成り上がり令嬢暴走日記!

笹乃笹世

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「ーーその末端に名を連ねたばかりだと言うのに……ずいぶんな物言いですね?」

 ヴァルムは呆れたように首を横に振りながら答えたが、その内心ではゼクスのことを少しーーいや、かなり見直していた。
 今言った言葉のどこにもウソが感じられなかったためだ。
 発言自体はとても褒められたものではなかったが、それでも言葉を尽くして自分の考えを伝えようとするゼクスの態度には好感が持てた。

(ーーだからと言って平民風情に当家の大切なお嬢様を渡してやるつもりはございませんがね……)

 ゼクスはヴァルムのまとう空気が変わったことに少し驚きながらも、話を続けた。

「ーー正直、リアーヌ嬢にちょっかいかけてきてるところがデカすぎて、奪われる可能性が高かったってのとーー……そろそろうちに向けられる疑惑や悪意を少なくしたかったんですよね」
「ーーその割には大きな問題を抱え込もうとしておられるが?」
「うちはだと判断しました」
「今でこそ……」
「陳腐なシナリオになっちゃいますけど……ーーいつまでものらりくらりと叙爵を先延ばしにしてきたのに、とあるお嬢様と出会い、その方と縁を結ぶために条件付きとはいえ叙爵を求めるーーこの先そのお嬢様がコレクションズギフトの持ち主だったとしても、そう簡単に手は出せないでしょう? すでに爵位を得た今、それはたくさんの方々が実家の金を目当てに群がってきていますし⁇」

 そう言ってニヤリと笑ってみせるゼクス。
 そんなゼクスにヴァルムもほんの一瞬だけ口角を引き上げ、執事らしからぬ笑みを浮かべてみせた。



「ーーなぁ、あの二人なんの話してんだ?」

 いつのまにかリアーヌの隣にはザームが佇んでいて、姉の耳元で声をひそめて質問する。

「……私のギフトがすごい」
「……王家がどうのって言ってたじゃん?」
「……王家もねぇちゃんを雇いたい……?」
「ーーそれで嫁には行くのか?」
「……行かなくて済むようにヴァルムさんが頑張ってる……はず」

 ヒソヒソと繰り広げられる兄弟の会話。
 他の誰も喋らなければ、会話の内容を盗み聞きすることなど簡単でーー
 すぐに聞き耳を立てたゼクスと、それに釣られるように兄弟の会話を聞いていたヴァルム。
 二人はその会話を聞きながら、ゆっくりと顔を顰め、そして頭を抱えるようにその額を抑え始めた。
 二人の違いといえば、ゼクスの方は顔を顰めながらも口元にはしっかりとした弧を描いていて、時折、堪えきれなかった吐息のような笑い声がその鼻から聞こえる事ぐらいだろうかーー
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