成り上がり令嬢暴走日記!

笹乃笹世

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「貴女……旅行先で一人で買い物とかやめておきなさいね? ーーに言いくるめられるわよ」

 ゼクス、ビアンカと三人並んでサロン棟から教室へと移動する最中、周りに人気がないことを確認したビアンカがからかい混じりにそう話しかけてきた。
 先程のゼクスとのやり取りを見たビアンカはリアーヌが他人に流されやすい性格なのかもしれない……と感じたようだった。

「いやいや、なにを仰います? 私が母さんから仕込まれた値切りスキルは中々のもんですよ⁇」

 本当に値切り交渉には少しの自信を持っていたリアーヌは少しムッとしながらも胸を張って答えた。

「ーーあ、そうだったわね。 貴女、お母様のギフトを貰ったんでしたわね」

 ビアンカはリアーヌが、母さんのギフトがあるから大丈夫だという意味合いの言葉を言ったのだと理解して納得の声を上げたがーー実際のところ、リアーヌはこの瞬間までギフトのことを綺麗さっぱり忘れ去っていた。

「……あっ! そっか、これからはそれも使えるんだ⁉︎」
「えっーー今、気がついたの?」
「……ーーまさか? そんなわけなくない⁇ 私、ずっとギフトの話してたし」

 白々しい演技でリアーヌがそう言うと、ビアンカは呆れたように口を窄めて肩をすくめる。
 そしてその会話を聞いていたゼクスが興味深そうに会話に加わった。

「え、なになに? リアーヌ嬢そんな素敵なスキルが使えるの⁉︎」
「あ、そうなんです! ーーあっ……⁉︎」

 ゼクスに聞かれるがままに素直に答えたリアーヌだったが、ビアンカに自分が使えるギフトについて他人にペラペラ喋らない方が良いという助言をもらっていたことを思い出し、しまった⁉︎ という表情を作った。

「ーーラッフィナート殿には今更よ。 ……そもそも貴女に隠し事が出来ると思えないし、これからのこともあるわ。 正直に話して、しっかり契約内容を吟味してから大人しく守られていなさいな」
「ーー分かった!」

 コクコクと頷きながらビアンカの話を聞いていたリアーヌは、そう元気よく答えると、体ごとゼクスに向き直りモジモジと伝え始めた。

「あの……私の母が【やりくり】ってギフトを持っていたので、私もそれが使えるんです」
「やりくり……値段交渉に使えそうだね……?」
「母さんはよく使ってましたね」
「へぇー」

 ゼクスはギラギラと光る捕食者の瞳をリアーヌに向けながら、その整った顔に満面の笑みを貼り付け、リアーヌに気がつかれないよう隠して見せた。
 ーーしかしビアンカはそんなゼクスをしっかり見てしまい、ヒクリと頬を引き攣らせるのだったーー
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