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 ボスハウト邸、食堂。
 夕食後のデザートも食べ終わり、差し出されたお茶を一口飲んだリアーヌは、意を決した様子で口を開いた。
 ヴァルム以外の使用人たちもその場にいたのだが、今残っている彼たちががこの家の不利益になることをしたり、言ったりすることなどあり得ないと、リアーヌは確信していたため、そこに関してはなんの迷いもなく口を開くことができた。

「あのさ……私、話というかーー相談があるんだけど……」

 その言葉に家族たちの視線がリアーヌに集中した。
 そして三人共なにかを探るように、お互いに目配せし合う。

「ーーあらなぁに?」

 三人が三人共首を捻っていたため、事情を知るものがいないと判断した母リエンヌは、ニコリと笑いながら話の続きを促した。

「……私のギフトね? 他の人のギフトもコピー出来ちゃうみたいで……ーー今日、氷魔法が使えるようになったんだケド……」

 そう言いながらリアーヌは手のひらを差し出し、その手の中にキラキラと光る花を咲かせてみせた。

「すっげぇじゃん」

 両親と使用人たちが目を見開き、ゴクリとツバを飲み込む中、あまりよく事情を把握していないであろう、弟のザームだけが脳天気な声で言った。

「……うん、確かにすごくはあるんだけど……」
「……トラブったのか?」

 言い淀む姉の様子に違和感を感じたのか、ザームが探るようにたずねかえした。

「ーー怒ってないけど……友達がこれから起こるだろうから家族でちゃんと話し合ったほうがいいって……」
「ーーその助言をした方はどなた様ですか?」

 ヴァルムが姉弟の会話に割り込むように話しかける。
 普段ならばあり得ない行動だったが、寝耳に水の大問題発生に、その行為に眉をひそめるものはいなかった。

「あの、ビアンカです。 同じクラスの……」
「入学当時からよくしていただいているジェネラーレ家のお嬢様ですね?」
「はい……」

(ーーというか、入学と同時にやらかした私には、友人らしい友人はビアンカさんしかいらっしゃいません……)

 ヴァルムは顎に手を当て何事なにごとかを考え込んでいたが、やがて少し険しい顔つきでリアーヌに質問をした。

「ーージェネラーレ家のお嬢様はギフトをお持ちではありませんね?」
「……多分?」
「ーーでは、お嬢様がコピーしてしまった氷魔法をお持ちのお方すら、この事実をご存知ではない?」
「……あの、気がついた時にはもう退出した後で……その、混乱しちゃって……」

 ヴァルムの険しい表情に、叱られているのだと勘違いしたリアーヌはモジモジと指先を動かしながら、言い訳するように言葉を紡いだ。

「ああーーお嬢様、決して責めているわけでは……お相手の名前も分からないのでは少々根回しに時間がかかってしまいますゆえ……」

 自分の落ち度でリアーヌを不安にさせてしまったと理解してヴァルムは、困っように眉を下げながらあわあわと体の前で手を動かした。
 そんなヴァルムの様子に、叱られているわけではないと理解したリアーヌは、ゆっくりと身体の力を抜くとホッとしたように息をつくのだった。
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