成り上がり令嬢暴走日記！

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（ーーいや、待て待て待て！　ーーあっぶねぇ……危うくゼクスの手駒に成り下がるところだった……ーーお前のそれ絶対計算だろ⁉︎　“ウインクとかしちゃったけど慣れてないから恥ずかしいな……”的なムーブ！　はぁぁぁんっ　マジごちそうさまでした⁉︎　スチル実装はよっ‼︎）

　リアーヌは顔を赤らめつつお腹の前でギュッと両手を握り締めながら、心の中で大絶叫していた。

（さすがは攻略対象者様やで……ーー顔が良いんだもの……ーーこの人が女の敵だと理解していて良かった……知らなかったら今頃ゼクス沼にドボンしているところだった……ーーわりと紙一重で踏みとどまった感、ありありだけどー）

「ーーではなぜお嬢様だったのでしょうか？　結婚相手に社交も臨まず、愛人を置きたいわけでもないーー貴方のラッフィナート商会はボスハウト家になにを望まれるのか？」

　肝心なことは喋らないゼクスに、このままでは埒が開かないと考えたヴァルムは、より直接的な質問でラッフィナート商会がなにを望んでいるのかをハッキリさせることにしたようだった。

「ーーそんなの、好きだからーじゃないですかぁ？」

　チラリとリアーヌを見つめながらハニカムようにクスリと笑うゼクスに、リアーヌの胸は再び甘い痛みを覚えた。

「ーー戯言ざれごとは結構」

　チラチラと互いを見つめ合い、なんとも甘酸っぱい空気を醸し出している二人に、冷や水を浴びせるかのように、ヴァルムは一段と低く、そして冷静な声でその空気を引き裂くように言った。

「ざれ……」

　バッサリと切って捨てられたゼクスは、ヒクリ……と頬をひきつらせる。

（ーーざれごと……そうか……戯言ーーまぁ、お遊びみたいなもんか……ーー別に悲しくなんかねぇし、全然悲しくなんかねぇしっ‼︎）

　リアーヌは少し肩を落としながら少しだけ唇を尖らせていた。
　そんなリアーヌをゼクスはチラリと横目で眺めた。
　少し目を細めるとジッと何かを確認するかのように一つ大きく息を吸い込むと、ふぅーと大きなため息をついて口を開いた。

「ーーま、はっきり言えた方がこっちも楽なんですけどねー」

　そう言ったゼクスはヒョイっと素早く肩をすくめると、ガシガシと後頭部あたりをかきながら答えるゼクス。
　そんなゼクスを無言で見つめるヴァルム。　今度はヴァルムが視線で話の続きを促していた。
　
「ーー一番いちばんの望みは、リアーヌ嬢の囲い込み……ですかね？」

　小さく肩をすくめつつ鼻をいじりながらゼクスは答えた。
　その様子はどこか諦めのような空気が漂っているようだった。
　ーーリアーヌの反応から、恋心で誑かすよりも金銭を積み上げた方が効果が高いと判断したのかもしれない。