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新世界
アベル
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「冒険者……いや、ミズキ様、リリア様。私達の村を救っていただき、ありがとうございました!」
メイちゃんに寝かされてた私達が目を覚ますと、村長さんを先頭に村のみんなが腰を180度曲げておじぎをしてきた。
「このお礼はなんだってします。何でも言ってください」
いやいや! そんなの悪いよ!
っていうか実際に助けたのは私達じゃないし。
「そんな……私達は守りきれませんでした。お礼だったらイカヅチさんとメイちゃんに……」
「ん? その事なら気にしないで。僕からお礼ならミズキちゃんとリリアちゃんにあげてくださいって言っといたから」
断ろうとしたらイカヅチさんがそう言った。うーん、じゃあありがたく。流石にただ働きは嫌だし。
「村一番の男を差し出しましょうか? 狩りの腕も良く、家事だって出来ます。それとも召使いが欲しければ誰か村の者を……」
いらないよ! ていうか何で人を差し出そうとするの! 不愉快だよ!
「せっかく魔物から助かった村人なんだから大事にしてください。私は人間だから守ったんです。そんな物みたいに扱わないでください」
リリアちゃんも不満げな表情だ。当たり前だよ。1番みんなを助けたがってたのはリリアちゃんなんだから。
私が怒ると村長さんは慌てて否定した。
「申し訳ありません! そのようなつもりは……しかし今のこの村はほとんどの物が焼けてしまって、これくらいしかお礼するものが無いのです」
うっ……それだったら怒ったのは悪かったかな……。ていうか私もそんな状態の人達からお礼は流石にね……。
リリアちゃんは私に全部任せるつもりみたい。
「それでしたら村の復興を優先してください。お礼はいつか余裕が出来たらって事で」
実質お礼は要りません宣言だね。ちょっとかっこつけちゃったのは許してね?
まぁそのうち村人さんも復興に忙しくて忘れるでしょ。
「なんと寛大なお言葉……このご恩はいつか絶対に返します!」
えっ、泣かないでよ村長さん。もうほとんど土下座みたいな格好だし。おじいちゃんだから腰にくるよ?
でもまぁ……こんなに喜んでくれるなら助けたかいが有ったって事かな。いつか村が元通りになったらまた来ようっと。
といっても木の家だから村は見た目だけなら、すぐに元通りになると思う。でも思い出の物とか住んでた家が壊れるのはショックだよ。
その心の傷を癒すのは大変だと思う。私達は昨日に来たばかりだけど、この人達はずっとここで暮らしてきたんだもの。
そういう意味でも早く元通りに……昨日までのような明るい村に戻ってくれたらいいなと思う。
あれから一週間。たまに届く手紙によると軍や衛兵の助けでだいぶ村は元に戻って来たらしい。良かった良かった。
村の人達は前に進んでるんだし、私だって進まないと!
という事でやっと大会だよ!
ちなみにリリアちゃんは出ないらしい。せっかく推薦状貰ったのに気が変わったみたい。一緒に出たかったのに残念。
そこで私はイカヅチさんから貰った地図を片手に、メイちゃんと参加受け付けの方に……。
あれ? 受け付けってどっちだっけ? メイちゃんも私も方向音痴という悲しい事実が分かってしまった。
「やぁ君達。その推薦状……もしかして大会参加者かい?」
ひゃっ!? 急に後ろから声をかけられた。びっくりさせないでよ。
あ、大会出場者専用のリストバンドをつけてる。この人も出るのかな?
「はい! でも私達受け付けの場所がわからなくて……」
「確かに少しわかりにくい所にあるからな。まぁ30分くらいで着くし、俺が案内してやるよ」
30分も? 私達どんだけ見当違いの場所に……。ていうか、それだけの時間案内してくれるとか優しい。
結局ついたのは45分後くらいだった。もうここ町の反対側じゃん。あっ……地図の南北反対にしてた。……てへっ。
あぁごめんってメイちゃん! 痛い痛い。こめかみグリグリは痛いって!
「わざわざありがとうございました。本当に助かりました」
「気にすんな。ちょうど暇だったからな」
そんな会話をしていると聞き慣れた声が聞こえてきた。
「おーいアベル。久しぶりだな……ってメイとミズキちゃんもいるじゃないか」
イカヅチさんだ! ってアベルってこの人!? 知り合いなの!?
