18 / 75
悪霊悪戯には玩具を添えて
■悪霊悪戯には玩具を添えて_03
しおりを挟む
■ ■ ■
雪鳩の愛称で親しまれるラブホテル――
【SNOW PIGEON】は北区にあるラブホテルの中でも老舗であり、人工島が賑わい出したとほぼ同時期に動き始めた。
懐古的な煉瓦造りの六階建て。改装を重ねながらも一部の内装は古く、いまだにブラウン管テレビが置かれている部屋もあるエアシューターが現役のホテルだった。
オープン早々に十代の少女が屋上から転落死した事件でも有名で、噂では心霊スポット扱いもされている。
過去にナオが雪鳩の一室でナニカと会話をしていたのは記憶に新しく、また突然話し出すのではないかと気になる、がしかし。今回に限ってはオカルト展開はおきないと確信し、ロキは真新しい紙袋を漁る。
「どの袋かなーッと」
冷えた身体をシャワーで温め、缶ビールを三本一気に飲み干したロキは意気揚々と遊ぶ準備を開始。
大きな紙袋の中で小分けにされている袋達を端から開けていき、最初の袋にはお菓子が大量に入っているのを視認する。中から飴玉の袋を取り出して背後のベッドに投げてから同じ袋に入っている長方形の箱を左手のみで雑に開封した。
チョコレートで笑顔が描かれる人面マカロンを摘むとアルコールの風味が残る口内に一口で放り込んだ。一個目を咀嚼している最中にも関わらず二個目もパクリ。
「んー? どーえらッ……?」
ハロウィン限定マカロンを頬張りつつ別の袋を探る。
魔女の釜よろしく品がたくさん犇く袋を掻き乱し、いくつかの性的な玩具や鈴の付いた赤い首輪をポイポイと子供の手付きでベッドへ投擲。
二個目のマカロンを胃に落とすと同時に「!」ロキは目的の物を掴んだ。
「コレコレ。にーいさま猫ー!」
黒い猫耳のついたカチューシャを嬉々と掲げ、ロキはベッドに乗り上げてナオへと近付いた。
「ニャーニャー言わせんのはさッすがにベタか? でも超似合うと思うんだよニャー」
ロキは機嫌良く猫耳カチューシャをナオの頭につけようとし「ん?」
中途半端に手を止める。
「……にーいーさーま。身体起こしてくんね? 着け辛い」
「ッ――……ぁ、はあっご、め、んね」
「なんか、思ッたより可愛いお顔になッてんな? 身体熱い?」
「ンッ、はあ……っ熱い、かも……っ」
「だよニャー。汗スゲーし」
成人男性が二人乗ってもまだ余裕のある大きなベッドに横たわったまま肩で息をしているナオ。
紅潮した頬に触れれば酷く熱い。
ロキはナオの頬から左手をするすると下げ、荒い呼吸を零す半開きの唇にマカロンを摘んだ指を突っ込んだ。
「買ッたマカロン。前にルームサービスで頼んだのと味一緒だッた」
唐突に話題を変え、ロキがナオの重怠げな舌に指を擦り付ければナオは扇情的に呻いた。
「なッ? 一緒だろ?」
「ん、ん……そ、らね……」
ナオは質問に答え、弱々しくもロキの指を吸う。
クスリに染まりながらも判断力はまだ正常であることを確認するとロキは指を引き抜いた。
ちゅぱ……と、窄められていた薄い唇から涎が跳ねる。
「ぅッ――はっ……っ」
「兄様は体温低いからしんどそうニャー」
ホテルの部屋に入る前からふらついていたが、入室すると本格的にぼんやりし出したのでロキはナオを放置し一人でシャワーを浴びてしまった。
ピアスや指輪などの装飾品を外し備え付けのバスローブを着て寛ぐ気満々のロキとは違い、ナオはモッズコートを脱いだだけの姿でベッドに横たわっている。
風呂に入ると告げたロキの身支度は朦朧としたなかでも辛うじて終わらせたが、どうやら自分の支度は終わらせる前に限界が来たらしい。
ロキの服は丁寧にハンガーポールにまとめられているがナオのモッズコートは床に置かれる紙袋の側にぞんざいに落ちたまま。さらに言えば、コートの上にはナオの靴下が一足乗っかっている状態。
「ッたく……」
もう一足は履いたままで、ロキは肩を竦めると唾液に濡れた指をナオの靴下に掛けて、引っ張り脱がしてやった。
「っは……はあ、ッ……ふぅ、っ」
ナオは酷い汗で、額に前髪が張り付く。吐き出す息は甘ったるく掠れ、情欲的に火照っている。
キャンディには思った以上にきつい成分が入っていたようで、くたりと脱力している兄にロキは喉奥で一笑すると靴下をベッドの外へ投げた。
風呂上がりのロキよりも高い体温になっているナオは、やはり今回はナニカと喋る余裕はなさそうだ。
「良い子な兄様。頭だけでも上げて。できるだろ」
