132 / 1,038
132
しおりを挟む
「ーーはははっ 騙すだなんて人聞きの悪い……ボスハウト家とはきちんと条件のすり合わせを行い、子爵夫妻ーー執事にまで祝福していただいているんですよー。 ね、リアーヌ?」
「……まぁ?」
婚約承諾書に関しては、騙された自覚しかないリアーヌ。
唇を尖らせながらも言葉を濁しながら小さく頷く。
最初の書類のトラブルさえなければ、そこから先のことはボスハウト家にーーリアーヌ本人にとって有利となるよう、極力気を配って采配してくれていたのだと言うことをリアーヌはちゃんと理解していた。
ゼクスが出した条件が、かなりの譲歩をしていることもヴァルムや両親によってきちんと説明されていたし、最終的に両親はこの婚約に乗り気になっていて、ヴァルムでさえも文句は言っていなかったことーー
そして、フィリップたちのゼクスに対する態度が、胸糞が悪くなるほどに感じが悪いものだったという事実も大きく関わっていた。
(ーー騙されたのは絶対間違いないけど、今それを置いといてもいいぐらいにはお前らにイラついているよっ!)
リアーヌからは面白い話題を引き出せそうに無いと判断したフィリップは、一瞬つまらなそうな顔つきをしたが、再び何かを思いつくとニヤリと頬を歪めながら笑いーーすぐさま表情を取り繕うと、心配そうに顔を歪めながら、今度はリアーヌに向かって話しかけた。
「ーーしかし、陛下を巻き込んでなお婚約ですか……」
これは言外に『わざわざ王命を引き出した挙句、許可を得たのが“婚約”では、本当に結婚する気があるのか怪しいものだぞ』ーーと言う、フィリップからの揺さぶりだったのだが……
当然リアーヌにそんな意味が伝わるわけもなく……それどころかこの中で唯一、家名をはっきりと覚えているフィリップに話しかけられたことで、どことなくホッとした空気すら醸し出していた。
ーーフィリップの言葉から感じの悪い空気だけは感じていたので、笑顔を浮かべることはしなかったが、それでもフィリップに話しかけられリアーヌの纏う空気が少し柔らかくなったことを、その他の者たちはちゃんと目撃し、そして動揺していた。
(ーー婚約であることに意味があるとでも言うのか……?)
(乗り気で無いと言う話は本当だった……?)
(ーー表情だけではウソかどうか判断がつかない、か……)
(……独特な感性を持つ人だからなぁ……)
(ーーえ? 何その反応⁇ ……まさかフィリップに気があるわけじゃ無いよね⁉︎)
(……あれ? どうしよう⁉︎ ゼクスからのフォローが飛んでこないんですけど⁉︎ え、これ私が答えるの? なんて答えるの⁉︎ ……授業の時みたいに笑ってごまかしたら怒られるのかなぁ……? 先生はもう何も言わなくなったけど……)
ゼクスもーーリアーヌすら含めて、この部屋の中の全員が動揺していたのだったーー
「……まぁ?」
婚約承諾書に関しては、騙された自覚しかないリアーヌ。
唇を尖らせながらも言葉を濁しながら小さく頷く。
最初の書類のトラブルさえなければ、そこから先のことはボスハウト家にーーリアーヌ本人にとって有利となるよう、極力気を配って采配してくれていたのだと言うことをリアーヌはちゃんと理解していた。
ゼクスが出した条件が、かなりの譲歩をしていることもヴァルムや両親によってきちんと説明されていたし、最終的に両親はこの婚約に乗り気になっていて、ヴァルムでさえも文句は言っていなかったことーー
そして、フィリップたちのゼクスに対する態度が、胸糞が悪くなるほどに感じが悪いものだったという事実も大きく関わっていた。
(ーー騙されたのは絶対間違いないけど、今それを置いといてもいいぐらいにはお前らにイラついているよっ!)