「あぁメイ、ミズキちゃん。紹介するよ。僕の古くからの友達で別の大陸で冒険者をしてるアベルだよ。なんで一緒にいるんだ?」
「お前が珍しく推薦状を書いたって言うからな。イカヅチはコネとか嫌いだろ?
それが娘とその友達を推薦したっていうから気になってさ。案内がてら話を聞いてみようって。そんな強そうには見えなかったんだが……」
失礼な! 親切だなって思ったらそういう事かぁ。
「なんだそういう事か。娘のメイもそこのミズキちゃんの実力は僕が保証するよ。ミズキちゃんなんか僕に一撃当てたんだぞ?」
ほめてくれるのは嬉しいけど煽らないでイカヅチさん! ほらアベルさんなんかニヤってしてるよ!
「ふーん……それは大会が楽しみだ。俺はランクが違うから戦えないのが残念だがな。
そうだ、君達SSランクに推薦されたって事で一部の出場者から目をつけられてるから気をつけな。
じゃあイカヅチ、久しぶりに酒でも飲みにいこうぜ」
「アベルは僕がそこまでお酒が好きじゃないの知ってるだろ? 全くしょうがないなぁ……」
そう言い残してアベルさんとイカヅチさんはどこかに消えていった。改めて冒険者ランクによって分けるという大会のルールに感謝だよ。あの人と戦いたくない。
「ミズキ。目をつけられてるってどういう事かな?」
メイちゃんが不安そうな声で聞いてきた。顔は強がってるけど、バレバレだよ。
まぁ私も人の事言えないけど。一部の出場者っていうから、別に街の人には知られてなさそうだけど……。突然殴られたりするのかな……?
「きっと大丈夫だよメイちゃん。それより早く……」
出場手続きをしよ……と言いかけた所で誰かにぶつかった。
「お。華のSSランク様が推薦したっていうから楽しみにしてたら、こんな弱そうなガキかよ。コネだかなんだか知らないがさっさと田舎にかえんな」
振り返ると知らないチャラそうな男に突然罵られた。あっ……目をつけられるってそういう……。
メイちゃんに寝かされてた私達が目を覚ますと、村長さんを先頭に村のみんなが腰を180度曲げておじぎをしてきた。
「このお礼はなんだってします。何でも言ってください」
いやいや! そんなの悪いよ!
っていうか実際に助けたのは私達じゃないし。
「そんな……私達は守りきれませんでした。お礼だったらイカヅチさんとメイちゃんに……」
「ん? その事なら気にしないで。僕からお礼ならミズキちゃんとリリアちゃんにあげてくださいって言っといたから」
断ろうとしたらイカヅチさんがそう言った。うーん、じゃあありがたく。流石にただ働きは嫌だし。
「村一番の男を差し出しましょうか? 狩りの腕も良く、家事だって出来ます。それとも召使いが欲しければ誰か村の者を……」
いらないよ! ていうか何で人を差し出そうとするの! 不愉快だよ!
「せっかく魔物から助かった村人なんだから大事にしてください。私は人間だから守ったんです。そんな物みたいに扱わないでください」
リリアちゃんも不満げな表情だ。当たり前だよ。1番みんなを助けたがってたのはリリアちゃんなんだから。
私が怒ると村長さんは慌てて否定した。
「申し訳ありません! そのようなつもりは……しかし今のこの村はほとんどの物が焼けてしまって、これくらいしかお礼するものが無いのです」
うっ……それだったら怒ったのは悪かったかな……。ていうか私もそんな状態の人達からお礼は流石にね……。
リリアちゃんは私に全部任せるつもりみたい。
「それでしたら村の復興を優先してください。お礼はいつか余裕が出来たらって事で」
実質お礼は要りません宣言だね。ちょっとかっこつけちゃったのは許してね?
まぁそのうち村人さんも復興に忙しくて忘れるでしょ。
「なんと寛大なお言葉……このご恩はいつか絶対に返します!」
えっ、泣かないでよ村長さん。もうほとんど土下座みたいな格好だし。おじいちゃんだから腰にくるよ?
