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「ーー交渉成立?」
ニマニマと笑いながら、揶揄うようにたずねるゼクスにリアーヌの眉間にかすかなシワが寄った。
(面白がりやがって……ーーチクショウ……やっぱり攻略対象者だ……顔がいい……)
リアーヌはマジマジとゼクスの少しウェーブのかかった黒く艶やかな髪や、濃い紫色の瞳、そして弧を描く形の良い唇と口元の艶ぼくろなどをマジマジと見つめたが、やがて諦めたかのように、大きなため息を吐きながら「……はい」と小さく答えたのだった。
自分の容姿が女性に好まれることを知っていたゼクスはそんなリアーヌの反応にピクリ……と反応を見せたが、さらに深い笑みを作って誤魔化してみせた。
「ありがとう! 助かるよー。 ーーここでやる? それとももっと広い場所でする⁇」
「確か本を捲る者がいれば早く終わるのでしたわねーー食堂のテラス席に移動しましょうか?」
「あー。 あそこいつも空いてるもんねぇ……?」
食堂に通じる通路の真横に位置するテラス席、そこは日当たりも良く、風通しも良い心地のいい空間だったのだが「食事をしている姿を通りすがりにジロジロ見られるのは、ちょっと……」という意見から、あまり人気のない席だということをゼクスも知っていた。
「私たちは、別に食事を摂るわけではありませんから……」
「お嬢様方が気にならないのであれば、異論なんてありませんよ」
ビアンカとゼクスの会話にリアーヌがギョッと目を剥く。
「ーーえ、今って……今すぐってこと?」
「ーーさっきからそう言ってるじゃない」
「……お昼ご飯は?」
今は昼休憩の最中だった。
ーーなのだが、直前のテストのこともあり、リアーヌたちは食事も取らずにお話し合いを始めていたのだった。
そのためリアーヌは、今やると言っても食事をとってからだろうと勘違いをしていた。
「ーー終わったら食べましょうね」
「あーまだだったんだ? じゃあ急がなくっちゃねー」
ビアンカはニコリと綺麗な笑顔で言い、ゼクスはニマニマと揶揄うように言いながら、テラスに向かいスタスタと歩きはじめていた。
リアーヌはそんな二人の背中を見つめ「ごはん……」と呟く。
未だにベンチに座り込んでいるリアーヌを振り返ったビアンカは咎めるように片方の眉を上げて見せた。
「ーー今行きまぁす……」
リアーヌはボッチになりたくない一心で立ち上がり小走りに二人の元へと急ぐのだったーー
ニマニマと笑いながら、揶揄うようにたずねるゼクスにリアーヌの眉間にかすかなシワが寄った。
(面白がりやがって……ーーチクショウ……やっぱり攻略対象者だ……顔がいい……)
リアーヌはマジマジとゼクスの少しウェーブのかかった黒く艶やかな髪や、濃い紫色の瞳、そして弧を描く形の良い唇と口元の艶ぼくろなどをマジマジと見つめたが、やがて諦めたかのように、大きなため息を吐きながら「……はい」と小さく答えたのだった。
自分の容姿が女性に好まれることを知っていたゼクスはそんなリアーヌの反応にピクリ……と反応を見せたが、さらに深い笑みを作って誤魔化してみせた。
「ありがとう! 助かるよー。 ーーここでやる? それとももっと広い場所でする⁇」
「確か本を捲る者がいれば早く終わるのでしたわねーー食堂のテラス席に移動しましょうか?」
「あー。 あそこいつも空いてるもんねぇ……?」
食堂に通じる通路の真横に位置するテラス席、そこは日当たりも良く、風通しも良い心地のいい空間だったのだが「食事をしている姿を通りすがりにジロジロ見られるのは、ちょっと……」という意見から、あまり人気のない席だということをゼクスも知っていた。
「私たちは、別に食事を摂るわけではありませんから……」
「お嬢様方が気にならないのであれば、異論なんてありませんよ」
ビアンカとゼクスの会話にリアーヌがギョッと目を剥く。
「ーーえ、今って……今すぐってこと?」
「ーーさっきからそう言ってるじゃない」
「……お昼ご飯は?」
今は昼休憩の最中だった。
ーーなのだが、直前のテストのこともあり、リアーヌたちは食事も取らずにお話し合いを始めていたのだった。
そのためリアーヌは、今やると言っても食事をとってからだろうと勘違いをしていた。
「ーー終わったら食べましょうね」
「あーまだだったんだ? じゃあ急がなくっちゃねー」
ビアンカはニコリと綺麗な笑顔で言い、ゼクスはニマニマと揶揄うように言いながら、テラスに向かいスタスタと歩きはじめていた。
リアーヌはそんな二人の背中を見つめ「ごはん……」と呟く。
未だにベンチに座り込んでいるリアーヌを振り返ったビアンカは咎めるように片方の眉を上げて見せた。
「ーー今行きまぁす……」
リアーヌはボッチになりたくない一心で立ち上がり小走りに二人の元へと急ぐのだったーー
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