成り上がり令嬢暴走日記！

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　ーー『ギフト』は神から人間への贈り物ーー
　その考えが根付くこの世界では、リアーヌが認識している以上に神は身近な存在であり、その贈り物をここまで私利私欲のために扱おうとする人間も珍しいのだ。
　なんの責任もそこまでの地位も無い平民階級の間では、嫉妬ややっかみ、少々の傲慢さから“ダメスキル”や“ムダスキル”等の呼ばれ方をすることもあったが、教会に近しい貴族たちの間では、その言葉を使う者のほうが鼻つまみ者になるほどタブーとされていたーー
　それほどまでには『ギフト』を軽んずる者を教会は許しはしなかった。
　そしてーーこの国の貴族たちは、例え貴族相手であっても報いを受けさせられる教会の力を、王族であっても恐れていたのだった。

「ーーなんで⁉︎　だって氷だよ？　他に使い道ある⁇」

　リアーヌの純粋な疑問にビアンカはヒュッと小さく息を呑み込んだ。

　ーー自然の力を操れるスキル持ちは、多くの場合に置いて強靭な戦士となる。
　だからこそ、貴族たちは氷や炎、岩や雷を操れるギフト持ちを我先に取り込もうとするーー

　ビアンカは目の前の友人の頭の中には“ギフトを使って人と争う”そんな考えがカケラも存在しないことを危うく思うと同時に、とても好ましくーー愛おしく感じた。

「ーーそう、かもね？」

　少し声を詰まらせながら、リアーヌに向かって曖昧な笑顔を向けるビアンカ。

「……なにその顔ー」
「ーーいつまでもそのままの貴方でいなさいって顔よ」
「……ちょっとバカにしてるよね？」
「してないわよ」
「いやいや」
「していないったら」

　二人は戯れ合うようにクルクルと立ち位置を変えながら廊下を歩いて行く。

「ーーなんでコピーできなったんだろう。　私にも使えてたら今すぐその背中に氷の塊を放り込んでやるのに！」
「まぁ！　親友に向かってなんてことをするつもりなのかしらっ」

　クスクスと笑い合いながら芝居がかった悪態をつくリアーヌにビアンカも同じように芝居がかったように嘆いて見せた。
　そして二人顔を見合わせてクスクスと笑いながらぶつかるように寄り添って廊下を進んで行く。

「本気だよ？　確かこうしてーー」

　そう言いながらリアーヌはラルフが見せた動作そっくりの動きをして見せた。

　ーーそして、この時リアーヌは心の中で再びラルフの能力を鮮明に思い返して、明確にイメージいた。

『あのギフト』を『使う自分』をーー

　リアーヌが自身のギフトが発動した感覚を持った時、リアーヌの目には、自分の手のひらの上で小さな氷の粒がクルクルと回っている光景がはっきりと見えていたのだったーー