でもまぁ……こんなに喜んでくれるなら助けたかいが有ったって事かな。いつか村が元通りになったらまた来ようっと。
といっても木の家だから村は見た目だけなら、すぐに元通りになると思う。でも思い出の物とか住んでた家が壊れるのはショックだよ。
その心の傷を癒すのは大変だと思う。私達は昨日に来たばかりだけど、この人達はずっとここで暮らしてきたんだもの。
そういう意味でも早く元通りに……昨日までのような明るい村に戻ってくれたらいいなと思う。
あれから一週間。たまに届く手紙によると軍や衛兵の助けでだいぶ村は元に戻って来たらしい。良かった良かった。
村の人達は前に進んでるんだし、私だって進まないと!
という事でやっと大会だよ!
ちなみにリリアちゃんは出ないらしい。せっかく推薦状貰ったのに気が変わったみたい。一緒に出たかったのに残念。
そこで私はイカヅチさんから貰った地図を片手に、メイちゃんと参加受け付けの方に……。
あれ? 受け付けってどっちだっけ? メイちゃんも私も方向音痴という悲しい事実が分かってしまった。
「やぁ君達。その推薦状……もしかして大会参加者かい?」
ひゃっ!? 急に後ろから声をかけられた。びっくりさせないでよ。
あ、大会出場者専用のリストバンドをつけてる。この人も出るのかな?
「はい! でも私達受け付けの場所がわからなくて……」
「確かに少しわかりにくい所にあるからな。まぁ30分くらいで着くし、俺が案内してやるよ」
30分も? 私達どんだけ見当違いの場所に……。ていうか、それだけの時間案内してくれるとか優しい。
結局ついたのは45分後くらいだった。もうここ町の反対側じゃん。あっ……地図の南北反対にしてた。……てへっ。
あぁごめんってメイちゃん! 痛い痛い。こめかみグリグリは痛いって!
「わざわざありがとうございました。本当に助かりました」
「気にすんな。ちょうど暇だったからな」
そんな会話をしていると聞き慣れた声が聞こえてきた。
「おーいアベル。久しぶりだな……ってメイとミズキちゃんもいるじゃないか」
イカヅチさんだ! ってアベルってこの人!? 知り合いなの!?
「あぁメイ、ミズキちゃん。紹介するよ。僕の古くからの友達で別の大陸で冒険者をしてるアベルだよ。なんで一緒にいるんだ?」
「お前が珍しく推薦状を書いたって言うからな。イカヅチはコネとか嫌いだろ?
それが娘とその友達を推薦したっていうから気になってさ。案内がてら話を聞いてみようって。そんな強そうには見えなかったんだが……」
失礼な! 親切だなって思ったらそういう事かぁ。
「なんだそういう事か。娘のメイもそこのミズキちゃんの実力は僕が保証するよ。ミズキちゃんなんか僕に一撃当てたんだぞ?」
ほめてくれるのは嬉しいけど煽らないでイカヅチさん! ほらアベルさんなんかニヤってしてるよ!
「ふーん……それは大会が楽しみだ。俺はランクが違うから戦えないのが残念だがな。
そうだ、君達SSランクに推薦されたって事で一部の出場者から目をつけられてるから気をつけな。
じゃあイカヅチ、久しぶりに酒でも飲みにいこうぜ」
「アベルは僕がそこまでお酒が好きじゃないの知ってるだろ? 全くしょうがないなぁ……」
そう言い残してアベルさんとイカヅチさんはどこかに消えていった。改めて冒険者ランクによって分けるという大会のルールに感謝だよ。あの人と戦いたくない。
「ミズキ。目をつけられてるってどういう事かな?」
メイちゃんが不安そうな声で聞いてきた。顔は強がってるけど、バレバレだよ。
まぁ私も人の事言えないけど。一部の出場者っていうから、別に街の人には知られてなさそうだけど……。突然殴られたりするのかな……?
「きっと大丈夫だよメイちゃん。それより早く……」
出場手続きをしよ……と言いかけた所で誰かにぶつかった。
「お。華のSSランク様が推薦したっていうから楽しみにしてたら、こんな弱そうなガキかよ。コネだかなんだか知らないがさっさと田舎にかえんな」
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