Wachsh×Hur

春蠶 市

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媚薬を飲まないと出られない部屋

■媚薬を飲まないと出られない部屋_01

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▼セト×ナオ(大人×少年)
 顔射、イラマチオ、玩具、スパンキング、小スカ、兜合わせ、本番なし

 ご都合時空とやらに振り回されている暇はなかった。
 だからかたく閉ざされた扉の頭上――記される『媚薬を30本飲まないと出られない部屋』の文字にセトは溜め息をついて、テーブルに並ぶショットグラスを顎でさす。

「飲め」
「はい。旦那様」

 自分同様いつの間にかだだっ広い部屋にいたペットは、短い指示に頷いた。

「全部ですか?」
「ああ」
「分かりました」

 安っぽいコスプレ用メイド服を着たナオはすぐにテーブルまで近付くと、一瞬の躊躇もなくグラスを仰いだ。
 扉のプレートには媚薬と書かれているが本当にそうなのかは分からない。
 それでもナオはグラスを次々に空にしていく。
 もしあれが毒で、ペットが死んだらどうやってここを出るかとセトは複数の脱出方法を苦慮しつつ、ラブホテルよろしく準備万端のベッドに腰掛けた。ローションやスキンだけでなく、枕元にはパッケージに入ったままの玩具まで転がっている。
 弟達ならばこの状況を喜ぶだろうが、セトからは溜め息しか出なかった。

 ■ ■ ■

 グラスに注がれていた蜂蜜色の液体が本物の媚薬だと判別できたのは、丁度十八杯目のグラスが空になってから。

「っ、っう……っはあ……っ」

 ナオの呼吸が辛くなり、そこに苦しげな嬌声が混ざれば嫌でも本物だと納得させられる。
 手足が震え始めたナオはグラスがうまく握れなくなるほど動きが鈍くなっていた。だが本人は命令を遂行しようとグラスに手を伸ばす。

「う、っ……っ」

 十九杯目を掴むも指に力が入らないのかグラスを滑らせた。
 音を立てて床にグラスが落ち、ナオはそれを拾おうとしてそのまま膝から崩れ落ちた。

「っ! っ――――うぅ、っ」

 割れずに転がるグラスの前でしゃがみ込み、広がったスカートを苦しげに掴む。

「ご、ごめんなさい……っ、うっ、っす、すぐ、飲みます、から……」

 涙目で訴えてくるナオにセトは黙ってベッドから立ち上がった。

「それはいい」
「っ、っあ……で、も……」

 床にぶち撒けられた液体を舐めようと姿勢を低くしたナオの顔を足で制し、そのまま爪先で顎を持ち上げる。
 黒い瞳は涙で埋もれ、焦点もぼやけていた。白い肌は火照り、荒い呼吸を繰り返す唇から舌が溢れる。

「ぜ、んぶ飲ま、な、いと……っはあ、っで、出れなく、なっちゃ、っ……っ」
「こういうのは都合がいいものだ」
「っふう、っは……ぁ、なに、が、ですか?」
「いちいち気にするな」

 説明をしても混乱を招くだけだろうと思い、セトは短く吐き捨てる。
 テーブルには媚薬が並々と注がれるグラスが十一杯置かれていた。気にするのも時間の無駄だろうからセトは黙って元に戻っていた奇異なグラスを取り、一口で飲み干した。

「お前に任せていたら日が暮れる。まあ、こういう場で時間の概念があるかも分からないがな。存外外では数時間と経っていなかったりするだろう。俺もそのほうが助かる。まだ仕事が残っているからな」
「はっ、っ、ご、めん、なさ、ぃ……っ、んっ」
「邪魔だ。どうせ出たらミカやロキが騒ぐだろうから、先に準備でもしておいてやれ」
「は、い……っ」

