17 / 58
新世界
君達なら
しおりを挟む
――メイ視点――
あれは五歳の頃。お父さんのSSランク防衛戦を初めて見たときに事だ。お父さんは魔法剣士スキルを使っていて、相手は槍を使っていた気がする。
その試合は凄かった。お父さんも相手も目にも止まらない速さで動いて、大きな魔法を次々使う。
結局五歳の私には何が何やらさっぱり分からなかったけど。かっこいいと思った。
「お父さん! 私も強くなってお父さんに勝ちたい!」
私がSSSランクになってみたいって思ったのはそれからだった。
当時は周りでも勇者に憧れてるとか、お姫様に憧れてるっていう子供がたくさんいたし、実際に冒険者になる子もそれなりにいた。
ちょうどテイマースキルを授かった私は、この子達がライバルになって一緒に競い合うんだと思っていた。でもみんな辞めてしまった。
「そろそろ現実を見ないとな。こんな仕事続けていても仕方ない。危ないし、老後は戦えないし。俺が勇者なんて出来るわけない」
最後の仲間がそう言って冒険者を辞めた時に私は一人ぼっちになった。
そんな時に二人に出会った。名前はミズキとリリア。この二人は他の仕事だって出来るだろうに、なんで冒険者をやっているのか不思議だった。
それでも仲良くなるのは不安だった。自分で言うのも何だけど、私の家は結構な金持ちだから変な奴が近づいてくる事もあるんだ。
それでも私はこの二人を選んだ。
「ねぇねぇ。メイと比べてお父さんってどのくらいすごいの?」
こう聞かれた時に二人を信用出来るって思った。
今までの人は違った。
「お父さんと比べてメイちゃんはどれくらいなの?」
今までの人は……特に家目当ての人はいつもお父さん基準だった。まぁお父さんは新聞やニュースにも出る事があるし、気持ちは分かる。
それでも……ミズキが私と比べてお父さんの強さを聞いてくれた時は嬉しかった。
私を見てくれているんだ。お父さんじゃない、ミズキとリリアには私が基準何だ。
だから私は久しぶりに、この人達と仲良くなりたいって思った。でもミズキがSSSランク目指してるなら同じパーティーに入るわけにはいかないから。だから言った。
「二人と私。どっちがSSSランクになれるか競争しようよ!」
――ミズキ視点――
急にどうした。私が分からないのは理解力が低いせいじゃないと思う。ほらリリアちゃんも困惑の表情だよ。
「いいからいいから。ライバルが居た方がいいでしょ?」
まぁそれはそうだけど……はぁ。でもそうだね。私だってメイちゃんとは仲良くなりたい。
「よろしく」
「よろしくお願いしますね」
リリアちゃんも賛成みたいだし。でもライバルって?
「分かったらミズキ! ライバル同士試合をしましょう!」
??? ライバルってそう言う事か! でも試合自体は楽しいし、やってみよう。
「そうと決まったら協会に行きましょ。お金を払えば防御魔法をかけてくれるの。これで心置きなく試合が出来るわ。負けた方がお金を払うって事にしましょう」
へー。そんな便利なサービスが。対人戦も大事な練習の一つだし、いい事教えて貰ったなぁ。
「二人共準備は出来たか? それでは……はじめ!」
会長御本人の合図で試合が始まった。ていうか会長が出てきたせいで、協会の事務員とかが来てるんですけど! なんか観客多いって!
「よそ見してる場合じゃないわよ。ブルー!」
おっと。私もドーラを出さないと。ブルーの強さはどんなんだろ。
さっきの魔物狩りじゃ敵との実力差があって何も分からなかったし、初対面の相手のような緊張感だよ。
「ドーラ! ファイアアロー!」
避けられた!? はっや!
「そんな遅い矢じゃブルーには当てらんないよ。リーフブレード」
ふん。速さじゃこっちも負けないよ。避けてドーラ!
