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「ーーあっ⁉︎ 教養科ってことは奇跡が起きれば同じクラスに……⁉︎」

 天井を眺めていたリアーヌは、その言葉と共にガバリッと飛び起きる。
 が、すぐに肩を落として、再びベッドの上にゴロリと横たわった。

「そんなん無理だよねー……なんで合格だったのか理解できないくらいにマナーの試験じゃ何も出来なかったし……そんなヤツがSクラス入りは詐欺でしょ……」

 レーシェンド学院には、中等部、高等部、研究院という3つの学部に別れていて、そこからさらに、教養学科、一般学科、育成学科、専門学科という4つの学科に分かれていた。
 リアーヌの元の世界では、貴族科、平民科、騎士科、ギフト科という通称で呼ばれていて、どの学科も成績ごとにクラス分けされている。
 一番上のクラスがS、そこからABC……となっていた。

 学科の試験に合格すれば元平民のリアーヌが教養学科に合格したように、血筋で落とされることは無いーーというのが学院側の主張だ。
 ーーただし、暗黙の了解というものはどこの世界にも存在するもので、王族が教養学科の試験に落ちたという事例は一度もなく、婚外子ーーいわゆる愛人の子供が教養学科の試験に落ちる確率は非常に高い。
 ……一般学科を設立する際も、建前としては、平民であろうとも優秀な者たちには、等しく平等に学ぶ機会をーーということだったが、一般学科に所属するほとんどの生徒が、教養学科の試験に落ちた者たちばかりで、貴族階級にある者が一般科の試験に落ちたという話は誰も聞いたことがなかった。
 ーー国立のレーシェンド学院。
 つまりは国の管理下にある学院で、国の上層部は王族と貴族ばかり……ーー暗黙の了解というものはどこの世界にも存在するものなのだ。

 騎士科はその名の通り、騎士育成学科となっていて、この学科が学院一の実力主義だと見做みなされている。
 ーーある程度は、という枕言葉はついてしまうが。

「そういえば来年はザームが騎士科受験するって話だったな……ーー英断すぎる。 あの子にマナーや紳士としての立ち振る舞いは無理よ……」

 父親が子爵家を継ぎ、嫡男となったザームだったが、その性格や素質から、教養学科に入り子爵家の運営をするよりも、騎士となり国に貢献する方がいいだろうと判断され、早々に騎士科の試験を受けることが決まっていた。
 
「ーーゆうて【身体強化】のギフト持ちだし、体動かす方がよさそう……最悪、専門科には絶対に合格できるし……」

 専門科はギフト持ちならばどんな身分でも入れる学科で、その試験もかなりハードルが低いものとなっている。
 それぞれのギフトを強化し、伸ばすことが目的の学科なので、当然マナーが出来なくとも教養が身についていなくとも卒業することができる唯一の学科だ。

(……本当ならここに入るつもりだったんだよねー。 ーーなんでか、両親に相談した次の日には奥様ーーはもう母さんだから大奥様か……ーー大奥様やヴァルムさんたちの知るところになっていて「一般科の方が将来の役に立つ!」と、試験勉強を教わることになってたんだよねー……でもさ? 専門科だったら授業料も安いし、試験もギフトを披露するだけの簡単なお仕事だったんだ……ーーでも実際に勉強始めてみたら、ゲームの中でも描かれてなかった、この国の歴史とか興味しかなかったし、ほかの授業も前世の高校受験のほうがよっぽど……ってくらいのレベルだったしで「まぁ、このくらいなら専門でも一般でもいっかー」とか思ってたら、あれよあれよと言う間に貴族の仲間入り、マナーができれば教養科だって夢じゃない⁉︎ とかいう話になっちゃってーー……そっからはみんな厳しかったなぁ……あの日々が報われて本当によかった……)

 ふぅーっと大きく息を吐きながら、優しく襲ってきた、とろりとした心地の良い睡魔に身をゆだね、目を閉じてモゾモゾと眠りに入る体勢を整えた。

(あ……合格通知……片付け……ーー)

 そこまでは起きていたリアーヌだったが、実際に行動することはなく、合格通知は翌朝、奇妙な皺を刻まれた状態で発見されたのだった。
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