成り上がり令嬢暴走日記!

笹乃笹世

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 そう思いながら、リアーヌはふと嫌な想像をしてしまい、少し顔を引き攣らせた。
 その変化に気がついたゼクスは、視線と仕草でどうしたのか? とたずねる。

「あの……私より力の強い【コピー】のギフトを持った人が現れても、契約してくれます……よね?」

(ちょっとしそうじゃない⁉︎ だって商人とかってそういうのシビアっぽくない⁉︎)

「だーかーらー商人は信用商売なんだってば! もう一人現れたならその人も雇うだけですぅー。 ーー俺の家、そのくらいできるお金はありますけど?」

 リアーヌに見せつけるように顔を顰めてにゅっと口を尖らせて見せるゼクス。

「ですよねー……?」

 ゼクスの言い分に(そう言われてみればそうか……)と納得したリアーヌは、ヘラリ……と愛想笑いを浮かべて同意した。

「納得してくれた? じゃあここにサインお願いねー」
「はーい」
「ーーあとこれにもサインもらえる?」

 ゼクスはそう言うと、ニコリと笑いながら契約書とは違う書類をリアーヌに手渡した。

「……受領書? 金貨5枚ーーさっきのですね?」

 ふーん。 と納得したように頷きながら、念のための確認を取るリアーヌ。

「ーーふっふっふ。 これにサインしてもらって店に出せば、さっきの礼金が必要経費と認められて俺に返却されるシステムになっているんだよー」
「わぁー! ゼクス様ってばやりくり上手ぅー‼︎」

 冗談めかしたゼクスの言葉に、リアーヌも合わせて大袈裟な仕草で言い方で返した。

「だからーーここにサインくれると嬉しいなー」
「かしこまりましたー! 私のサインが金貨5枚になるなんて、すごぉーいっ‼︎」

 元気よく答え、求められるがままにサラサラとサインを書くリアーヌ。
 ゼクスはそんなリアーヌを見つめ、気がつかれないような角度で、ニヤリと唇を引き上げた。

「ーー……ありがとぉー」



 その後リアーヌは結局、契約書のほうにもサインをして、ゼクスに契約書の控えを渡されていた。

「じゃあ、改めてーーこれからよろしくね、リアーヌ嬢」

 ベンチから立ち上がったゼクスはそう言うと、胸に手を当てながら恭しくお辞儀をした。
 そしてダンスにでも誘うかのように恭しく手を差し出した。

「よろしくお願いします!」

 リアーヌは元気よく答えると、スッと足を後ろに引きながらおじきを返し、ちょこんとゼクスの手に自分の手を重ねた。

 その行動は、丸ごとダンスのお誘いの時の行動だったが、当の二人は全く気にしておらず、それを指摘する人もこの場には存在しなかった。



 リアーヌたちは程よい距離を保ちながらも並んで廊下を歩いている。

「ーーその書類無くさないでね?」

 ゼクスはリアーヌが胸に抱えたままの契約書の控えをチラリと見つめながら、心配そうにそっと伝えた。

「ーー! も、もちろんですよー‼︎」

 ゼクスの言葉にギョッとしたリアーヌは、吃りながらも慌てて契約書の控えをカバンの中にしまった。

(そうじゃん! これ無くしたら、勝手に契約内容変えられたって私に証明する方法なくなっちゃうじゃん! 大切に保管しなきゃ……ーーヴァルムさんに預けちゃうのが一番かな……⁇)

 全ての思考を顔に出しているリアーヌを盗み見ていたゼクスは、顔を隠すついでに前髪をいじりつつ、呆れたよう笑いながらコッソリとため息を吐くのだったーー
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