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ビアンカの指摘通り、リアーヌの家とビアンカの家は決して同じ子爵家では無い。
リアーヌの父親が当主を務めるボスハウト子爵家には領地と呼べる土地がなく、ビアンカの家であるジェネラーレ子爵家は広い領土を収めるーーいわゆる土地持ち貴族と呼ばれる家だった。
同じ子爵家であってもその違いは大きい。
そしてそんな違いのある家同士を同じと称する者に寛容である貴族も皆無に等しかった。
リアーヌはビアンカの顔色を伺いながら、小さな声で「ごめんね……?」と声をかけた。
そんなリアーヌに苦情を漏らしたビアンカは小さく首をすくめながら「気にしませんわよ」と答えたのだった。
ジェネラーレ子爵家長女のビアンカ・ジェネラーレ。
彼女は、リアーヌが喋る平民のような言葉遣いを面白がり、“同じ子爵家”と称しても寛容でいられる大変貴重な人物であり、スタートしたばかりのリアーヌの学園生活で得られた、唯一の友人なのであった。
(自覚があるほどには、詰め込み式で勉強しちゃったからなぁ……こういう試験には出ない、常識というか暗黙の了解的な、明確なルールとして存在しているわけじゃ無いけど、皆がそうするもんだと思って生活してることとか、自慢じゃ無いけどチンプンカンプンよ……)
リアーヌは教師が教科書を読み上げる声を聞きながら、内心でため息を漏らした。
現在のような状況下になってしまっている原因もその辺りにあった。
たとえ悪気はなかったとはいえ、高位貴族であるご令嬢たちに失礼極まりない態度をとったのはリアーヌの方だった。
リアーヌ自身はクラスメイトと楽しくおしゃべりをしていたつもりになっていたのだが、お茶会への正式な誘いを誘いとも思わず無視。 ビアンカの通訳により、お誘いであると認識した直後、大した理由も謝罪の言葉も添えずに拒否。
貴族社会ーーその中でも極めて上の世界で生きてきたご令嬢たちにとって、そんな仕打ちは許せる者ではなく、己のプライドと家の名誉にかけてリアーヌを下そうとしている真っ最中なのであった。
(最初はニコニコ話しかけてくれて、良い子たちだと思ったのになぁ……ーーそういえばあの時、ビアンカには謝罪も無しにっ! って怒られたけど、私最初に“悪いけど”ってちゃんと付けたと思うんだよなぁ……ーーまぁ、次の日にはこの飾りつけキャンペーンがスタートしていたでゴザル……)
ハハ……ッと乾いた笑いを浮かべたリアーヌは、すぐさま今が授業中だと言うことを思い出し、真面目な顔を取り繕って周りの反応を伺った。
教師も近くの席の生徒たちも気が付いていないのか、リアーヌのほうを気にしている者はいなかった。
ーーいなかったのだが、隣に座るビアンカから小さなため息が聞こえて気がしたリアーヌだった。
(……これは多分、ちゃんと授業を聞いていなかったこと、バレてるんだろうな……)
案の定、その日の昼食時、チクリと嗜められたリアーヌの姿があったのだったーー
昼食を食べ終わり、程よく日が当たり、程よい風通しのいいベンチに移動した二人は、取り留めのない会話に花を咲かせていた。
「あっそうだ!」
そんな中、リアーヌが急に何かを思い立ったかのように顔を輝かせて声を上げた。
「急になに?」
「ビアンカの派閥に入るってどう⁉︎ 良い考えじゃない⁉︎」
「冗談じゃないわよ……火の粉ぐらい自分で払いなさいな」
「えー……? いい考えだと思ったのにぃ……」
そっけなく拒否され、リアーヌはガックリと肩を落とした。
(だれか火の粉の払いかた、教えてくれないかなぁ……)
リアーヌはその脳内に家族やヴァルムたちの顔を思い浮かべ、すぐさまかき消した。
ーー現在16歳のリアーヌ。
