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「……時間がたくさん経ったら薄くなる可能性とかも……」

 リアーヌがやんわりと紡いだ言葉にヴァルムはニコリと笑いながら口を開いたのたが……
 その笑顔は普段のおおらかで優しい笑顔とはほど遠いほどの圧を放っていた。
 それを肌で感じたリアーヌはキュッと身を縮こまらせてゴクリとツバを無理矢理飲み込んだ。

(ーービアンカの笑顔が一番怖いと思ってたけど……これは殿堂入りレベルの恐ろしさなんですけど⁉︎ もう二度と言わないから許してください⁉︎)

「ーーそのような心配……とうとき血は百年程度の時間でどうこうなるような、やわなものではございませんよ。 だからこそ、この国で一番にたっとばれる血筋なのですから」

(ニコニコ笑ってるけど目が本気なんだもの……ーーこれは完全にヴァルムさんの地雷を踏んだっぽいな……? ーーでもリアーヌちゃんと学習したから。 もう二度とうちが王家の血筋だってこと、否定したりしないから!)

 リアーヌはヴァルムの圧に気圧されるようにジリジリッと半歩ほど後ずさりながらコクコクと首を縦にふった。

「ーー勉強になります……」
「ご理解いただけたようで何よりでございます」

 そう言ってようやくいつもの笑顔を浮かべたヴァルムにリアーヌは、大きく息を漏らしながら知らずに強ばっていた肩を下げるのだった。

「ーーそういうわけございますので、過去の伝手を頼り、王家の方々にはきちんと根回しさせていただきますので、お嬢様がご心配なさることなどなに一つございませんよ。 このヴァルムめにどうぞお任せを……」

 そう言うとヴァルムは胸に手を当て深々と腰を折った。

(ーーヴァルムさんがこう言ってくれるだけで、なんの問題も無くなった気がするから不思議……ーーでも実際、いつだってなんだって、ヴァルムさんがこう言ってくれた時はどうにかなってたんだから今回もそうなんだよね! ……まぁ、百年前のコネが王家に対して有効だとは到底思えないけどー)

 リアーヌが心の中でそんなことを考えていると、ヴァルムは顔を上げ「おやすみなさいませ」と言い残して部屋を出て行ったのだった。

 簡単な相槌と共に見送ったリアーヌは、大きく伸びをしながらベッドに向かっていき、そのままボフンッと倒れ込んだ。

「ーーこの地味スキルを王家が探してる……?」

(ヴァルムさんの話では、ヴァルムさんのご先祖様が初代ボスハウト公爵の執事さんで、その執事さんが残して、そこから代々伝わってきた初代執事さんの手記に“王のお気に召す
ギフト”って情報が書かれてて、その中の一つが【複写】ーーつまりは、コピーなわけだけど……ーー)

「ーーマジでなんでこんな設定がゲームに出てきてないん……?」

 リアーヌはゴロリと身体を半回転させうつぶせから仰向けになる。
 そしてジッとベッドの天井を眺めながら大きく首を傾げた。

(コピー云々は置いておくにしても……つまりは王が気にいるようなギフト持ちがいたら、王家に差し出したっていいよね☆ って情報な訳で……ーーえ、あのゲームで特別視されてたギフトなんか、主人公の【守護】のギフトだけだったんだけど……? ーーゲームバランス崩れるから消した設定だったり……ーーでもそうすると、今私が持ってるのがおかしくて……⁇)

「ーーだめだ訳分かんなくなってきた……」

 リアーヌはそう呟くと、大きく息をつきながら瞳を閉じーー
 そのまま自分でも気がつかないうちに、深い眠りへといざなわれていったのだったーー
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