愛する使い魔達と楽しく最強に!〜スキルのせいで実家を追放されたけど、森で可愛いドラゴンに会いました。今度はスキルを活かして幸せになります!〜

くずは

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追放と成長

追放にしても酷すぎない?

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お姉ちゃんが私の方に向かって魔法を放った。

 真っ赤な閃光が私の頭に当たる。血は出てないけど、割れるように痛い。体の内部に直接ダメージを与えていくタイプの魔法みたいだ。

「あら。一発じゃ人って死なないものなのね」

 お姉ちゃんが余裕の表情で笑う。私を見る目は実験のモルモットを見る目そのものだ。

「あなたは我が家のガンなの。大人しく死になさい。大丈夫。証拠はしっかり消しておくからね」

 次の魔法が放たれた時、私の意識は完全に消えた。




「次! ワルス・ドレッド嬢。前へ」

 その日は私のお姉ちゃんのワルスが神様からスキルを貰う日だった。お姉ちゃんが神官の方に歩いて行く。

「そなたのスキルは……これは! 神から授けられたスキルは……賢者だ」

 周りの人からざわめきが聞こえた。私の両親も驚きの声を上げた。後から聞いた話だと賢者は10万人に1人くらいしか持っていないレアスキルらしい。

 このスキルがあれば王直属の護衛になる事も夢じゃないほどだって。いいなー。

 帰った後はパーティが開かれた。私が見た事もない料理がたくさん並んでいた。

 家族みんなが幸せそうで、私もお姉ちゃんにお祝いをしに行った。

「お姉ちゃん! 賢者スキルおめでとう!」

 お姉ちゃんは笑顔でありがとうと言ってくれた。
 結局この日は私が幸せだった最後の日になった。

 その日から生活がガラリと変わった。スキルは本人の能力、運、遺伝で決まる。

 今までは昼になって学校が終わると友達と遊んでた時間は、代わりに家庭教師と勉強する時間になった。

 夜に家族みんなでおしゃべりをする時間は、礼儀作法を学ぶ時間に変わった。
 
 おかげで遊ぶ時間も無くなった。最初は遊びに誘ってくれた友達も、いつの間にか誘ってくれなくなっていた。

 周りの貴族が家族を持ち上げるたびに、両親もお姉ちゃんも変わっていった。

 私が失敗すると優しくやり方を教えてくれた両親は、私が失敗するとこう言うようになった。

「なんでこんな事も出来ないんだ。お姉ちゃんだったら……」

 私がテストで90点以上を取ると褒めてくれたお姉ちゃんは代わりにこう言うようになった。

 ちなみに平均点は75点。私は結構頭は良い方だった。でもお姉ちゃんは褒めてはくれなくなった。

「たった90点で満足するの? 100点くらい取って当たり前でしょ! 賢者の妹っていう自覚はないの? 私が恥をかくじゃない!」

 それでも私は頑張った。勉強も習い事も文句を言わずに全部やった。家族が期待しているのは分かっていたし、それに応えたかったから。

 それに私が賢くなって、強いスキルを貰えたら家族だって元通りになってくれるかもしれない。
 だから私は夜眠くてもダンスの仕方とか楽器の演奏とかを頑張った。



 これがこの3年間の事。今まで大変だったなぁ……。
 それでも今日はついにスキルを貰える日。

 今、私は教会で私の番を待っている。もしこれでハズレスキルだったら……。

 いやいや! こんなに頑張ったんだし良いスキルが貰えるはず。

 そしたら家族みんな喜んでくれるし、前のように戻ってくれるはずだよね!

「次! ミズキ・ドレッド嬢。前へ」

 あっ。呼ばれた。
 私は落ち着いて神官の前に歩いていった。
 この教会にいる人みんなが私を見ているのを感じる。

 神官が私の頭に手を乗せた。そのまま何かを探すように手を動かしている。せっかく整えた髪がぐちゃぐちゃになっちゃうじゃん……。

 それから1分くらい探している。お姉ちゃんの時はこんなに長かったっけ?
 もしかしてスキル無し? たまにいると聞くけど……。ま、まさかね?

「おっ。見つかったな」

 神官が小声でそう呟くのが聞こえた。良かったぁ。

 何かな? お姉ちゃんと同じ賢者? もしかしたら聖女だったり? 勇者とかも良いなぁ。

「そなたのスキルは……テイマーじゃ!」

 だよねー。そうそう賢者とか当たらないよね。でもテイマーだったら、まぁまぁ当たりだしみんな喜んでくれるはず。

 私は神官にお礼を言って、家族のいる方に向かった。

「ねぇねぇお父さん……」

 褒めて。と言おうとした私を遮ってお父さんはこう言った。

「今は話しかけてくるな。帰ったら大事な話がある」

 なんで? なんで怒っているの? 怖いよ?
 お母さんもがっかりした顔をしている。

 一番褒めて欲しかったお姉ちゃんは私を見ようともしなかった。私はなぜか分からなかった。ただ怯える事しか出来なかった。



 家に帰るとお父さんは私を怒鳴った。

「なんだこの結果は!」

「でも……私は頑張って……。それにテイマーってそんなに悪くないじゃん!」

「何が頑張っただ! その程度のスキルじゃ意味がないだろう! そんなに悪くないだと? 
 いつからそんなに甘えた事を言う怠け者になったんだ? ああ確かにちょっとは良いかもな。だけどお姉ちゃんの賢者と比べてみろ!」

 いつもいつもお姉ちゃんって……私はお姉ちゃんじゃない。違う人間なのに……。もっと私を見てよ!

 次はお姉ちゃんがこっちに来た。と思ったら思いっきりビンタされた。痛い……口の中に血の味が広がって行く。

「あんたねぇ! お母さんを見なさい! 泣いてるじゃない! 申し訳ないと思わないの!?」

 お父さんもまた怒鳴ってきた。

「お前にどれだけのお金をかけたと思っている! 返せよ!」

 なんで……私は頑張っていたのに。ちゃんとテストでも良い点を取れるようになったし、習い事の先生だって褒めてくれた。スキルもそんなに悪くないのに……。

「私はこんな勉強も習い事も頼んでない! 私は前のようにみんな仲良く楽しく暮らせていたら……それで……良かったのに……」

「なんだと! わざわざお前に勉強させてやったのに感謝もしないのか!」

「もう良いわ。あんたが妹だなんて恥ずかしい。さっさと消えなさい」

 そう言ってお姉ちゃんは私に向かって魔法を使った。なんで……家族なのに……。

「お、おい。流石に家族といえども貴族への攻撃は重罪だぞ。どうするんだ。俺は捕まりたくは無いぞ」

 意識が遠のいて行くなか、お父さんの焦った声が聞こえた。

「魔の森にでも捨てれば良いのよ。魔物をテイムしに行った時に襲われたって言えば大丈夫よ」

 そっか……こんな事になっても2人とも自分の心配か……家族だと思っていたのは私だけだったんだね……。
 なんでこんな風になっちゃったのかな……。

 私が意識を保っていられたのもそこまでだった。
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