なんだか親に告げ口をするようで、なかなか言い出せずにいたのだったーー
リアーヌの父親が当主を務めるボスハウト子爵家には領地と呼べる土地がなく、ビアンカの家であるジェネラーレ子爵家は広い領土を収めるーーいわゆる土地持ち貴族と呼ばれる家だった。
同じ子爵家であってもその違いは大きい。
そしてそんな違いのある家同士を同じと称する者に寛容である貴族も皆無に等しかった。
リアーヌはビアンカの顔色を伺いながら、小さな声で「ごめんね……?」と声をかけた。
そんなリアーヌに苦情を漏らしたビアンカは小さく首をすくめながら「気にしませんわよ」と答えたのだった。
ジェネラーレ子爵家長女のビアンカ・ジェネラーレ。
彼女は、リアーヌが喋る平民のような言葉遣いを面白がり、“同じ子爵家”と称しても寛容でいられる大変貴重な人物であり、スタートしたばかりのリアーヌの学園生活で得られた、唯一の友人なのであった。
(自覚があるほどには、詰め込み式で勉強しちゃったからなぁ……こういう試験には出ない、常識というか暗黙の了解的な、明確なルールとして存在しているわけじゃ無いけど、皆がそうするもんだと思って生活してることとか、自慢じゃ無いけどチンプンカンプンよ……)
リアーヌは教師が教科書を読み上げる声を聞きながら、内心でため息を漏らした。
現在のような状況下になってしまっている原因もその辺りにあった。
たとえ悪気はなかったとはいえ、高位貴族であるご令嬢たちに失礼極まりない態度をとったのはリアーヌの方だった。
リアーヌ自身はクラスメイトと楽しくおしゃべりをしていたつもりになっていたのだが、お茶会への正式な誘いを誘いとも思わず無視。 ビアンカの通訳により、お誘いであると認識した直後、大した理由も謝罪の言葉も添えずに拒否。
貴族社会ーーその中でも極めて上の世界で生きてきたご令嬢たちにとって、そんな仕打ちは許せる者ではなく、己のプライドと家の名誉にかけてリアーヌを下そうとしている真っ最中なのであった。
(最初はニコニコ話しかけてくれて、良い子たちだと思ったのになぁ……ーーそういえばあの時、ビアンカには謝罪も無しにっ! って怒られたけど、私最初に“悪いけど”ってちゃんと付けたと思うんだよなぁ……ーーまぁ、次の日にはこの飾りつけキャンペーンがスタートしていたでゴザル……)
ハハ……ッと乾いた笑いを浮かべたリアーヌは、すぐさま今が授業中だと言うことを思い出し、真面目な顔を取り繕って周りの反応を伺った。
教師も近くの席の生徒たちも気が付いていないのか、リアーヌのほうを気にしている者はいなかった。
ーーいなかったのだが、隣に座るビアンカから小さなため息が聞こえて気がしたリアーヌだった。
(……これは多分、ちゃんと授業を聞いていなかったこと、バレてるんだろうな……)
案の定、その日の昼食時、チクリと嗜められたリアーヌの姿があったのだったーー
昼食を食べ終わり、程よく日が当たり、程よい風通しのいいベンチに移動した二人は、取り留めのない会話に花を咲かせていた。
「あっそうだ!」
そんな中、リアーヌが急に何かを思い立ったかのように顔を輝かせて声を上げた。
「急になに?」
「ビアンカの派閥に入るってどう⁉︎ 良い考えじゃない⁉︎」
「冗談じゃないわよ……火の粉ぐらい自分で払いなさいな」
「えー……? いい考えだと思ったのにぃ……」
そっけなく拒否され、リアーヌはガックリと肩を落とした。
(だれか火の粉の払いかた、教えてくれないかなぁ……)
リアーヌはその脳内に家族やヴァルムたちの顔を思い浮かべ、すぐさまかき消した。
ーー現在16歳のリアーヌ。
なんだか親に告げ口をするようで、なかなか言い出せずにいたのだったーー
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