「はっ……うん……っ」
言われた通り僅かに頭をもたげたナオの後頭部にロキは左手を滑り込ませる。薬物に乱されてふらつく頭部を片手で支え、黒い髪にカチューシャを装備させた。
「かわいーニャー」
ロキは機嫌良く猫の踏まれる名曲を口ずさみながら猫耳頭を寝かせ、今度はナオの右手を持ち上げる。
右手の中指に巻かれた包帯を取ってやれば変色してまともに爪の生えていない指先が露わになった。
ロキは包帯を床に捨て、自分が爪を剥がし続けて歪にした兄の指先に口付けると横目でベッドへ放ったいくつかの玩具を確認。リモコンの丸い摘み部分にコウモリの描かれたパンプキンカラーのローターの側に転がっている猫の尻尾と哺乳瓶型のローションボトルを拾い上げた。
「兄様。ちゃんと自分で濡らしとけ」
ロキは尻尾の先についたプラグを荒い息を吐くナオの口元へと運んだ。
ナオは視線を動かすこともなく、ぼやりとどこかを見たまま差し出された円錐型のアナルプラグに赤い舌を伸ばす。舌先で表面を舐め上げ、それからお菓子でも頬張るように卑猥な玩具を震える口で咥えた。
「良い子良い子」
ちゅるり、と湿ったリップ音を弾かせて尻尾型の先端をしゃぶるナオを褒めるとロキは兄の衣服に手を掛ける。
「兄様。足上げろ」と短い指示を出し、素直に従うナオから慣れた手付きで服を剥がしていく。
器用に片手だけでナオの下半身から布を奪うと露わになった白い素足を指先で撫で上げた。それから太腿の側面に口付ける。
「ふっ、はぁッ……」
いつもより苦しげな吐息とともに肌を粟立たせ、僅かに跳ねたナオの足先を一瞥。ロキは姿勢を正すと脱がした服を床へぶん投げ、反対の手に持っていた哺乳瓶型ボトルの蓋を捻った。
「ミルク味だッてよ。超そのまんまじゃん」
表面に貼ってある文字を読みロキは楽しげに嘲笑すると吸口型の蓋を開けた。
縁についた中蓋を剥がし、プラスチック製の目盛が刻まれたボトルを傾けてとろりとした中身を揺らす。
「ミルクッつーか、ただの精液だろコレ……ん?」
思ったことを率直に口にした時、ロキはシリコンゴムで出来た吸口にリアルな穴が空いている事実に気が付く。
雪鳩の愛称で親しまれるラブホテル――
【SNOW PIGEON】は北区にあるラブホテルの中でも老舗であり、人工島が賑わい出したとほぼ同時期に動き始めた。
懐古的な煉瓦造りの六階建て。改装を重ねながらも一部の内装は古く、いまだにブラウン管テレビが置かれている部屋もあるエアシューターが現役のホテルだった。
オープン早々に十代の少女が屋上から転落死した事件でも有名で、噂では心霊スポット扱いもされている。
過去にナオが雪鳩の一室でナニカと会話をしていたのは記憶に新しく、また突然話し出すのではないかと気になる、がしかし。今回に限ってはオカルト展開はおきないと確信し、ロキは真新しい紙袋を漁る。
「どの袋かなーッと」
冷えた身体をシャワーで温め、缶ビールを三本一気に飲み干したロキは意気揚々と遊ぶ準備を開始。
大きな紙袋の中で小分けにされている袋達を端から開けていき、最初の袋にはお菓子が大量に入っているのを視認する。中から飴玉の袋を取り出して背後のベッドに投げてから同じ袋に入っている長方形の箱を左手のみで雑に開封した。
チョコレートで笑顔が描かれる人面マカロンを摘むとアルコールの風味が残る口内に一口で放り込んだ。一個目を咀嚼している最中にも関わらず二個目もパクリ。
「んー? どーえらッ……?」
ハロウィン限定マカロンを頬張りつつ別の袋を探る。
魔女の釜よろしく品がたくさん犇く袋を掻き乱し、いくつかの性的な玩具や鈴の付いた赤い首輪をポイポイと子供の手付きでベッドへ投擲。
二個目のマカロンを胃に落とすと同時に「!」ロキは目的の物を掴んだ。
「コレコレ。にーいさま猫ー!」
黒い猫耳のついたカチューシャを嬉々と掲げ、ロキはベッドに乗り上げてナオへと近付いた。
「ニャーニャー言わせんのはさッすがにベタか? でも超似合うと思うんだよニャー」
ロキは機嫌良く猫耳カチューシャをナオの頭につけようとし「ん?」
中途半端に手を止める。
「……にーいーさーま。身体起こしてくんね? 着け辛い」
「ッ――……ぁ、はあっご、め、んね」
「なんか、思ッたより可愛いお顔になッてんな? 身体熱い?」
「ンッ、はあ……っ熱い、かも……っ」
「だよニャー。汗スゲーし」
成人男性が二人乗ってもまだ余裕のある大きなベッドに横たわったまま肩で息をしているナオ。
