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「ここにいるラルフは氷を操るギフトを持ち、イザークはウソを見抜くことができます」

 パトリックはなんの躊躇ちゅうちょもなく二人のギフトを説明しだした。
 リアーヌは気が付かなかったが、通常、他人のギフトをペラペラと喋ることは、褒められる行為にはなり得ない。
 それどころか、貴族ともなれば、自身の失点にもつながるような失言となり得る。
 ーーのだが、先程のフィリップの発言に対して、ギフトの内容をバラされた二人が不快感を表すことは無かった。

 ーーつまり、この会話が事前に準備されていたものだということに他ならなかったのだが……
 そんなことには全く気がついていないリアーヌは、素直にフィリップの言葉に目を丸くして驚くのだった。

「ウソを!」

(ヴァルムさんと同じスキルだ!)

「やっぱり、その瞬間にスキルを使わないと、ウソかどうか分からないんですか?」
「ーーええ。 後日思い返してーー等ではスキルは発動しませんね」
「やっぱりそうなんだぁ……」

 ヴァルムに説明されていた通りの答えが返ってきて、リアーヌは瞳を輝かせながらイザークを見つめた。
 知り合いと同じスキルである、という事実に親近感を抱いたようだった。

「……お知り合いに?」

 イザークは少し戸惑いながらもリアーヌに質問を投げかける。
 他人のギフトを探るようなマネがマナー違反だということは重々承知のイザークだったが、リアーヌの態度があまりにも明け透けなため、なにかの情報提供の合図なのでは……? と疑ったためだった。

 ーーその二人の両方の思惑に気がついていた唯一の人、ビアンカだけは面白そうに瞳を輝かせ、自然と弧を描こうとすぐ口元をごまかすためにカップを口に運ぶ。

「はい。 うちの執事さ……執事もそうなんです」

 執事と言いかけたリアーヌは足に感じたビアンカの優しさに、ヒクリと頬を引き攣らせつつ言い直した。
 貴族階級の者が、普段から使用人に敬称を付けているなど、笑い話にもならないどころか、笑い者になるような話だったためだ。

(あっぶな……気をつけなさいってビアンカどころかヴァルムさんたちにも言われてたのに……)

「ーーボスハウト家の執事が……」

 リアーヌの答えを聞いたイザークは、その言葉を反芻するように繰り返した。

「はい。 ウソが分かるなんてすごい! って話をしていた時に「その場限りの能力ですが……」って説明してくれたんです」
「なるほど……そうだったんですね」

 そう答えたイザークはチラリとフィリップたちの方に視線を送り、フィリップはイザークたちだけに伝わる程度の、かすかな動きて肩をすくめて見せた。
 言葉に直すならば、

「取り込むのならば厄介な存在がいるようですね」
「ラッフィナートに引き続き……さらに手が出しにくくなっちゃったなぁ……」

 ーーと言ったところだろうか。

 そんなやりとりの意味さえ大まかに理解したビアンカは、楽しそうにクスリと笑うとネタバラシも兼ねてリアーヌへ向かい話しかけた。

「ーーそう考えると貴女のおうちギフト持ちだらけねぇ?」

 ビアンカの言葉にリアーヌは「そうだねぇー」と、のほほんと答え、フィリップたちは簡単にそんな事情を暴露したビアンカとそして、なんの戸惑いもなく肯定して見せたリアーヌに対して、ギョッと目を剥くのだった。

 しかしビアンカのほうを向いていたリアーヌはそんなことには気が付かずのほほんとした口調で「でも全員、そこまで大したギフトじゃないけどねー」と続けるのだった。
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