 よろよろと立ち上がり、おぼつかない足取りでナオはベッドへと向かう。
 弾力のあるベッドに乗り上がったのを見てから、セトは残り物の消費に取り掛かった。

「……………」

 セトの仏頂面がさらに険しくなったのは六杯目を空にした後。
 獣人とヒトは似ていても中身はまったく異なっており、ヒトに効くものは基本的には獣人には効かない。ヒトのナオが十八杯も飲めたのだから獣人であるセトならば残りを易々片付けられると楽観視していた。
 しかし、ご都合時空とはやはり都合良くできているらしい。

「………………」

 セトは眉根を顰めた。
 露骨に性的な熱に苛まれる。それでもここで手を止めると飲めなくなると本能的に察してセトは次のグラスを煽った。
 黙々とグラスを空にし――――最後の一杯を残して手を止めた。

「っ、はあ……っ、? 旦那、さ、ま……?」

 グラスを放置し、足早にベッドへ向かえば一人で事を進めていたナオが近付くセトの気配に気付く。色に染まった双眸をふらりと持ち上げる。

「どうし、っん――……っ」

 黒い瞳が自分を映す前にセトは小さな唇に噛み付いた。唐突な行為にナオの歯が唇にぶつかったが人の歯程度で獣人に傷はつかず、構わずに舌を捻じ込んだ。

「っ、っ! っん、っう……っ!」

 酸素を奪ったまま華奢な身体を押し倒し、覆い被さってより深く唇を味わう。狭い口腔を舌でなぞるほど甘ったるい唾液が溢れ、セトは美味なそれを求めてより舌を動かす。舌先が狭い喉奥に触れた瞬間、ナオの身体が跳ねた。

「ん゛っ、ふ……っんぅ!」

 酸欠と喉壁への刺激で反射的に白い体躯が震え上がるもそれを気遣う必要性はなく、しつこく口内を蹂躙する。息継ぎすら惜しいと感じるほどで、触れる角度を変える度に溢れる唾液を追って口周りも舐め上げた。

「だんっん……っう、っん、んっ」

 隙間から零される嬌声をまた塞ぎ、舌に舌を絡めてきつく吸い付く。

「ふッ、ぅ、っん――――!」

 舌先を甘噛みすればナオの細腰が派手な胴震えを起こした。自然と擦れ合わせていた下腹部が湿り気を強め、か弱い身の絶頂を察したセトは名残惜しいが一度唇を離した。

「! っ、げほ! っ、う゛ッごほ、っぇ……っごほ! っ――!」
「はぁ……っ、元は甘露だったな」
「うっ、ごほっそ、ぅです……はあ、っだめ、で、したか? っん……」

 セトは咳き込むナオの黒目から落ちる生理的な涙を舐め取る。
 甘味がセトの味覚を支配した。

「はぁ……っふう、っ旦那さま?」
「確かに、美味いな」
「あ、りがとう、はあ、っございます……随分と、薄れたと思いますけど」
「これでか?」
「はい……」

 食用ヒトの中には甘露と呼ばれる高級食材が存在する。
 甘露は果物のみを与えて育てたヒトで、それらは血肉が芳醇さを強めて大層美味に変化するだけでなく、性交に関してもそれはそれは甘美な抱き心地だと重宝されている。
 ただし育成が難しく、なにより果物だけで育つために普通のヒトよりも断然か弱い。ゆえに一体につきそれっきりの行為と食事となる。
 近年ではヒト虐待とも言われ、甘露は裏業界でも中々お目にかかれない。

 元々ナオはそんな希少な甘露として育成されていた。だからナオは普通のヒトとは比べものにならない額で、またそこから彼の一度きりの身体をある程度の状態に仕立て直すため追加資金と長い時間も費やした。

 下の弟につられてナオを勝手に使用した後、父親に金が掛かっていると叱られて説明を受けたのをよく覚えている。
 元とはいえ最高級品である甘露を壊すのは流石にまずいと頭の片隅で思ったが、僅かに思っただけで身体に余裕はない。なにより体質をある程度整え直したとはいえまだまだ甘味は健在で、勿体ないとセトは身体の位置を下げる。
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