Forbidden fruit

春蠶 市

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お鍋の中に入れるもの

■お鍋の中に入れるもの_03

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 誰もがよく使用する流行りの連絡用アプリに大量のメッセージが写真付きで送られてきていた。
 ロキがグループに送った『肉だけバジルカレー』に反応してお友達の母親達から次々に聞いてもいない自宅の夕食報告が上がる。
 スタンプひとつで他人になりきれる楽さにロキはくつくつと喉奥で笑い声を転がした。

「はぁ……楽しそうだねロキ」
「超楽なのは確かだな」
「ん、っ……」

 ロキは密着したままナオのズボンの前を手際良く片手のみで緩ませる。
 中に手を入れ、するすると尻肉を直に撫でればナオが小さく身振るいを起こした。

「ローションねーのはさすがにか……兄様キッツイしなァ……」
「っ、なくても、平気だよ?」
「平気じゃねーし。そんなのレイプみてーじゃん。俺は兄様に優しくしたいのー」
「ひゃ、っ……んんっ、っ」

 滑らかな尻肉を撫で回し、乾いた孔を指の腹でトントンと叩いた。きゅ、と反応を示す窄まりに無理矢理指を突っ込んでも良かったが、さすがにそれはお預けとし、柔らかく指腹でくすぐるだけにとどめておく。

「っふぁ……んんっ」
「寂しいけど我慢な兄様。その代わりいまはコッチ」
「あっ、っ」

 互いの下腹部を生地越しに擦り合わせる。

「んっ一緒にするの……?」
「いや?」
「ううん。っはあ……ロキがしたいなら、して」

 ナオは自分から腰を反らしてロキに深く身を寄せてきた。
 ロキの背中を上着越しに撫で、ロキの耳元で切なげに吐息を吐く。ただ泣きじゃくって幼くなるナオも好みだが、教えた通りにプロの男娼と紛う所作を繰り出す姿も好みだった。

「いーよ。兄様にたくさんしてあげる」
「っひあ……っ!」

 生地越しに触れ合うモノを擦り上げる。
 生地のざらつきが苦しく、けれども身を重ねてきつく律動すれば摩擦で下腹部の熱量がじわじわと強まってきた。

「あっ、っん……っふあ、っ」
「ン、にーさま、っこうしてると新婚みてーな。ハァ……ッコレ、子作り練習?」
「っ、あ、んっ駄目っだよ……っ」
「なんで? 俺と子作りセックスしたくねーの?」
「はっ、ふ……兄弟、でっ、ん……子作りしたら、あっ、っ駄目だから、はっぅ、っ」
「そーな。兄様は超賢い。じゃあ、俺といましてるコレ、なーに?」
「ひぁ! っ!」

 より深く互いを合わせ、ぐりっと刺激すればナオがロキの上着を掴んだ。

「っあ、っロキ、っ! んん!」
「にーさまッ、ほら……ンッ教えて。こうやッて兄様は弟となにしてんの?」
「こ、れは……っひ、っ弟を、っ甘やかしてっん! っふあ……っ」
「そーだな。コレは大事な兄弟のスキンシップ。兄様は弟のコト気持ちよく甘やかさなきゃ。けどギュッギュッてされて気持ちよーく甘やかされてんの、兄様じゃね?」
「ぁ、あっ……っごめんなさいっ、っあ、っお兄ちゃん、なのに、っひあ! っあ!」
「ンッ、コレ好き? ココこうやッて……ッ」
「あ、ぁあ――っ……!」

 ナオの体躯をシンク台に軽く乗せるように押さえ付け、ゴリゴリと摩擦を強める。
 ナオが息を荒くし、落ちないようにかロキの上着にきつく掴み縋った。素肌に傷を付ける恐れがないからか上着に爪を立て、縋り付くナオの様にロキは興奮を覚える。

「なあ、挿れてねーのに兄様のお腹気持ちよくなッてる? チョー可愛い」
「ふっ、っぁ……」

 直接的ではない刺激は物足りなさとむず痒さを生むが妙な愉しさも膨らませる。
 物足りない快楽を補うためにロキはナオの耳を食んだ。

「ぅ! あっ……ん、はっはあ……っ」
「にーひゃま、ろう?」
「あ、っふ……っ」

 薄い耳に舌を捻じ込み、卑猥な音を奏でて舐め回す。
 鼓膜をくすぐる低い水音にナオが身動ぐも、ロキはうまくそれを押さえ付けて強く身体を合わせた。

「んっロキ……っ口で、っはあ、っしようか?」
「んぁ? っン、ッむ」
「ふあ、っ、っ……んっ僕、ばっかり……っはぁ気持ちいいから、っ……」
「おみみモグモグさえんの、きもひーの?」
「はあっ、うっ気持ちいい、から……僕が、っん、僕に、させて……っ」
「いーよ。俺もちょッとコッチあるし」

