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「あっいたぁー。 ねぇねぇ君って【コピー】ってギフト持ってるでしょ?」

 いきなり現れた男子生徒に声をかけられた。

「……へっ?」

 リアーヌは状況がよく掴めず、キョトンと目を丸くして声をかけてきた男子生徒に視線を向ける。
 するとそこにはーー

「これの写本って頼めない? ちゃんとお礼はするからさ!」

と、素晴らしく整った顔にニコリと笑顔を貼り付けたゼクス・ラッフィナートーー攻略対象であり、黒髪に紫の瞳で口元の艶ぼくろが印象的な男子生徒が立っていた。

「今日中に返すって約束なんだけど全然読み終わらなくてさぁ……ーーお願いっ!」

 そう喋り続けるゼクスの顔を、呆然と見上げていたリアーヌだったが、その瞳がキラリと光が反射したかのように光るのを見て、慌てて顔を背けた。

(あっぶな⁉︎ ゼクスって【魅了】のギフト持ちで、めぼしいギフト持ってる女子生徒を次々と惚れさせて、お願いを次々に聞いてもらうっていう……イケメンであってもクズ男な使い方するやつなんだよねぇ……ーーまぁ、超の付くイケメンが「ちょっと頼めないかなぁ?」とか「その話詳しく聞かせてよー」とか言って来たら、ギフトが無くてもお願い聞いちゃう女の子は多いと思うけどさぁー……ーーだからこそ、女の子のほうはギフトをかけられたと認識しづらく、万が一バレてもその時は使っていないと、言い逃れられるよう計算されてるんだけどねー……)

「頼むよー。 この前もここで写本してただろ? あんな感じでさ!」

 その言葉に、リアーヌの体がピクリと反応した。

(ーーこの間の? ーーそっかぁ……へー、見てたんだぁ……?)

 リアーヌはヘラリ……と、その口元に微笑みを貼り付けると、再度ゼクスを真正面から見つめ返した。
 目があったゼクスはもう一度、胸の前で手を合わせながら「この通り! ね⁉︎」と愛想よく笑っている。

(ーーそうだよねー? この顔のよさは攻略対象さんですよねー⁇ つまりーー私が嫌がらせを受け続けていることに、なんの興味も示さないくせに、主人公にはお優しい攻略対象様ってことですねっ!)

 リアーヌはそんなゼクスの無駄に整った笑顔を眺めながら、心の内で怒りの炎を燃え滾らせていた。

(はじめましての会話がこれ……? ちょっと助けて欲しいのは私の方なんですけどね⁉︎ こんな身近で嫌がらせを受けてるヤツを華麗にスルーしておいて、自分の願いを叶えるためにその私を利用しようとしているこの男を助ける義理などあるとでも⁉︎ ーーこれっぽっちも無いに決まってるだろっ‼︎ 自分が優しさを見せないのに、優しくしてもらえるだなんて思い上がらないことだっ‼︎ ーー寝言は寝ていいやがれ!)
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