紅潮した頬に触れれば酷く熱い。
ロキはナオの頬から左手をするすると下げ、荒い呼吸を零す半開きの唇にマカロンを摘んだ指を突っ込んだ。
「買ッたマカロン。前にルームサービスで頼んだのと味一緒だッた」
唐突に話題を変え、ロキがナオの重怠げな舌に指を擦り付ければナオは扇情的に呻いた。
「なッ? 一緒だろ?」
「ん、ん……そ、らね……」
ナオは質問に答え、弱々しくもロキの指を吸う。
クスリに染まりながらも判断力はまだ正常であることを確認するとロキは指を引き抜いた。
ちゅぱ……と、窄められていた薄い唇から涎が跳ねる。
「ぅッ――はっ……っ」
「兄様は体温低いからしんどそうニャー」
ホテルの部屋に入る前からふらついていたが、入室すると本格的にぼんやりし出したのでロキはナオを放置し一人でシャワーを浴びてしまった。
ピアスや指輪などの装飾品を外し備え付けのバスローブを着て寛ぐ気満々のロキとは違い、ナオはモッズコートを脱いだだけの姿でベッドに横たわっている。
風呂に入ると告げたロキの身支度は朦朧としたなかでも辛うじて終わらせたが、どうやら自分の支度は終わらせる前に限界が来たらしい。
ロキの服は丁寧にハンガーポールにまとめられているがナオのモッズコートは床に置かれる紙袋の側にぞんざいに落ちたまま。さらに言えば、コートの上にはナオの靴下が一足乗っかっている状態。
「ッたく……」
もう一足は履いたままで、ロキは肩を竦めると唾液に濡れた指をナオの靴下に掛けて、引っ張り脱がしてやった。
「っは……はあ、ッ……ふぅ、っ」
ナオは酷い汗で、額に前髪が張り付く。吐き出す息は甘ったるく掠れ、情欲的に火照っている。
キャンディには思った以上にきつい成分が入っていたようで、くたりと脱力している兄にロキは喉奥で一笑すると靴下をベッドの外へ投げた。
風呂上がりのロキよりも高い体温になっているナオは、やはり今回はナニカと喋る余裕はなさそうだ。
「良い子な兄様。頭だけでも上げて。できるだろ」
「はっ……うん……っ」
言われた通り僅かに頭をもたげたナオの後頭部にロキは左手を滑り込ませる。薬物に乱されてふらつく頭部を片手で支え、黒い髪にカチューシャを装備させた。
「かわいーニャー」
ロキは機嫌良く猫の踏まれる名曲を口ずさみながら猫耳頭を寝かせ、今度はナオの右手を持ち上げる。
右手の中指に巻かれた包帯を取ってやれば変色してまともに爪の生えていない指先が露わになった。
ロキは包帯を床に捨て、自分が爪を剥がし続けて歪にした兄の指先に口付けると横目でベッドへ放ったいくつかの玩具を確認。リモコンの丸い摘み部分にコウモリの描かれたパンプキンカラーのローターの側に転がっている猫の尻尾と哺乳瓶型のローションボトルを拾い上げた。
「兄様。ちゃんと自分で濡らしとけ」
ロキは尻尾の先についたプラグを荒い息を吐くナオの口元へと運んだ。
ナオは視線を動かすこともなく、ぼやりとどこかを見たまま差し出された円錐型のアナルプラグに赤い舌を伸ばす。舌先で表面を舐め上げ、それからお菓子でも頬張るように卑猥な玩具を震える口で咥えた。
「良い子良い子」
ちゅるり、と湿ったリップ音を弾かせて尻尾型の先端をしゃぶるナオを褒めるとロキは兄の衣服に手を掛ける。
「兄様。足上げろ」と短い指示を出し、素直に従うナオから慣れた手付きで服を剥がしていく。
器用に片手だけでナオの下半身から布を奪うと露わになった白い素足を指先で撫で上げた。それから太腿の側面に口付ける。
「ふっ、はぁッ……」
いつもより苦しげな吐息とともに肌を粟立たせ、僅かに跳ねたナオの足先を一瞥。ロキは姿勢を正すと脱がした服を床へぶん投げ、反対の手に持っていた哺乳瓶型ボトルの蓋を捻った。
「ミルク味だッてよ。超そのまんまじゃん」
表面に貼ってある文字を読みロキは楽しげに嘲笑すると吸口型の蓋を開けた。
縁についた中蓋を剥がし、プラスチック製の目盛が刻まれたボトルを傾けてとろりとした中身を揺らす。
「ミルクッつーか、ただの精液だろコレ……ん?」
思ったことを率直に口にした時、ロキはシリコンゴムで出来た吸口にリアルな穴が空いている事実に気が付く。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
43
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる