Forbidden fruit

春蠶 市

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小話詰め合わせ

■お題:キメセク02

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▼ロキ×ナオ(弟×兄)
 お題:キメセク(ワンドロ)旧作


 重ねた唇の中で唾液とはまた異なる粘ついた液が舌に纏わり付く。水飴じみた濃厚な食感ながらも甘味のない、どちらかと言えばハッカを思わせる風味をくちゅくちゅと口腔粘膜に吸い込ませながら混ぜ合わせ、溢れた唾液とともに数回に分けて嚥下した。

「ふ――ぁ、ッは……」
「んッ……にーさま、まーだぁ……」
「ッ……ンッ、っ」

 粘性の強さに溺れる唇を離せば互いの間でねばっこい系が引き、球の絡んだそれが落ちる前にロキはナオへとまた噛み付いた。
 じくじくと痺れ出す舌先を濡れた口内に入れて熱くなった舌を絡め取る。誘われて出てきた舌先に吸い付いて、分泌の止まらなくなった互いの唾液を下品な音を立てて飲み下した。

「んっ、ふ……ぁん」
「は、ンッ――」

 間近で吐かれたあまい吐息が肌に触れる感覚さえ過敏に感じられ、色彩が鮮やかになって二重三重と輪郭がブレて映り出した陽気な視覚にロキは小さく笑う。
 己の脳髄が緩慢に狂ってくるのを客観的に眺めながら直に握っていた錠剤を一瞥もせずに口に放ろうとして、手首を掴まれた。

「はっロキッ……ん、だめ、だよ。はあっそれ……一緒に使う、とッ――! ンッ、ッ!」

 ロキは向けられた注意を薄い唇ごと塞いでそのまま倒れ込むとナオをベッドに押し倒す。
 ベッドが軋んで、シーツの上にぞんざいに放られているいくつかの錠剤の空包みと空瓶が跳ねる。ベッド隅に横たわっていた栄養ドリンクに似た見た目の小さな空瓶は、同じく空になった缶ビールの転がる床へと落下した。

「あッ――はあっ、ね……ロキ、っ、そ、れは……はあっ飲まないで?」
「……ん?」
「ね? ン、っお願い……お酒も飲んじゃってるし……」
「あー、ふっ――ハハハッ! ホント兄様かぁわいー」
「うん。ありがとう……ねえロキ。それ、僕にちょうだ――!」
「んんー?」

 低い耳鳴りの治らない鼓膜を揺らす訴えは言語として頭に入ってこず、ロキは何もかもを無視して真下のナオに身を寄せた。汗でしっとりとしたナオの癖っ毛が首筋に触れ、くすぐったくも癖になりそうな気持ちの良い肌触りにロキは無意識に笑い声を上げる。

「ロキ。ロキ……お願い。相互作用出ちゃうと危ないよ」
「ん? にーさま?」
「ロキ。いい子だから、にーさまにちょうだい?」
「ほしい?」
「うん」
「ふーん? ……フフッ、そッかー……にーさまは欲張りなー」

 奇妙な浮遊感に包まられながらロキは上体を起こす。くわんと頭蓋の内側で脳が揺れ、全身が溶けてしまいそうな錯覚と熱に深く息を吐くとロキはナオの片足を力任せに引っ張った。
 脱力している身の体勢を乱暴に崩された「え?」とナオが目を瞬かせる。
 足を掴まれたままナオは呆然とロキを見上げていた。

「あーげる」

 ロキは表情筋を蕩かせて微笑むと鼻歌混じりに錠剤を鈍く麻痺する手の中でうまく持ち直す。
 上がった体温で形が若干崩れた、薬と呼ぶにはカラフルすぎるポップな錠剤を指先に摘むとロキはナオの濡れそぼった内にそれを押し入れた。

「ッ! ロキッ違っ――!」
「にーいさま。ちゃんと飲めなぁ」
「ひっ……ッ、あッ! 駄目ロキッ違う、の……ァあ!」

 錠剤を指ごと腹の深くまで捻じ込んで、粘膜に刷り込むように指を動かせばナオが息を飲む。
 白い喉を晒して手足を震えさせながら悶えるナオの様子にとろりと目を細め、ロキはお気に入りの曲を口ずさみながら濃くなった粘液を混ぜる。
 ぐちぐちと跳ねる淫猥な水音はむず痒く身を焦がして、ロキは指の数を増やすと鼓膜を蠱惑的に煽ってくる粘ついた音をわざと強めた。
 ひっ、とナオが声にならない悲鳴をあげて腰を跳ねさせたが気にせずイイトコロを乱暴な愛撫で弄り続ける。

「すぐ効くやつだからよかったなー。気持ちーい?」
「っ、だ、め……だめッ……っ」

 大粒の涙を零しナオがしゃくり上げながら首を横に振る。
 なぜか必死な兄の姿がおかしくて、ロキは笑顔のままナオへと大きく頭を傾げた。

「なーににーさまぁ?」
「っど、しよ……ロキッごめんね。これ、ッ僕……動けなくなっちゃう、かも……ッ、うっどうしよう……ぅッ、うう……」

 どうしよう。と、嗚咽混じりに繰り返すナオ。
 涙に覆われた黒い双眼はまともに焦点があってはおらず、どこを向いているのか分からない。子供のように顔をくしゃくしゃにして「どうしようどうしよう」と呟き続ける。
 不安定ながらも抑揚のない、壊れたラジオじみたアンバランスな声音を聞き流しながらロキは指先で一度柔い内側をきつく引っ掻いた。

「ひあっ! ッ……ぁだめ! 待ってロキッ、うっ、だ、めだからぁ……ッ!」
「ココきもちー?」
「っう――ッひ、っあ、あっ……!」

 混乱しながらも与えられる快楽に反応して甘美に戦慄く内側の感触にロキは笑って熟れた内部から指を抜いた。
 粘度の高まった体液を自分の指ごと舐めてから拳を握るナオの手に自分の手を重ねる。

「にーさま。見せて」
「ッ……え、っ?」
「俺に見せて? ほーら。自分ですんの。早くしろッて」
「だ、めッ、駄目だよロキ……だって、さっきのクスリ……」
「はーやーくー」

 ロキがナオの痙攣する手を掴んで先走りの溢れるソコに押し付ければ白い肩が跳ねた。

「……で、も……」
「おねがーい」

 下から覗き込むように兄へと強請ればナオが震える唇を噛み締めて、唾を飲む。
 赤らむ頬を止まらなくなった涙で湿らせるナオは歪んだ瞳でロキを見て、ややあってから頷いた。

【end】
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