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「俺はかなり良心的な条件提示をしてると思ってますけどね? ーーリアーヌ嬢を、ボスハウト家になんの敬意も払わないヤツだったら、こんな条件絶対に提示してこないと思いますし? ……それこそ、リアーヌ嬢の人権なんかなくなっちゃうんじゃないですか⁇」
「ええ……?」

(いや、私のギフトをここまで高く評価してるのは今のところ貴方だけなのですが……ーーあ、ワンチャン王家も……? でも、ゆうてコピーはコピーなわけで……オリジナルが居るなら、私じゃなくて良いまであるのよ……ーーなのに私の人権が無くなる契約とか……いくらなんでもボスハウト家バカにされすぎでは⁉︎)

「ーーそんな話ありえないって思ってる?」

 再びリアーヌの表情から、彼女の思いを読み取ったゼクスは、クスリと笑いながらたずねた。

「……コピーってことはオリジナルがいるわけですから……狙われるならそっちなのかなと……」

 親が小さな子供を諭すようなゼクスの言い方が面白くなく、リアーヌは少しだけ唇を尖らせながら答えた。

「ーーダブルやトリプルって言われる人たちがどんな扱い受けるか知ってる?」
「ダブル……トリプルーー」

 リアーヌは気が付かなかったが、そのゼクスの発言に、ヴァルムの顔が驚愕で歪んだ。

(ああ! 生まれつきギフトを二つ、三つ持ってる人たち! ……実際会ったことはないけど、噂話うわさばなし程度ならたくさん聞いてる)

「ーー噂だと、珍しくて取り合いになるから、すっごい高い給料で雇ってもらえるって話ですよね。 羨ましいです……」
「……まぁ、表向きーーというか、ちゃんと生活していける家庭に生まれた者にはそんな未来もあるんだろうけどね……」
「ちゃんと……?」
「お金に困ってるような家に生まれちゃったらーー貴族に売られて、一生をその貴族に捧げるーーなんて話もよく聞くんだけど……知らない?」
「初耳です……」

(え……? お金で売られて一生を貴族のために……⁇ ーーそれって奴隷って言わない……⁇)

「皆さんはどうですか?」

 ゼクスはグルリと部屋の中を見回して、ヴァルムや子爵夫妻に声をかける。
 首を傾げているザーム以外の者たちは、苦虫を噛み潰したような顔でゼクスからそっと視線を外した。
 その表情を見て、自然と口角を引き上がるゼクス。
 答えは誰からも返ってこなかったが、その態度が答えそのものだった。

「ーーそのお話とお嬢様と、一体なんの関係があるというのです? まさか我がボスハウト家にはその程度を跳ね除ける力もないと?」
「まさか。 ボスハウト家のお力を十分に認めているからこそ、縁を繋ぎたいと願っているのですよ」

 不愉快そうに睨みつけてくるヴァルムを笑顔で交わすゼクス。
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