 申し出を受け、ロキは珍しく素直にナオから一歩離れる。
 ふらりと熱に浮かされた様子のナオはその場に膝をついた。

「はあ……っ」

 深く息を吐き、ナオはロキのスラックスの前を緩めると既にかたくなっているモノを取り出した。

「よろしく兄様。可愛いお口にたくさん甘えさせてね」
「うん。甘えて……っんっ、っふ」

 擦り合いで興奮し先走りの滲むモノをナオは両手で包むと唇を当てる。下から舐め上げて唾液を塗りつつ手を動かした。

「兄様。咥えて」
「ん、っうん……っんっ」

 言われた通りにナオは口を開けてすぐにロキのモノを咥え込んだ。
 次の瞬間ロキはナオの頭を片手で押さえ、軽く前屈みになる。

「ん゛ッ! っ!」

 ナオの後頭部がシンク下の収納扉にぶつかるが気にせず黒髪を掴んで喉奥まで突いた。

「ッ……――!」
「ちゃんと奥まで咥えろよ。できるだろ?」
「ぐっ、っ……ぅ゛っ」

 ナオの嗚咽を聞き流し、ロキはあいている片手をスマートフォンに伸ばす。改めて中身を確認。
 ある家は市販の唐揚げ。ある家はオムライス。ある家は野菜炒めで『肉だけ食べた』と子供の名前を悔しそうに叫ぶメッセージの後に泣いている兎のスタンプが付属されてきた。ある家はお揃いのカレーだが、そちらはきちんとした複数の具が入り込んだもので、隠し味は味噌らしい。

 各々が好き勝手に夕食自慢を始め、躊躇なく子供の名前を書き込んで食に関しての不満を綴っていく。

「どの家も個人情報ダダ漏れ……まーまー上手そうですこと。兄様もおいしーい?」
「ッ゛――ん、っぐ……っ!」
「ちゃーんとモグモグしろよ?」

 喉を痙攣させるナオにそれだけ伝え、ロキはスマートフォンにまた意識を戻す。
『食べ遊びしないで!』とのメッセージへロキが『分かる!』との文字を背負った親指を立てている猫のスタンプをひとつ返せば、途端に他の皆も同意する旨のスタンプを流し始めた。
 自分達が居座る日陰の世界でもこれくらいの手軽さでできる偽装工作方法が欲しいとロキは思いつつ、こんな偽造とも呼べない悪戯程度の雑なやり口を本気で導入した奴は秒で豚箱を通り越してゴミ箱行きだろうと想像が容易い。

「超笑える」

 こういうのは注意をしながらも実際には自分の身に不幸が起こるなど有り得ないと鼻を高くしている者が多い場だからこそできるやり方。
 後日、この惨状がどんなふうにニュースに取り上げられるかロキは少し楽しみになった。
 動機はなんなのか。きっと自称専門家が事実とは掠りもしない憶測を複雑に立て、議論するだろう。事実など、専門的に考える必要もない。単純な話だ。
 なにもかも、そういう気分だったの一言。

「まッ、島関連の事件は結局ぜーんぶ未解決事件になるんだけど……超つまんねー」

 人工島に関わる事件が解決することはなく、どれだけ世間を騒がせようとも謎のまま。
 ロキはナオへと意識を落とした。この兄の事件も世間では未解決事件となり、あまつさえついた尾鰭はオカルト要素を含んでいたと頭の隅で思い起こす。
 幼い自分のやり口の下手さは黒歴史にも近いが、兄を手に入れた事実だけは自画自賛する。

「兄様も下手くそな食べ遊びしてねーの」
「っんぐ、っあ゛っ――!」

 体勢を戻して黒髪を引っ張れば、ずるりと口からロキのモノを零してナオは咳き込んだ。

「甘やすんだろ。しっかり甘やかせよ」
「う゛ッげほ、っう、っごめ、っ――っう」

 涙の滲んだ双眼を持ち上げ、ナオはすぐに舌を伸ばした。

「ふっぅ、っん……はぁ、っ」

 ロキは自分のモノを犬のように舐めるナオの汗ばんだ前髪を持ち上げる。白い額には汗がじっとりと浮かぶ。
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