25 / 58
新世界
スタンピード
しおりを挟む
「女と子供は中央の倉庫に逃げろ! 動ける奴は全員武器を持って戦え!」
襲ってきた魔物の数は少なくとも百匹以上。ほとんどがゴブリンとかラビットみたいな弱い魔物だと言っても小さな村だと結構厳しい数だね……。
そんな事を考えてると、村長さんがこっちに走ってきた。
「冒険者様。お二人ともまだ子供なので本当なら避難してもらう所ですが……お願いします!
お礼ならなんでもします。どうかこの村を助けてください!」
まぁこうなるよね……。この村で一番強いのは私達だけど、いくらなんでも魔物百匹は危ないんだけどな……。
でもリリアちゃんは私の方を向いて言った。
「私は村の人を助けたいです! お願いです。ミズキさん!」
あなたならそう言うと思ったよ。リリアちゃんにお願いされたなら仕方ないね。それに私も同じ気持ちだから。
「村長さん。ぜひ私達にも協力させてください! いくよ、ドーラ! サンド!」
今日は出し惜しみしてられないし、対人戦のように複雑な指示はいらないから二匹同時の大盤振る舞いだよ!
リリアちゃんもドルちゃんとワンコロを収納から出した。
「ドーラとドルちゃんは足の遅いおじぃちゃんおばぁちゃんを倉庫まで運んであげて」
魔物の足は早いからね。私達だってたくさん取り逃がしちゃうだろうし、まずは避難を先にしないと。全員守りきれるかな……不安になってきた。
それでも私は全力を尽くそう。一人でも多く助けられるためにね。
あっ、あっちの村人が危ない! このままじゃオークの剣に斬られちゃう!
「急いで剣を受け止めて!」
なんとかサンドが間に入って剣を受け止めた。ふぅ……傷一つついてないね。
流石、古代文明のゴーレム。うちのサンドの硬さはピカイチだよ!
「サンド! 反撃で魔物達に石の雨を降らせちゃって!」
サンドが魔法でたくさんの岩を召喚して魔物に向かって投げ飛ばす。よし!
小さなゴブリンとコボルトを何体か倒せたよ! これで他の所で戦ってる村人達も楽になるはず。
今回はどうなるかと思ったけど、弱い魔物がほとんどだったし、これなら危険もなく終われそう。良かった。
そんな時、炎で明るくなった森の向こう側に砂埃が見えた。なにあれ?
「おい! あの砂埃はなんだ? 誰か見張り台から確認してくれ!」
猟師さんも同じ事を考えてたみたい。一人のお兄さんが見張り台に登っていった。
しばらく砂埃を見ていたお兄さんだけど、いきなり顔を真っ青にして叫んだ。
「まずい! あれも魔物だ! オーガもいるぞ! このままだと村が囲まれちまう!」
嘘!? オーガなんて魔物なかなか遭遇しないものなのに……。
「冒険者様……勝算はどれくらいでしょうか?」
村人達が不安そうな顔で聞いてくる。でもみんなの顔はどこかで希望を持っているようにも見えた。
一度目の攻撃を耐え抜いたんだからと。
でも……私はその期待に応える事は出来ない。
「数時間なら持ちこたえられるかも知れませんが……勝てる見込みは……ありません……」
周りの村人達の顔が絶望に染まっていく。私ももう諦めたい。
もし……今リリアちゃんと逃げ出せば……助かるかも知れない……。
だって、私はもう十分頑張ったじゃん。サンドだって流石に傷ついてきたし、ドーラだってヘトヘトになるまで頑張った。
本当に全力を出して頑張ったんだよ。だから仕方ないじゃん。
でも村人さん達は強かった。涙も恐怖もこらえて私に聞いてきた。
「冒険者様。私達はまだ戦えます。だから……どうすれば助かるか教えてくれませんか?」
そう質問してきたのは、さっきゴブリンに顔を殴られた若い男の人だった。
鼻は折れ曲がって額から血を流しながらも、まだ槍を離さずに立っている。
「私も何だってします! 盾になる必要があるならなります! だから家族を助けてください、冒険者様!」
そう言ったのは最近子供が七歳になったって夜ご飯の時に言っていた女の人だった。
本当ならとっくに避難しているはずだけど、ここで剣を持っている。
村人さん達は私達を頼ってきた。まだ会って一日の私達を。この中で一番強くて唯一戦う事に慣れている冒険者だからって。
もしかしたら私達ならって……。
仕方ないなぁ……。これじゃあ私が逃げるわけにはいかないじゃん。
でもどうしようかな。流石に今いる私達と村人さんだけじゃ無理だよね。誰か助けを呼んでくるしかないけど……あちこちに魔物がいるのに危険すぎるよね……。
「私にも手伝わせてください! 私が助けを呼んできます!」
振り向くとボランさんが手を高く上げていた。確か弱いからって、比較的安全な避難所の護衛だったはずじゃ……なんでここに?