サッと右に避けてすかさず攻撃をしたけど、また避けられた。
うわっ。キリがないなぁ。
「ふふふ。これで終わりよ! ブルー! これを使うわよ!」
メイちゃんが魔石か何かを投げて食べさせると、ブルーの足についてた魔道具に魔力が巡りはじめた。その途端ブルーの体が大きくなり始めた。
まさかあれは古代文明の魔道具!? なんか聞いた事あるよ。魔力に応じて、体を巨大化させる魔道具とか。
これは本気を出さないと。
「ドーラ! アイスブレス!」
「ブルー! そのまま突っ込んで!」
ふぅ……。煙が晴れるとドーラはぐったりしていた。びっくりしたけど、ドーラは魔力の使いすぎで疲れただけみたい。それに対してブルーは倒れている。
「試合は……ミズキ殿の勝ち!」
やった! あの巨大化した体で突っ込んできた時はどうなるかと思ったけど、勝ててよかった。
「ありがとうドーラ。戻って」
とりあえずドーラを収納した。この中でゆっくりしててねー。
同じくブルーを収納したメイが笑顔で手を差し出してきた。
「楽しかったねミズキ。ブルーも満足そうだったよ」
「こっちこそありがとう。楽しかったよ」
私達はしっかり握手をした。闘技場とかでも負けると泣く人が多いから、笑顔で終われる人は好きだな。
「ミズキ。やるわね」
「メイちゃんも。ギリギリだったよ」
「惜しかったなぁ。また今度も戦うわよ。その時は勝つから」
そう言うとメイちゃんはブルーの回復をしに行った。私も次の試合が楽しみだ。その時のために、もっと強くならないと。
こうして私に新しい仲間……いや、ライバルが出来た。
あれは五歳の頃。お父さんのSSランク防衛戦を初めて見たときに事だ。お父さんは魔法剣士スキルを使っていて、相手は槍を使っていた気がする。
その試合は凄かった。お父さんも相手も目にも止まらない速さで動いて、大きな魔法を次々使う。
結局五歳の私には何が何やらさっぱり分からなかったけど。かっこいいと思った。
「お父さん! 私も強くなってお父さんに勝ちたい!」
私がSSSランクになってみたいって思ったのはそれからだった。
当時は周りでも勇者に憧れてるとか、お姫様に憧れてるっていう子供がたくさんいたし、実際に冒険者になる子もそれなりにいた。
ちょうどテイマースキルを授かった私は、この子達がライバルになって一緒に競い合うんだと思っていた。でもみんな辞めてしまった。
「そろそろ現実を見ないとな。こんな仕事続けていても仕方ない。危ないし、老後は戦えないし。俺が勇者なんて出来るわけない」
最後の仲間がそう言って冒険者を辞めた時に私は一人ぼっちになった。
そんな時に二人に出会った。名前はミズキとリリア。この二人は他の仕事だって出来るだろうに、なんで冒険者をやっているのか不思議だった。
それでも仲良くなるのは不安だった。自分で言うのも何だけど、私の家は結構な金持ちだから変な奴が近づいてくる事もあるんだ。
それでも私はこの二人を選んだ。
「ねぇねぇ。メイと比べてお父さんってどのくらいすごいの?」
こう聞かれた時に二人を信用出来るって思った。
今までの人は違った。
「お父さんと比べてメイちゃんはどれくらいなの?」
今までの人は……特に家目当ての人はいつもお父さん基準だった。まぁお父さんは新聞やニュースにも出る事があるし、気持ちは分かる。
それでも……ミズキが私と比べてお父さんの強さを聞いてくれた時は嬉しかった。
私を見てくれているんだ。お父さんじゃない、ミズキとリリアには私が基準何だ。
だから私は久しぶりに、この人達と仲良くなりたいって思った。でもミズキがSSSランク目指してるなら同じパーティーに入るわけにはいかないから。だから言った。
「二人と私。どっちがSSSランクになれるか競争しようよ!」
――ミズキ視点――
急にどうした。私が分からないのは理解力が低いせいじゃないと思う。ほらリリアちゃんも困惑の表情だよ。
「いいからいいから。ライバルが居た方がいいでしょ?」
まぁそれはそうだけど……はぁ。でもそうだね。私だってメイちゃんとは仲良くなりたい。
「よろしく」
「よろしくお願いしますね」
リリアちゃんも賛成みたいだし。でもライバルって?
「分かったらミズキ! ライバル同士試合をしましょう!」
??? ライバルってそう言う事か! でも試合自体は楽しいし、やってみよう。
「そうと決まったら協会に行きましょ。お金を払えば防御魔法をかけてくれるの。これで心置きなく試合が出来るわ。負けた方がお金を払うって事にしましょう」
へー。そんな便利なサービスが。対人戦も大事な練習の一つだし、いい事教えて貰ったなぁ。
「二人共準備は出来たか? それでは……はじめ!」
会長御本人の合図で試合が始まった。ていうか会長が出てきたせいで、協会の事務員とかが来てるんですけど! なんか観客多いって!
「よそ見してる場合じゃないわよ。ブルー!」
おっと。私もドーラを出さないと。ブルーの強さはどんなんだろ。
さっきの魔物狩りじゃ敵との実力差があって何も分からなかったし、初対面の相手のような緊張感だよ。
「ドーラ! ファイアアロー!」
避けられた!? はっや!
「そんな遅い矢じゃブルーには当てらんないよ。リーフブレード」
ふん。速さじゃこっちも負けないよ。避けてドーラ!
サッと右に避けてすかさず攻撃をしたけど、また避けられた。
うわっ。キリがないなぁ。
「ふふふ。これで終わりよ! ブルー! これを使うわよ!」
メイちゃんが魔石か何かを投げて食べさせると、ブルーの足についてた魔道具に魔力が巡りはじめた。その途端ブルーの体が大きくなり始めた。
まさかあれは古代文明の魔道具!? なんか聞いた事あるよ。魔力に応じて、体を巨大化させる魔道具とか。
これは本気を出さないと。
「ドーラ! アイスブレス!」
「ブルー! そのまま突っ込んで!」
ふぅ……。煙が晴れるとドーラはぐったりしていた。びっくりしたけど、ドーラは魔力の使いすぎで疲れただけみたい。それに対してブルーは倒れている。
「試合は……ミズキ殿の勝ち!」
やった! あの巨大化した体で突っ込んできた時はどうなるかと思ったけど、勝ててよかった。
「ありがとうドーラ。戻って」
とりあえずドーラを収納した。この中でゆっくりしててねー。
同じくブルーを収納したメイが笑顔で手を差し出してきた。
「楽しかったねミズキ。ブルーも満足そうだったよ」
「こっちこそありがとう。楽しかったよ」
私達はしっかり握手をした。闘技場とかでも負けると泣く人が多いから、笑顔で終われる人は好きだな。
「ミズキ。やるわね」
「メイちゃんも。ギリギリだったよ」
「惜しかったなぁ。また今度も戦うわよ。その時は勝つから」
そう言うとメイちゃんはブルーの回復をしに行った。私も次の試合が楽しみだ。その時のために、もっと強くならないと。
こうして私に新しい仲間……いや、ライバルが出来た。
0
お気に入りに追加
64
あなたにおすすめの小説
無限初回ログインボーナスを貰い続けて三年 ~辺境伯となり辺境領地生活~
桜井正宗
ファンタジー
元恋人に騙され、捨てられたケイオス帝国出身の少年・アビスは絶望していた。資産を奪われ、何もかも失ったからだ。
仕方なく、冒険者を志すが道半ばで死にかける。そこで大聖女のローザと出会う。幼少の頃、彼女から『無限初回ログインボーナス』を授かっていた事実が発覚。アビスは、三年間もの間に多くのログインボーナスを受け取っていた。今まで気づかず生活を送っていたのだ。
気づけばSSS級の武具アイテムであふれかえっていた。最強となったアビスは、アイテムの受け取りを拒絶――!?
システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。
大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった!
でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、
他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう!
主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!?
はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!?
いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。
色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。
*** 作品について ***
この作品は、真面目なチート物ではありません。
コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております
重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、
この作品をスルーして下さい。
*カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。
【完】転職ばかりしていたらパーティーを追放された私〜実は88種の職業の全スキル極めて勇者以上にチートな存在になっていたけど、もうどうでもいい
冬月光輝
ファンタジー
【勇者】のパーティーの一員であったルシアは職業を極めては転職を繰り返していたが、ある日、勇者から追放(クビ)を宣告される。
何もかもに疲れたルシアは適当に隠居先でも見つけようと旅に出たが、【天界】から追放された元(もと)【守護天使】の【堕天使】ラミアを【悪魔】の手から救ったことで新たな物語が始まる。
「わたくし達、追放仲間ですね」、「一生お慕いします」とラミアからの熱烈なアプローチに折れて仕方なくルシアは共に旅をすることにした。
その後、隣国の王女エリスに力を認められ、仕えるようになり、2人は数奇な運命に巻き込まれることに……。
追放コンビは不運な運命を逆転できるのか?
(完結記念に澄石アラン様からラミアのイラストを頂きましたので、表紙に使用させてもらいました)
ボッチの少女は、精霊の加護をもらいました
星名 七緒
ファンタジー
身寄りのない少女が、異世界に飛ばされてしまいます。異世界でいろいろな人と出会い、料理を通して交流していくお話です。異世界で幸せを探して、がんばって生きていきます。
辺境の街で雑貨店を営む錬金術士少女ノヴァ ~魔力0の捨てられ少女はかわいいモフモフ聖獣とともにこの地では珍しい錬金術で幸せをつかみ取ります~
あきさけ
ファンタジー
とある平民の少女は四歳のときに受けた魔力検査で魔力なしと判定されてしまう。
その結果、森の奥深くに捨てられてしまった少女だが、獣に襲われる寸前、聖獣フラッシュリンクスに助けられ一命を取り留める。
その後、フラッシュリンクスに引き取られた少女はノヴァと名付けられた。
さらに、幼いフラッシュリンクスの子と従魔契約を果たし、その眠っていた才能を開花させた。
様々な属性の魔法が使えるようになったノヴァだったが、その中でもとりわけ珍しかったのが、素材の声を聞き取り、それに応えて別のものに作り替える〝錬金術〟の素養。
ノヴァを助けたフラッシュリンクスは母となり、その才能を育て上げ、人の社会でも一人前になれるようノヴァを導きともに暮らしていく。
そして、旅立ちの日。
母フラッシュリンクスから一人前と見なされたノヴァは、姉妹のように育った末っ子のフラッシュリンクス『シシ』とともに新米錬金術士として辺境の街へと足を踏み入れることとなる。
まだ六歳という幼さで。
※この小説はカクヨム様、アルファポリス様で連載中です。
上記サイト以外では連載しておりません。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
下げ渡された婚約者
相生紗季
ファンタジー
マグナリード王家第三王子のアルフレッドは、優秀な兄と姉のおかげで、政務に干渉することなく気ままに過ごしていた。
しかしある日、第一王子である兄が言った。
「ルイーザとの婚約を破棄する」
愛する人を見つけた兄は、政治のために決められた許嫁との婚約を破棄したいらしい。
「あのルイーザが受け入れたのか?」
「代わりの婿を用意するならという条件付きで」
「代わり?」
「お前だ、アルフレッド!」
おさがりの婚約者なんて聞いてない!
しかもルイーザは誰もが畏れる冷酷な侯爵令嬢。
アルフレッドが怯えながらもルイーザのもとへと訪ねると、彼女は氷のような瞳から――涙をこぼした。
「あいつは、僕たちのことなんかどうでもいいんだ」
「ふたりで見返そう――あいつから王位を奪うんだ」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる