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「ーーなんとかなるさ」
「そうよね。 大丈夫大丈夫」
この部屋の中ーーどころかこの世の中で真っ先に、この姉弟の教育の遅さを真剣に受け止めなくてはいけないはずの子爵夫妻は、顔を突き合わせ仲良く話している姉弟をニコニコと見つめながら、あはは、うふふと、微笑み合っている。
もしかしたらその能力でこの道こそ正解であると分かっているためなのかも知れないが、そのギフトが使えないゼクスやヴァルムには実際のところは分からない。
分からないからこそ、その一瞬でその二人に奇妙な絆のようなものが芽生えていた。
『ちゃんと教育してくれるんですよね⁉︎』
『ーーそちらもしっかりとフォローをしてくださいますな?』
『婚約者が出来ることなんてたかが知れてますからね⁉︎』
『この一年はあなたが頼り……しかとその役目果たされよ』
無言で見つめ合った二人、そんなギフトなど持ちわせていないというのに、互いの心の声をはっきりと聞いた気がしていたーー
「ーーあれ?」
その場の空気から、話し合いが完了したような空気を感じ取ったリアーヌは、ようやく肝心なところに気がつき、キョトンと首を傾げた。
「どした?」
そんな姉に、同じように首を傾げながらザームがたずねる。
「……いつのまにか結婚することになってない⁉︎」
「……え、最初からそういう話してたんじゃねぇの……?」
「え、最初⁉︎ いつのまに⁉︎」
それまで、ボスハウト邸のリビングでは、長女リアーヌの婚約話という、非常に重要な話題について話し合っていた。
そしてそれが終わり、どことなく穏やかな空気が流れ始めた時に響き渡った、トンチンカンな姉弟の会話ーー
(聞こえなかったことにしてお暇しちゃおっかな……?)
などと考えてしまったゼクスの傍らにはヴァルムが当然のように立っていて、圧の強い笑顔をゼクスへと向けていた。
ヴァルムにチラリと視線を流し、引く気はないと理解したゼクスは、ほんの少しため息を漏らしてから、いまだに混乱しているリアーヌに近付いて声をかけた。
「そりゃ最初からに決まってるだろー?」
「ぇっ……あ、いやあの……そう、なんですか……?」
流石に当人であるゼクスに向かって反論するつもりはないのか、何かを言いたげにしながらも、おどおどと忙しなく視線を動かし続けるリアーヌにゼクスは肩をすくめて見せた。
「ーーこっちとしても予定外の展開にはなったけど……でも最大の目的は達成できたし……結果は上々かな」
ゼクスはわざと核心には触れないような言葉を選び、ニコニコとリアーヌに少し早口で話しかけた。
「ーーそれは、良かった……?」
ゼクスの思惑通り、リアーヌは深く考えずに曖昧な相槌を打つ。
「……そう思ってくれるかい?」
予想通りの答えにニンマリと笑いながら、心の奥底から聞こえる「おい、この誘導尋問に引っ掛かる娘を守るって言ってんのか俺……?」と言う声に蓋をした。
ちなみに今の会話の意味はこうだ。
『予想外なことも起こったけれど、君と結婚の約束をできて嬉しい』
『良かったですね』
『君も嬉しいと感じてくれるのかい?』
という、恋人同士の会話に他ならなかった。
「ーーこれからよろしくね、婚約者殿?」
「ーー婚約者……?」
(なんだかよく分からないままに始まったお話し合い。 よく分からないまま終わったと思ったら、私がゼクスの婚約者なっていたでこざる……⁉︎)
「そうよね。 大丈夫大丈夫」
この部屋の中ーーどころかこの世の中で真っ先に、この姉弟の教育の遅さを真剣に受け止めなくてはいけないはずの子爵夫妻は、顔を突き合わせ仲良く話している姉弟をニコニコと見つめながら、あはは、うふふと、微笑み合っている。
もしかしたらその能力でこの道こそ正解であると分かっているためなのかも知れないが、そのギフトが使えないゼクスやヴァルムには実際のところは分からない。
分からないからこそ、その一瞬でその二人に奇妙な絆のようなものが芽生えていた。
『ちゃんと教育してくれるんですよね⁉︎』
『ーーそちらもしっかりとフォローをしてくださいますな?』
『婚約者が出来ることなんてたかが知れてますからね⁉︎』
『この一年はあなたが頼り……しかとその役目果たされよ』
無言で見つめ合った二人、そんなギフトなど持ちわせていないというのに、互いの心の声をはっきりと聞いた気がしていたーー
「ーーあれ?」
その場の空気から、話し合いが完了したような空気を感じ取ったリアーヌは、ようやく肝心なところに気がつき、キョトンと首を傾げた。
「どした?」
そんな姉に、同じように首を傾げながらザームがたずねる。
「……いつのまにか結婚することになってない⁉︎」
「……え、最初からそういう話してたんじゃねぇの……?」
「え、最初⁉︎ いつのまに⁉︎」
それまで、ボスハウト邸のリビングでは、長女リアーヌの婚約話という、非常に重要な話題について話し合っていた。
そしてそれが終わり、どことなく穏やかな空気が流れ始めた時に響き渡った、トンチンカンな姉弟の会話ーー
(聞こえなかったことにしてお暇しちゃおっかな……?)
などと考えてしまったゼクスの傍らにはヴァルムが当然のように立っていて、圧の強い笑顔をゼクスへと向けていた。
ヴァルムにチラリと視線を流し、引く気はないと理解したゼクスは、ほんの少しため息を漏らしてから、いまだに混乱しているリアーヌに近付いて声をかけた。
「そりゃ最初からに決まってるだろー?」
「ぇっ……あ、いやあの……そう、なんですか……?」
流石に当人であるゼクスに向かって反論するつもりはないのか、何かを言いたげにしながらも、おどおどと忙しなく視線を動かし続けるリアーヌにゼクスは肩をすくめて見せた。
「ーーこっちとしても予定外の展開にはなったけど……でも最大の目的は達成できたし……結果は上々かな」
ゼクスはわざと核心には触れないような言葉を選び、ニコニコとリアーヌに少し早口で話しかけた。
「ーーそれは、良かった……?」
ゼクスの思惑通り、リアーヌは深く考えずに曖昧な相槌を打つ。
「……そう思ってくれるかい?」
予想通りの答えにニンマリと笑いながら、心の奥底から聞こえる「おい、この誘導尋問に引っ掛かる娘を守るって言ってんのか俺……?」と言う声に蓋をした。
ちなみに今の会話の意味はこうだ。
『予想外なことも起こったけれど、君と結婚の約束をできて嬉しい』
『良かったですね』
『君も嬉しいと感じてくれるのかい?』
という、恋人同士の会話に他ならなかった。
「ーーこれからよろしくね、婚約者殿?」
「ーー婚約者……?」
(なんだかよく分からないままに始まったお話し合い。 よく分からないまま終わったと思ったら、私がゼクスの婚約者なっていたでこざる……⁉︎)
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