「とても危険ですよ? 人数的に護衛をつける事も出来ません。」
「一度とある商人が私を恨んで嘘の情報を流した事がありました。面倒事に関わりたくない商会が私との契約を打ち切る中、この村の人達は私を信じてくれました。
そのおかげで今も私は商人を続けられています。私はその恩に報いたいんです。任せてください。馬の速さなら誰にも負けません」
「分かりました。それではお願いします。ボランさんだけが頼りです」
ボランさんはまだ魔物の少ない方向の道を走っていった。これで希望が出来たね。後は救助が来るまで耐えなきゃ。
私は村人さん達に言った。
「皆さん。村を守るのは難しいでしょう。でも、無理ではありません! 助けが来るまで頑張りましょう!」
襲ってきた魔物の数は少なくとも百匹以上。ほとんどがゴブリンとかラビットみたいな弱い魔物だと言っても小さな村だと結構厳しい数だね……。
そんな事を考えてると、村長さんがこっちに走ってきた。
「冒険者様。お二人ともまだ子供なので本当なら避難してもらう所ですが……お願いします!
お礼ならなんでもします。どうかこの村を助けてください!」
まぁこうなるよね……。この村で一番強いのは私達だけど、いくらなんでも魔物百匹は危ないんだけどな……。
でもリリアちゃんは私の方を向いて言った。
「私は村の人を助けたいです! お願いです。ミズキさん!」
あなたならそう言うと思ったよ。リリアちゃんにお願いされたなら仕方ないね。それに私も同じ気持ちだから。
「村長さん。ぜひ私達にも協力させてください! いくよ、ドーラ! サンド!」
今日は出し惜しみしてられないし、対人戦のように複雑な指示はいらないから二匹同時の大盤振る舞いだよ!
リリアちゃんもドルちゃんとワンコロを収納から出した。
「ドーラとドルちゃんは足の遅いおじぃちゃんおばぁちゃんを倉庫まで運んであげて」
魔物の足は早いからね。私達だってたくさん取り逃がしちゃうだろうし、まずは避難を先にしないと。全員守りきれるかな……不安になってきた。
それでも私は全力を尽くそう。一人でも多く助けられるためにね。
あっ、あっちの村人が危ない! このままじゃオークの剣に斬られちゃう!
「急いで剣を受け止めて!」
なんとかサンドが間に入って剣を受け止めた。ふぅ……傷一つついてないね。
流石、古代文明のゴーレム。うちのサンドの硬さはピカイチだよ!
「サンド! 反撃で魔物達に石の雨を降らせちゃって!」
サンドが魔法でたくさんの岩を召喚して魔物に向かって投げ飛ばす。よし!
小さなゴブリンとコボルトを何体か倒せたよ! これで他の所で戦ってる村人達も楽になるはず。
今回はどうなるかと思ったけど、弱い魔物がほとんどだったし、これなら危険もなく終われそう。良かった。
そんな時、炎で明るくなった森の向こう側に砂埃が見えた。なにあれ?
