーす。 ーーうん。 だって言うてあれから十日も経ってないし。 先日っていえば先日なのよ……)
「なるほど? ーーつい、前日ね?」
フィリップは含みを持った視線と仕草で、言外に『きちんと把握しているぞ』と伝えたが、ゼクスはますますその笑みを深くし、「はい。 先日の話です」と悪びれることもなく答えた。
ゼクスとしては、リアーヌがいつコピーをしてしまったのか? フィリップがどこまで知っているのか? ーーなどということは、なんの興味もなかった。
大切なのは、今日けじめをつけること。
これでこの一件は全てが完了する。
ーー打てる手はすでに全て打っている。
リアーヌは自分の婚約者であり、たとえ王族といえどもそう簡単に手出しは出来ない。
加えて、ラッフィナート家も自分もパラディール家にはすでに目をつけられているのだ。
この程度の齟齬は微々たる誤差だと考えていた。
ゼクスからなんの反応も返ってこなかったことで、フィリップは不満そうに鼻を鳴らしながら面白くなさそうに視線を窓の外に向けた。
そんなフィリップを見て、ゼクスは小さく息を吐くと、スッとラルフに身体ごと向き直った。
「ーー改めまして、ラルフ・ベルグング様。 つきましてはこちらの品をお詫びの印、そして貴重なギフトをコピーさせていただいたお礼に、お納めいただければと……」
そう言いながらテーブルの上に皮袋を乗せ、ほんの少しラルフのほうに押しやりながら、恭しいお辞儀を披露するゼクス。
その拍子にリアーヌは再び四人の視線に晒されることになり、慌てて頭を下げた。
(ーーチラッとしか見えなかったけど、あの皮袋めっちゃ膨らんでた……あれの中身って金貨? 銀貨⁇ 銀貨だって結構な額になるけどーーあれが金貨だったらいくらになるのか……ーーあれ? 待って⁇ ……これケジメなんだよね……? んで、ゼクスは氷の人ーーラルフに礼金を払って……ーーあれぇ? あのお金って……ーー私の借金ってことになったりします……?)
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