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「ーーお誘いして恥をかかされるのも泥を塗られるのも避けたいけれど、一番避けたいのはラッフィナート家と敵対してしまうことよ。 あの家は我が国の物流を支配していると言っても過言ではないもの。 それに……ラッフィナート殿のほうだって、ある程度力のある家のお誘いは断らないでしょうけど……貴族だからと言って全ての家の誘いにまで乗っていられないでしょう?」
「まぁ……現実的じゃない、かな」
リアーヌはようやく、これが貴族たちにとって非常にデリケートな問題なのだということに気がついた。
(そりゃ、微妙なランクの貴族は誘うのためらうかぁ……断られたら「お宅眼中にありません!」 って言われてる同然だし、それが周りにバレちゃったらプライドはズタズタ、家名は泥だらけってことかぁ……そりゃ本人じゃなく、派閥に入ったヤツに声かけるか……ーー理解はできたけど……)
「ーーめんどくさぁ……内緒で誘って内緒で答えを聞いたらいいのに……」
「この世の中に誰にも知られない内緒話なんて存在しないわよ」
「……ごもっとも」
ビアンカの正論にリアーヌはうんざりした様子で大きく息をつきながら空を仰ぎ見た。
ゼクスに誘いをかけにくい貴族たちが誘う先は自分であるのだと、正しく理解したためだ。
「これ全部、ゼクス様に丸投げできないかなぁ……」
「ーー貴女のあの失態をお聞かせするなら、お茶会禁止令が出るかもしれないわね?」
ビアンカは肩をすくめながら言って、呆れたように口を窄めてみせた。
「……アイデア的にはナイスだと思うけど、それって一歩間違ったら、私の就職パァになりません……?」
「ーーどちらにしろ正しいマナーを学ばずに参加すると言うならばパァになるのでしょうね?」
「ーーですよねー?」
(そうだよ……私に最初から選択肢なんて なかったんだ……ーー誰も助けてくれないお茶会なんて恐ろしくて参加できないよ!)
「……誠心誠意、心を込めてお断りのお手紙書こ……」
リアーヌは決意したように手元の招待状を見下ろすと、うんうんと何度も頷きながらバッグにしまい込むのだったーー
「そういえば私もお茶会に誘われていてね?」
リアーヌが招待状を仕舞い終えたタイミングを見計らい、ビアンカがポンと手を叩きながら言った。
「……よかったね……?」
ビアンカが自分になにを伝えたいのか分からず、曖昧な笑顔を浮かべつつ曖昧な返事を返すリアーヌ。
そんな態度を取られても笑顔を崩すことなく、話を続けるビアンカ。
「一人で行くのもなんだし、リアーヌ一緒に行かない?」
「ーーえ、ビアンカ私をお茶会に誘ったの……?」
リアーヌは驚愕に顔を歪めたが、ビアンカは相変わらずニコニコと笑顔を浮かべながらさらに誘いの言葉を口にした。
「もちろん練習には付き合うしーー……そもそもご近所さん同士で情報交換も兼ねたお茶会だからそこまで堅苦しいものでもないし、それに……」
「それに……?」
「ーー皆さん、私がリアーヌと友人だと知っているから……私がその招待状代わりみたいなものなのよ」
ビアンカは少し困ったようにそう言うと、リアーヌのバッグに視線を移した。
(あー……これは、ご近所さんもゼクスとの繋がりを持ちたくてビアンカにゴリ押ししてきたってわけか……)
「いいでしょう? ……マナーの授業で散々助けてあげてるじゃない」
ねだるような声で紡がれたビアンカの言葉に、リアーヌの喉からウグッという音が漏れた。
(ーー本当……ビアンカはってば私専属の教師なんじゃないの? ってぐらいたくさんの助言を貰ってますわねぇ……? ーーお茶会なんか出たくないけど……これ断ったらバチが当たるレベルで助けてもらってるんだよなぁ……)
「ーー本当に練習付き合ってね……?」
「ーー当たり前じゃない。 貴女“私”の“友人”だと認識されているのよ?」
「あっ……そうでしたね……?」
