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新世界

勝ったぞ−!

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 ――ミズキ視点――

「ガキのくせに俺に勝とうなんて生意気だぞ」

「年齢が何か関係あるんですか?」

 負けそうになったら謎の説教を始めたチャラピアスに私もついつい強い口調になる。もうこんな試合さっさと終わらせよう。

 ドーラも同じ事を思ったのか、命令する前に魔法の準備を始めた。やっちゃえやっちゃえ!

「くそぉぉぉ! 俺がこんな所で負けられるか!」

 うん? もしかして何か秘策でもあるのかな?
 私はドーラに注意するように伝えて身構える。最悪の場合はサンドも出そうかな。あまり手の内は見せたくないんだけど。

 でも私の心配は杞憂に終わった。チャラピアスがやった事といえば、グラウンドにあった池に向かってスキルの能力を使って、大波を発生させただけ。

 いやまぁ強いけどさ……普通空を飛べるドーラに使う? 私はドーラと一緒に飛ぶことで簡単に避けられた。

「なんで避けるんだよ! この波に当たれば波が渦になって、俺が勝てたのに!」

 へー。それは確かに当たってたら危なかったかも。まぁ分かった事はチャラピアスはスキルの能力で無理やり勝っただけってことかな。よくそれで三位までいけたね。警戒して損した。

「ドーラ。終わらせちゃって」

 ドーラが撃った光線がチャラピアスを貫く。それだけで試合がおわった。

「勝者はミズキ選手!! アク選手の必殺技、大潮を避けて華麗に勝利!! 驚きの結果だー!!」

「おめでとーう!」

「楽しかったわ! これからも頑張って!」

 試合前はすぐ終わるんだなって退屈ムードだった会場が、今はすごく盛り上がって観客たちが応援の言葉をかけてくれる。
 私はドーラと手を振ってそれに応えた。

 チャラピアスのファンからブーイングがこないか不安だったけど、ほとんどの人が私が勝ったことを祝ってくれてるみたい。

 こんなにたくさんの人に応援されるのってめっちゃ嬉しい。次も頑張るぞ!
 会場を出るとリリアちゃんやメイちゃんがいた。

「アクに勝つなんてすごいじゃない! 私と戦うまでに負けたら許さないわよ!」

 メイちゃんがそういった。私もメイちゃんとの試合がすごく楽しみだよ!

 ちょっと前にテイマー協会の前で戦った時は私が勝ったけど、メイちゃんが妙に自信いっぱいだから何かあるのかも。

「私も二人の試合見てましたよ! 後ろの方の席だったので、二人からは見えなかったと思いますけど……。二人とも勝てて良かったですね!」

「ありがとうリリアちゃん。メイちゃんから私まで三時間くらいあったのに、ずっと見てくれてたの!? 暑かったでしょ?」

 嬉しいー! 試合の時にリリアちゃんが見つからなくて少し泣きかけたけど、ちゃんと見てくれてたみたい。やっぱりリリアちゃんは優しいなぁ。

「当たり前じゃないですか! このためにチケットの予約を一ヶ月前から取ってたんですからね。それに他の人の戦いも見てて勉強になりました」

 リリアちゃんが少し怒った顔で言ってきた。信じてなかったわけじゃないよ! ごめんね!

 でもチケット一ヶ月前から!? ていうかそれで後ろの席だったの!? 

 私は出場者って事でDランクのチケットもらえたけど、これそんなに貴重な物だったんだ……。これをくれた大会運営に感謝! もうマジ感謝!

 するとリリアちゃんがいつもの優しい表情に戻って聞いてきた。

「それで試合は楽しかったですか?」

「もちろん! 色々な手続きはめんどくさかったけど、やっぱり大会に出て良かったよ!」

 大会は本当に楽しかったよ。特に普段、冒険者が戦う時は命をかけて仕事のために戦うことばかりだから、こんなにたくさんの人と楽しく戦えるのは、とってもすごいと思う。

 この大会を考えたこの国の人はすごいな~。他の国にも広がってほしいね。




 さて、楽しい戦いが終わったから今度は楽しくない戦いです。というのも今日の朝にお金も貯まってきたし、この国で旅行をしようって話を私とリリアちゃんとメイちゃんの3人でしてた時の事なんだけど……。


「私は昔からこの国に住んでるから、どこでも案内してあげるわよ!」

「すごい! じゃあこの恋人の丘ってとこに行ってみたい! すごく綺麗だよ!」

「うっ、そこは行った事ないから道が分からないわ」

「あっすみません。メイさん……」

「なんかごめんね?」

「そんな可哀想なものを見る目で見ないでよ! ていうか二人も出来た事がないでしょ!」

「ふん! 私はリリアちゃんがいるから!」

「きゅ……急に抱きしめられたら苦しいですミズキさん! ていうか私達付き合ってませんよね!? まぁミズキさんはかっこいいですけど……」

 今なんて言ったリリアちゃん! もう一回言って!
 宿の部屋でそんな話をしているとドアがノックされた。

「はーい。どうしましたか?」

 私がドアを開けるとアベルさんとイカヅチさんが立っていた。

「そんなすぐに開けたら危ないよ。相手の名前を聞いてみるとかした方がいいよ。みんな可愛いから前のアクといい、もっと気をつけなさい」

 もうアベルさんは口がうまいんだから! あっお菓子食べます?

「まったく。アベルは良くそんな歯が浮くような事が言えるな……」

 呆れた様子のイカヅチさん。でもイカヅチさんが無自覚に優しくするから、女の子にすごい人気って知ってるんですよ? ってそうじゃない。

「お二人ともどうしたんですか?」

「そうだった。今日は3人にこれを見せようと思ってね。ちょうどメイも一緒にいるならちょうど良い」

 そう言ってイカヅチさんは、とあるギルドの依頼の紙を見せてくれた。
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