「おい! あの砂埃はなんだ? 誰か見張り台から確認してくれ!」
猟師さんも同じ事を考えてたみたい。一人のお兄さんが見張り台に登っていった。
しばらく砂埃を見ていたお兄さんだけど、いきなり顔を真っ青にして叫んだ。
「まずい! あれも魔物だ! オーガもいるぞ! このままだと村が囲まれちまう!」
嘘!? オーガなんて魔物なかなか遭遇しないものなのに……。
「冒険者様……勝算はどれくらいでしょうか?」
村人達が不安そうな顔で聞いてくる。でもみんなの顔はどこかで希望を持っているようにも見えた。
一度目の攻撃を耐え抜いたんだからと。
でも……私はその期待に応える事は出来ない。
「数時間なら持ちこたえられるかも知れませんが……勝てる見込みは……ありません……」
周りの村人達の顔が絶望に染まっていく。私ももう諦めたい。
もし……今リリアちゃんと逃げ出せば……助かるかも知れない……。
だって、私はもう十分頑張ったじゃん。サンドだって流石に傷ついてきたし、ドーラだってヘトヘトになるまで頑張った。
本当に全力を出して頑張ったんだよ。だから仕方ないじゃん。
でも村人さん達は強かった。涙も恐怖もこらえて私に聞いてきた。
「冒険者様。私達はまだ戦えます。だから……どうすれば助かるか教えてくれませんか?」
そう質問してきたのは、さっきゴブリンに顔を殴られた若い男の人だった。
鼻は折れ曲がって額から血を流しながらも、まだ槍を離さずに立っている。
「私も何だってします! 盾になる必要があるならなります! だから家族を助けてください、冒険者様!」
そう言ったのは最近子供が七歳になったって夜ご飯の時に言っていた女の人だった。
本当ならとっくに避難しているはずだけど、ここで剣を持っている。
村人さん達は私達を頼ってきた。まだ会って一日の私達を。この中で一番強くて唯一戦う事に慣れている冒険者だからって。
もしかしたら私達ならって……。
仕方ないなぁ……。これじゃあ私が逃げるわけにはいかないじゃん。
でもどうしようかな。流石に今いる私達と村人さんだけじゃ無理だよね。誰か助けを呼んでくるしかないけど……あちこちに魔物がいるのに危険すぎるよね……。
「私にも手伝わせてください! 私が助けを呼んできます!」
振り向くとボランさんが手を高く上げていた。確か弱いからって、比較的安全な避難所の護衛だったはずじゃ……なんでここに?
「とても危険ですよ? 人数的に護衛をつける事も出来ません。」
「一度とある商人が私を恨んで嘘の情報を流した事がありました。面倒事に関わりたくない商会が私との契約を打ち切る中、この村の人達は私を信じてくれました。
そのおかげで今も私は商人を続けられています。私はその恩に報いたいんです。任せてください。馬の速さなら誰にも負けません」
「分かりました。それではお願いします。ボランさんだけが頼りです」
ボランさんはまだ魔物の少ない方向の道を走っていった。これで希望が出来たね。後は救助が来るまで耐えなきゃ。
私は村人さん達に言った。
「皆さん。村を守るのは難しいでしょう。でも、無理ではありません! 助けが来るまで頑張りましょう!」
0
お気に入りに追加
64
あなたにおすすめの小説
無限初回ログインボーナスを貰い続けて三年 ~辺境伯となり辺境領地生活~
桜井正宗
ファンタジー
元恋人に騙され、捨てられたケイオス帝国出身の少年・アビスは絶望していた。資産を奪われ、何もかも失ったからだ。
仕方なく、冒険者を志すが道半ばで死にかける。そこで大聖女のローザと出会う。幼少の頃、彼女から『無限初回ログインボーナス』を授かっていた事実が発覚。アビスは、三年間もの間に多くのログインボーナスを受け取っていた。今まで気づかず生活を送っていたのだ。
気づけばSSS級の武具アイテムであふれかえっていた。最強となったアビスは、アイテムの受け取りを拒絶――!?
魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。
大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった!
でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、
他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう!
主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!?
はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!?
いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。
色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。
*** 作品について ***
この作品は、真面目なチート物ではありません。
コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております
重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、
この作品をスルーして下さい。
*カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。
『希望の実』拾い食いから始まる逆転ダンジョン生活!
IXA
ファンタジー
30年ほど前、地球に突如として現れたダンジョン。
無限に湧く資源、そしてレベルアップの圧倒的な恩恵に目をつけた人類は、日々ダンジョンの研究へ傾倒していた。
一方特にそれは関係なく、生きる金に困った私、結城フォリアはバイトをするため、最低限の体力を手に入れようとダンジョンへ乗り込んだ。
甘い考えで潜ったダンジョン、しかし笑顔で寄ってきた者達による裏切り、体のいい使い捨てが私を待っていた。
しかし深い絶望の果てに、私は最強のユニークスキルである《スキル累乗》を獲得する--
これは金も境遇も、何もかもが最底辺だった少女が泥臭く苦しみながらダンジョンを探索し、知恵とスキルを駆使し、地べたを這いずり回って頂点へと登り、世界の真実を紐解く話
複数箇所での保存のため、カクヨム様とハーメルン様でも投稿しています
【完】転職ばかりしていたらパーティーを追放された私〜実は88種の職業の全スキル極めて勇者以上にチートな存在になっていたけど、もうどうでもいい
冬月光輝
ファンタジー
【勇者】のパーティーの一員であったルシアは職業を極めては転職を繰り返していたが、ある日、勇者から追放(クビ)を宣告される。
何もかもに疲れたルシアは適当に隠居先でも見つけようと旅に出たが、【天界】から追放された元(もと)【守護天使】の【堕天使】ラミアを【悪魔】の手から救ったことで新たな物語が始まる。
「わたくし達、追放仲間ですね」、「一生お慕いします」とラミアからの熱烈なアプローチに折れて仕方なくルシアは共に旅をすることにした。
その後、隣国の王女エリスに力を認められ、仕えるようになり、2人は数奇な運命に巻き込まれることに……。
追放コンビは不運な運命を逆転できるのか?
(完結記念に澄石アラン様からラミアのイラストを頂きましたので、表紙に使用させてもらいました)
ボッチの少女は、精霊の加護をもらいました
星名 七緒
ファンタジー
身寄りのない少女が、異世界に飛ばされてしまいます。異世界でいろいろな人と出会い、料理を通して交流していくお話です。異世界で幸せを探して、がんばって生きていきます。
辺境の街で雑貨店を営む錬金術士少女ノヴァ ~魔力0の捨てられ少女はかわいいモフモフ聖獣とともにこの地では珍しい錬金術で幸せをつかみ取ります~
あきさけ
ファンタジー
とある平民の少女は四歳のときに受けた魔力検査で魔力なしと判定されてしまう。
その結果、森の奥深くに捨てられてしまった少女だが、獣に襲われる寸前、聖獣フラッシュリンクスに助けられ一命を取り留める。
その後、フラッシュリンクスに引き取られた少女はノヴァと名付けられた。
さらに、幼いフラッシュリンクスの子と従魔契約を果たし、その眠っていた才能を開花させた。
様々な属性の魔法が使えるようになったノヴァだったが、その中でもとりわけ珍しかったのが、素材の声を聞き取り、それに応えて別のものに作り替える〝錬金術〟の素養。
ノヴァを助けたフラッシュリンクスは母となり、その才能を育て上げ、人の社会でも一人前になれるようノヴァを導きともに暮らしていく。
そして、旅立ちの日。
母フラッシュリンクスから一人前と見なされたノヴァは、姉妹のように育った末っ子のフラッシュリンクス『シシ』とともに新米錬金術士として辺境の街へと足を踏み入れることとなる。
まだ六歳という幼さで。
※この小説はカクヨム様、アルファポリス様で連載中です。
上記サイト以外では連載しておりません。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる