成り上がり令嬢暴走日記!

笹乃笹世

文字の大きさ
上 下
6 / 1,038

6

しおりを挟む
 その日の深夜。

 あの後、帰宅した父親にもたくさん褒められ、気恥ずかしくも鼻を高くしたリアーヌは、合格祝いの豪華な食事や美味しいデザートを堪能して、夢心地でベッドの上に寝そべっていた。

「はー……本当に入学できるんだ……あのレーシェンド学院に……」

 リアーヌは熱に浮かされたように、ほう……と熱い吐息を漏らしながら胸に抱いていた手紙に再び視線を移した。

『レーシェンド学院』
 ディスティア王国で唯一の国立学院。
 歴代の国王や王族、貴族の殆どが入学すると言われる由緒正しき学院。
 数々の英雄や、天才と名高き文官を輩出してきた実績ある学院。
 そして、ギフトを持っている者ならば、その身分を問わずに入学を許される、実力主義と平等をうたう学院。

(あのゲームの舞台……もはや聖地巡礼。 しかも攻略対象たちの一部とは同学年! もはや運命。 しかも試験に受かってるから学科も同じっ‼︎ ーー欲を言えば来年の入学が良かったけどー。 でも一年経てば主人公入学してゲームスタートだし、誰とくっつくのかも見届けられる! ……それにゲームでは見られない攻略対象たちの姿とか、学院の様子が見られるとか、ご褒美以外のなにものでもないっ‼︎   ーーミカエル先生見学に保健室入り浸っちゃったりして⁉︎)

 そこまで考えたリアーヌは、微かに眉をひそめて少し考え込む。

「ーーこの世界って、当然一周目でしょ……? ーー追加の攻略対象って学院にいるよね……? いや、いないわけないよね⁇」

 リアーヌが特に気に入っていたキャラが、追加される攻略対象で養護教諭だったのだ。

(だって養護教諭よ? 絶対いるよね⁇ ……そこにその人がいて、会いに行けて話もできちゃうならーー……恋愛も可能だったりしてーー)

 少しだけ期待に胸を膨らませたリアーヌだったが、息を吐くと同時に一瞬で真顔になる。

「……って、んなわけないかー。 それが可能なのは主人公ちゃんだけなのよ……ーー大体、私と恋愛するミカエル先生とか解釈違いです……」

(ーー大体、攻略対象者の全員が、何かしらの分野で大成する実力者達か、名だたる名家の跡継ぎで、もれなくイケメン揃い……棚ぼた的に貴族になっちゃった、元平民の地味ギフト持ちな平凡顔じゃなー……確実に選ばれないであろう自信しかない……)

 恋愛出来るとはカケラも思っていなかったリアーヌだったが、心のどこかに「それでも……」と、期待する気持ちはあったようだった。

 リアーヌはふぅ……と長いため息を吐きながらゴロリと寝返りをうつ。

 リアーヌの言ったとは、ギフトが使えれば便利だが、使えなくとも特に不便なこともないーーという、ギフトの総称であり、少しの揶揄やゆも含まれている。
 リアーヌのギフトは【コピー】。
 手をかざせば見たままを移し取れるギフトなのだが、この世界にはすでに印刷の技術があったーー
 印刷機よりもリアーヌのギフトの方が精巧で印刷にかかる時間も短くて済むが、リアーヌが出来なくとも印刷機があるので誰も困らない……
 ーーリアーヌのギフトは、いわゆる地味ギフトと呼ばれる部類のものだった。

「ーーこれ以上欲張るのはよそう……妄想でもなく、本当に現実で推しが生きてる世界にいるんだ。 しかも同じ学校に! 挨拶程度だったら直接会話ができるかも⁉︎ 目の前で生きてるんだよ。 本当に! ーーこれで満足できないとか、前世の同志たちに呪詛を吐かれるレベル……」

 ハハ……と、乾いた笑いを浮かべながら、リアーヌは再びゴロリと寝返りをうち、シミひとつない美しい天井を眺めて、自分に降りかかった幸運を噛み締めていた。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!

桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。 「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。 異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。 初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!

【完結】私ですか?ただの令嬢です。

凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!? バッドエンドだらけの悪役令嬢。 しかし、 「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」 そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。 運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語! ※完結済です。 ※作者がシステムに不慣れかつ創作初心者な時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///) ※ご感想・ご指摘につきましては、近況ボードをお読みくださいませ。 《皆様のご愛読に、心からの感謝を申し上げますm(*_ _)m》

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。 しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。 そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。 ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。 というか、甘やかされてません? これって、どういうことでしょう? ※後日談は激甘です。  激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。 ※小説家になろう様にも公開させて頂いております。  ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。  タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~

至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます

下菊みこと
恋愛
至って普通の女子高生でありながら事故に巻き込まれ(というか自分から首を突っ込み)転生した天宮めぐ。転生した先はよく知った大好きな恋愛小説の世界。でも主人公ではなくほぼ登場しない脇役姫に転生してしまった。姉姫は優しくて朗らかで誰からも愛されて、両親である国王、王妃に愛され貴公子達からもモテモテ。一方自分は妾の子で陰鬱で誰からも愛されておらず王位継承権もあってないに等しいお姫様になる予定。こんな待遇満足できるか!羨ましさこそあれど恨みはない姉姫さまを守りつつ、目指せ隣国の王太子ルート!小説家になろう様でも「主人公気質なわけでもなく恋愛フラグもなければ死亡フラグに満ち溢れているわけでもない至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます」というタイトルで掲載しています。

溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~

夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」  弟のその言葉は、晴天の霹靂。  アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。  しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。  醤油が欲しい、うにが食べたい。  レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。  既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・? 小説家になろうにも掲載しています。

せっかく転生したのにモブにすらなれない……はずが溺愛ルートなんて信じられません

嘉月
恋愛
隣国の貴族令嬢である主人公は交換留学生としてやってきた学園でイケメン達と恋に落ちていく。 人気の乙女ゲーム「秘密のエルドラド」のメイン攻略キャラは王立学園の生徒会長にして王弟、氷の殿下こと、クライブ・フォン・ガウンデール。 転生したのはそのゲームの世界なのに……私はモブですらないらしい。 せめて学園の生徒1くらいにはなりたかったけど、どうしようもないので地に足つけてしっかり生きていくつもりです。 少しだけ改題しました。ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。

処理中です...