成り上がり令嬢暴走日記！

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「それにね？　執事も自分のギフトは渡したくないって思ってたからちょうど良かったって言ってたし」

リアーヌは空を見上げながらポソリと言った。

「……やっぱり今まで聞いていた人物像と違うのよねぇ……」

　ビアンカは空からリアーヌに視線を移し、首を傾げながら呟いた。

「……そう？」
「今までの印象だと、ギフトだろうが命だろうが主家の役に立つのであれば、差し出すことを躊躇わない、執事の鏡のような方なのだと……」
「こっわ⁉︎　ギフトは置いといて、命なんか差し出されたって困るよ」

　ギョッと目を剥いたリアーヌは、ビアンカに苦笑いで答えた。

「そのくらいの気概を持った方、と言う意味よ」

　リアーヌの勘違いにビアンカは肩をすくめて返した。

「……昔からずっと、ごくごく普通の優しいおじちゃんって感じだったけどね……？　ーーなんか……私が悲しむ未来が分かってるから、とても渡す気になんてなれないーーって言ってたよ」
を
　そう言いながら、リアーヌはそう言われた時のことを思い返して、そのあまりにも悲しそうで切なそうなヴァルムの様子に一人心を痛めていた。

「悲しむ未来……？」

　それがどう言う意味なのかを考えあぐねたはビアンカは、そのまま視線でリアーヌに話の続きを促した。

「ーーなんかね？　ヴァルム……ーー執事のギフト、ウソが分かるってヤツでね？」
「イザーク様と同じだと言っていたわね」
「うん。　……ヴァルムさんは自分の心と折り合いをつけるのに、すごく時間が必要だったって言ってた。　ーー知りたくなかったことや騙されてたほうが幸せだったことも、たくさんあったんだって……確かにあって良かったって思うこともあったけど……それ以上に知りたくなかったことのほうが多かったんだって。　私には同じ思いをさせたくないって言ってた……」

　空を見つめながら淡々と説明していくリアーヌ。
　脳内では、そう伝えてきたヴァルムの寂しそうな笑顔がハッキリと思い起こされていた。
　そのためなのか、言い終わりビアンカに向かいニコリと笑ってみせたリアーヌの笑顔もまた寂しく切ないものになっていた。

「ーー……そう。　きっと……辛い思いをたくさんなさったんでしょうね……？」

　ビアンカは、ここに来てようやく他人のウソが分かってしまう能力の闇を理解した。
　こと人間関係においてーーそれが貴族ならば尚更、ウソーーお世辞やフォローと言った言葉は、必須のコミュニケーションとなる。
　ーーかの人の人生にはどれほどのウソで溢れていたのか……それを想像してしまったビアンカは、切なさと悲しさで胸が締め付けられうまく息が吸えないような感覚に陥った。

「ねー……」

　うめき声のような相槌を打ったリアーヌはそのままジッと青空を見上げ続け、ビアンカもそれに釣られるように空を見上げる。
　ーーそうしてしばらくの間、二人はしんみり……と、中庭を歩いていく、人々の喧騒を聞いていたのだったーー