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新世界

君達なら

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 ――メイ視点――

 あれは五歳の頃。お父さんのSSランク防衛戦を初めて見たときに事だ。お父さんは魔法剣士スキルを使っていて、相手は槍を使っていた気がする。

 その試合は凄かった。お父さんも相手も目にも止まらない速さで動いて、大きな魔法を次々使う。

 結局五歳の私には何が何やらさっぱり分からなかったけど。かっこいいと思った。

「お父さん! 私も強くなってお父さんに勝ちたい!」

 私がSSSランクになってみたいって思ったのはそれからだった。

 当時は周りでも勇者に憧れてるとか、お姫様に憧れてるっていう子供がたくさんいたし、実際に冒険者になる子もそれなりにいた。

 ちょうどテイマースキルを授かった私は、この子達がライバルになって一緒に競い合うんだと思っていた。でもみんな辞めてしまった。

「そろそろ現実を見ないとな。こんな仕事続けていても仕方ない。危ないし、老後は戦えないし。俺が勇者なんて出来るわけない」

 最後の仲間がそう言って冒険者を辞めた時に私は一人ぼっちになった。

 そんな時に二人に出会った。名前はミズキとリリア。この二人は他の仕事だって出来るだろうに、なんで冒険者をやっているのか不思議だった。

 それでも仲良くなるのは不安だった。自分で言うのも何だけど、私の家は結構な金持ちだから変な奴が近づいてくる事もあるんだ。

 それでも私はこの二人を選んだ。

「ねぇねぇ。メイと比べてお父さんってどのくらいすごいの?」

 こう聞かれた時に二人を信用出来るって思った。
 今までの人は違った。

「お父さんと比べてメイちゃんはどれくらいなの?」

 今までの人は……特に家目当ての人はいつもお父さん基準だった。まぁお父さんは新聞やニュースにも出る事があるし、気持ちは分かる。

 それでも……ミズキが私と比べてお父さんの強さを聞いてくれた時は嬉しかった。

 私を見てくれているんだ。お父さんじゃない、ミズキとリリアには私が基準何だ。

 だから私は久しぶりに、この人達と仲良くなりたいって思った。でもミズキがSSSランク目指してるなら同じパーティーに入るわけにはいかないから。だから言った。

「二人と私。どっちがSSSランクになれるか競争しようよ!」





 ――ミズキ視点――

 急にどうした。私が分からないのは理解力が低いせいじゃないと思う。ほらリリアちゃんも困惑の表情だよ。

「いいからいいから。ライバルが居た方がいいでしょ?」

 まぁそれはそうだけど……はぁ。でもそうだね。私だってメイちゃんとは仲良くなりたい。

「よろしく」

「よろしくお願いしますね」

 リリアちゃんも賛成みたいだし。でもライバルって?

「分かったらミズキ! ライバル同士試合をしましょう!」

 ??? ライバルってそう言う事か! でも試合自体は楽しいし、やってみよう。

「そうと決まったら協会に行きましょ。お金を払えば防御魔法をかけてくれるの。これで心置きなく試合が出来るわ。負けた方がお金を払うって事にしましょう」

 へー。そんな便利なサービスが。対人戦も大事な練習の一つだし、いい事教えて貰ったなぁ。



「二人共準備は出来たか? それでは……はじめ!」

 会長御本人の合図で試合が始まった。ていうか会長が出てきたせいで、協会の事務員とかが来てるんですけど! なんか観客多いって!

「よそ見してる場合じゃないわよ。ブルー!」

 おっと。私もドーラを出さないと。ブルーの強さはどんなんだろ。

 さっきの魔物狩りじゃ敵との実力差があって何も分からなかったし、初対面の相手のような緊張感だよ。

「ドーラ! ファイアアロー!」

 避けられた!? はっや!

「そんな遅い矢じゃブルーには当てらんないよ。リーフブレード」

 ふん。速さじゃこっちも負けないよ。避けてドーラ!

 サッと右に避けてすかさず攻撃をしたけど、また避けられた。
 うわっ。キリがないなぁ。

「ふふふ。これで終わりよ! ブルー! これを使うわよ!」

 メイちゃんが魔石か何かを投げて食べさせると、ブルーの足についてた魔道具に魔力が巡りはじめた。その途端ブルーの体が大きくなり始めた。

 まさかあれは古代文明の魔道具!? なんか聞いた事あるよ。魔力に応じて、体を巨大化させる魔道具とか。
 これは本気を出さないと。

「ドーラ! アイスブレス!」

「ブルー! そのまま突っ込んで!」



 ふぅ……。煙が晴れるとドーラはぐったりしていた。びっくりしたけど、ドーラは魔力の使いすぎで疲れただけみたい。それに対してブルーは倒れている。

「試合は……ミズキ殿の勝ち!」

 やった! あの巨大化した体で突っ込んできた時はどうなるかと思ったけど、勝ててよかった。

「ありがとうドーラ。戻って」

 とりあえずドーラを収納した。この中でゆっくりしててねー。
 同じくブルーを収納したメイが笑顔で手を差し出してきた。

「楽しかったねミズキ。ブルーも満足そうだったよ」

「こっちこそありがとう。楽しかったよ」

 私達はしっかり握手をした。闘技場とかでも負けると泣く人が多いから、笑顔で終われる人は好きだな。

「ミズキ。やるわね」

「メイちゃんも。ギリギリだったよ」

「惜しかったなぁ。また今度も戦うわよ。その時は勝つから」

 そう言うとメイちゃんはブルーの回復をしに行った。私も次の試合が楽しみだ。その時のために、もっと強くならないと。

 こうして私に新しい仲間……いや、ライバルが出来た。
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