とても美しく微笑んいるビアンカの瞳に本気を感じ取り、リアーヌはコクコクと頷くことしか出来なかった。
(なにが堅苦しくないだ! これなにかやらかしたらビアンカに知り合いに格下げされるやつじゃんっ⁉︎)
「まぁ……現実的じゃない、かな」
リアーヌはようやく、これが貴族たちにとって非常にデリケートな問題なのだということに気がついた。
(そりゃ、微妙なランクの貴族は誘うのためらうかぁ……断られたら「お宅眼中にありません!」 って言われてる同然だし、それが周りにバレちゃったらプライドはズタズタ、家名は泥だらけってことかぁ……そりゃ本人じゃなく、派閥に入ったヤツに声かけるか……ーー理解はできたけど……)
「ーーめんどくさぁ……内緒で誘って内緒で答えを聞いたらいいのに……」
「この世の中に誰にも知られない内緒話なんて存在しないわよ」
「……ごもっとも」
ビアンカの正論にリアーヌはうんざりした様子で大きく息をつきながら空を仰ぎ見た。
ゼクスに誘いをかけにくい貴族たちが誘う先は自分であるのだと、正しく理解したためだ。
「これ全部、ゼクス様に丸投げできないかなぁ……」
「ーー貴女のあの失態をお聞かせするなら、お茶会禁止令が出るかもしれないわね?」
ビアンカは肩をすくめながら言って、呆れたように口を窄めてみせた。
「……アイデア的にはナイスだと思うけど、それって一歩間違ったら、私の就職パァになりません……?」
「ーーどちらにしろ正しいマナーを学ばずに参加すると言うならばパァになるのでしょうね?」
「ーーですよねー?」
(そうだよ……私に最初から選択肢なんて なかったんだ……ーー誰も助けてくれないお茶会なんて恐ろしくて参加できないよ!)
「……誠心誠意、心を込めてお断りのお手紙書こ……」
リアーヌは決意したように手元の招待状を見下ろすと、うんうんと何度も頷きながらバッグにしまい込むのだったーー
「そういえば私もお茶会に誘われていてね?」
リアーヌが招待状を仕舞い終えたタイミングを見計らい、ビアンカがポンと手を叩きながら言った。
「……よかったね……?」
ビアンカが自分になにを伝えたいのか分からず、曖昧な笑顔を浮かべつつ曖昧な返事を返すリアーヌ。
そんな態度を取られても笑顔を崩すことなく、話を続けるビアンカ。
「一人で行くのもなんだし、リアーヌ一緒に行かない?」
「ーーえ、ビアンカ私をお茶会に誘ったの……?」
リアーヌは驚愕に顔を歪めたが、ビアンカは相変わらずニコニコと笑顔を浮かべながらさらに誘いの言葉を口にした。
「もちろん練習には付き合うしーー……そもそもご近所さん同士で情報交換も兼ねたお茶会だからそこまで堅苦しいものでもないし、それに……」
「それに……?」
「ーー皆さん、私がリアーヌと友人だと知っているから……私がその招待状代わりみたいなものなのよ」
ビアンカは少し困ったようにそう言うと、リアーヌのバッグに視線を移した。
(あー……これは、ご近所さんもゼクスとの繋がりを持ちたくてビアンカにゴリ押ししてきたってわけか……)
「いいでしょう? ……マナーの授業で散々助けてあげてるじゃない」
ねだるような声で紡がれたビアンカの言葉に、リアーヌの喉からウグッという音が漏れた。
(ーー本当……ビアンカはってば私専属の教師なんじゃないの? ってぐらいたくさんの助言を貰ってますわねぇ……? ーーお茶会なんか出たくないけど……これ断ったらバチが当たるレベルで助けてもらってるんだよなぁ……)
「ーー本当に練習付き合ってね……?」
「ーー当たり前じゃない。 貴女“私”の“友人”だと認識されているのよ?」
「あっ……そうでしたね……?」
とても美しく微笑んいるビアンカの瞳に本気を感じ取り、リアーヌはコクコクと頷くことしか出来なかった。
(なにが堅苦しくないだ! これなにかやらかしたらビアンカに知り合いに格下げされるやつじゃんっ⁉︎)
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