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(見捨てられないためとは言え、タダでコピーしてあげたのに……)
教室に戻ったリアーヌが少しだけ不満に思い口を尖らせていると、ビアンカが放課後の予定をたずねてきた。
「放課後……?」
「ーー約束ですもの。 お茶会の面倒を見てあげるわよ」
ビアンカはそう言ってリアーヌをジェネラーレ邸へ招待したのだが、そこで開催されたお茶会は使用人を一切排除した、ごくごくプライベートなものだった。
そしてリアーヌが失敗をしてもビアンカからの叱咤を受けることも無かったため、リアーヌはようやくこのお茶が練習などではなく、ビアンカなりの“お礼”なのだということに気がついたのだった。
「このお菓子美味しい! それにとっても綺麗っ!」
テーブルの上でキラキラと輝く宝石のような菓子に瞳を輝かせるリアーヌ。
(見た目は琥珀糖ってのに似てるけど、味は全然違う! カシュンッて周りの硬いのが割れると中からとろーって水飴みたいなシロップが出てくる‼︎ しかも色によって味が全然違うっ‼︎ 形もバラの花とか宝石の形とかすっごい細かいし……)
「ーーあっ、なんか自分の口からとてもいい匂いがする……」
「ふふっそこまで喜んでもらえて嬉しいわ。 これ我が家のとっておきのお菓子でね? 王妃様にも献上させて頂いてるの」
「ご献上品‼︎」
貴族のことに少々疎いリアーヌですら知っていたご献上品。
文字通り王族に献上する品のことなのだが、ただ献上しているわけではなく“王族からの要望に応じて”献上する品物のことを指す。
つまりは「我が領、我が家のこの品は、王族がわざわざ必要とするほど優れているのだ!」と、ほかの家にアピールできる自慢の一品ということなのだ。
なのでどの家も、安売りすることを好まず、その殆どがごくごく限られた数しか世の中に出回らない一品ばかりなのだった。
「ーー私何個も食べちゃったけど……平気……?」
「用意させておいて何個も食べちゃいけないなんてこと言わないわよ」
ビアンカはそう言うとコロコロと笑いながら、少し離れた場所にあるテーブルの上に置かれた、リアーヌがコピーした紙の束を見つめながら口を開いた。
「それに……私にとってはあの本の方が数倍素晴らしい物だもの」
「えー……絶対このお菓子だよー」
「褒めてもらえて嬉しいけれど、聞き捨てならないわね……?」
リアーヌの言葉にビアンカは芝居がかった様子で腕を組み、顔をしかめて見せた。
そして二人顔を見合わせーーどちらともなくプッと吹き出すとケラケラと声を上げて笑い出す。
そこからほんの少しの時間だけではあったが、二人は周りの目や耳を気にすることなく、楽しい会話とおいしいお菓子を楽しんだのだった。
(ーーこんなご褒美が待ってるなら、これから何冊でもコピーしちゃお……)
帰りの馬車の中。
「少しだけれど、ご家族で楽しんで」と、渡されたあの美しい菓子ーービアンカはボンボンと呼んでいたーーを、大事そうに抱えたリアーヌは、心の中でそんなことを決めていたのだったーー
教室に戻ったリアーヌが少しだけ不満に思い口を尖らせていると、ビアンカが放課後の予定をたずねてきた。
「放課後……?」
「ーー約束ですもの。 お茶会の面倒を見てあげるわよ」
ビアンカはそう言ってリアーヌをジェネラーレ邸へ招待したのだが、そこで開催されたお茶会は使用人を一切排除した、ごくごくプライベートなものだった。
そしてリアーヌが失敗をしてもビアンカからの叱咤を受けることも無かったため、リアーヌはようやくこのお茶が練習などではなく、ビアンカなりの“お礼”なのだということに気がついたのだった。
「このお菓子美味しい! それにとっても綺麗っ!」
テーブルの上でキラキラと輝く宝石のような菓子に瞳を輝かせるリアーヌ。
(見た目は琥珀糖ってのに似てるけど、味は全然違う! カシュンッて周りの硬いのが割れると中からとろーって水飴みたいなシロップが出てくる‼︎ しかも色によって味が全然違うっ‼︎ 形もバラの花とか宝石の形とかすっごい細かいし……)
「ーーあっ、なんか自分の口からとてもいい匂いがする……」
「ふふっそこまで喜んでもらえて嬉しいわ。 これ我が家のとっておきのお菓子でね? 王妃様にも献上させて頂いてるの」
「ご献上品‼︎」
貴族のことに少々疎いリアーヌですら知っていたご献上品。
文字通り王族に献上する品のことなのだが、ただ献上しているわけではなく“王族からの要望に応じて”献上する品物のことを指す。
つまりは「我が領、我が家のこの品は、王族がわざわざ必要とするほど優れているのだ!」と、ほかの家にアピールできる自慢の一品ということなのだ。
なのでどの家も、安売りすることを好まず、その殆どがごくごく限られた数しか世の中に出回らない一品ばかりなのだった。
「ーー私何個も食べちゃったけど……平気……?」
「用意させておいて何個も食べちゃいけないなんてこと言わないわよ」
ビアンカはそう言うとコロコロと笑いながら、少し離れた場所にあるテーブルの上に置かれた、リアーヌがコピーした紙の束を見つめながら口を開いた。
「それに……私にとってはあの本の方が数倍素晴らしい物だもの」
「えー……絶対このお菓子だよー」
「褒めてもらえて嬉しいけれど、聞き捨てならないわね……?」
リアーヌの言葉にビアンカは芝居がかった様子で腕を組み、顔をしかめて見せた。
そして二人顔を見合わせーーどちらともなくプッと吹き出すとケラケラと声を上げて笑い出す。
そこからほんの少しの時間だけではあったが、二人は周りの目や耳を気にすることなく、楽しい会話とおいしいお菓子を楽しんだのだった。
(ーーこんなご褒美が待ってるなら、これから何冊でもコピーしちゃお……)
帰りの馬車の中。
「少しだけれど、ご家族で楽しんで」と、渡されたあの美しい菓子ーービアンカはボンボンと呼んでいたーーを、大事そうに抱えたリアーヌは、心の中でそんなことを決めていたのだったーー
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