リアーヌからは面白い話題を引き出せそうに無いと判断したフィリップは、一瞬つまらなそうな顔つきをしたが、再び何かを思いつくとニヤリと頬を歪めながら笑いーーすぐさま表情を取り繕うと、心配そうに顔を歪めながら、今度はリアーヌに向かって話しかけた。
「ーーしかし、陛下を巻き込んでなお婚約ですか……」
これは言外に『わざわざ王命を引き出した挙句、許可を得たのが“婚約”では、本当に結婚する気があるのか怪しいものだぞ』ーーと言う、フィリップからの揺さぶりだったのだが……
当然リアーヌにそんな意味が伝わるわけもなく……それどころかこの中で唯一、家名をはっきりと覚えているフィリップに話しかけられたことで、どことなくホッとした空気すら醸し出していた。
ーーフィリップの言葉から感じの悪い空気だけは感じていたので、笑顔を浮かべることはしなかったが、それでもフィリップに話しかけられリアーヌの纏う空気が少し柔らかくなったことを、その他の者たちはちゃんと目撃し、そして動揺していた。
(ーー婚約であることに意味があるとでも言うのか……?)
(乗り気で無いと言う話は本当だった……?)
(ーー表情だけではウソかどうか判断がつかない、か……)
(……独特な感性を持つ人だからなぁ……)
(ーーえ? 何その反応⁇ ……まさかフィリップに気があるわけじゃ無いよね⁉︎)
(……あれ? どうしよう⁉︎ ゼクスからのフォローが飛んでこないんですけど⁉︎ え、これ私が答えるの? なんて答えるの⁉︎ ……授業の時みたいに笑ってごまかしたら怒られるのかなぁ……? 先生はもう何も言わなくなったけど……)
ゼクスもーーリアーヌすら含めて、この部屋の中の全員が動揺していたのだったーー
0
お気に入りに追加
344
あなたにおすすめの小説
私が死んだあとの世界で
もちもち太郎
恋愛
婚約破棄をされ断罪された公爵令嬢のマリーが死んだ。
初めはみんな喜んでいたが、時が経つにつれマリーの重要さに気づいて後悔する。
だが、もう遅い。なんてったって、私を断罪したのはあなた達なのですから。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
[完結]私はドラゴンの番らしい
シマ
恋愛
私、オリビア15歳。子供頃から魔力が強かったけど、調べたらドラゴンの番だった。
だけど、肝心のドラゴンに会えないので、ドラゴン(未来の旦那様)を探しに行こう!て思ってたのに
貴方達誰ですか?彼女を虐めた?知りませんよ。学園に通ってませんから。
愛想を尽かした女と尽かされた男
火野村志紀
恋愛
※全16話となります。
「そうですか。今まであなたに尽くしていた私は側妃扱いで、急に湧いて出てきた彼女が正妃だと? どうぞ、お好きになさって。その代わり私も好きにしますので」
【完結】身を引いたつもりが逆効果でした
風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。
一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。
平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません!
というか、婚約者にされそうです!
(完結)私はあなた方を許しますわ(全5話程度)
青空一夏
恋愛
従姉妹に夢中な婚約者。婚約破棄をしようと思った矢先に、私の死を望む婚約者の声をきいてしまう。
だったら、婚約破棄はやめましょう。
ふふふ、裏切っていたあなた方まとめて許して差し上げますわ。どうぞお幸せに!
悲しく切ない世界。全5話程度。それぞれの視点から物語がすすむ方式。後味、悪いかもしれません。ハッピーエンドではありません!
もしもし、王子様が困ってますけど?〜泣き虫な悪役令嬢は強気なヒロインと張り合えないので代わりに王子様が罠を仕掛けます〜
矢口愛留
恋愛
公爵令嬢エミリア・ブラウンは、突然前世の記憶を思い出す。
この世界は前世で読んだ小説の世界で、泣き虫の日本人だった私はエミリアに転生していたのだ。
小説によるとエミリアは悪役令嬢で、婚約者である王太子ラインハルトをヒロインのプリシラに奪われて嫉妬し、悪行の限りを尽くした挙句に断罪される運命なのである。
だが、記憶が蘇ったことで、エミリアは悪役令嬢らしからぬ泣き虫っぷりを発揮し、周囲を翻弄する。
どうしてもヒロインを排斥できないエミリアに代わって、実はエミリアを溺愛していた王子と、その側近がヒロインに罠を仕掛けていく。
それに気づかず小説通りに王子を籠絡しようとするヒロインと、その涙で全てをかき乱してしまう悪役令嬢と、間に挟まれる王子様の学園生活、その意外な結末とは――?
*異世界ものということで、文化や文明度の設定が緩めですがご容赦下さい。
*「小説家になろう」様、「カクヨム」様にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる