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集会

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 「ゴブゴブ」
 「ゴブブ」

 最初は少し寂しそうだったキングもゴブリン達に歓迎されるうちに、なんだかんだ笑顔になっていく。みんな仲良くしてあげてね。
 
 キングは村のゴブリン達とお話しにいったので、取り残された私とエリーは新しくホブゴブリン5体を追加する事にした。
 
 人数も増えてどんどん村っぽくなってきた。新しい商品の生産も始める予定だし、ここはうちのダンジョンの心臓部だよ。ゴブリン村ってのもあれだし……何か名前をつけたいな。決めた!

 「このダンジョンを支える原点。一番下の階層。全てが生み出される場所という意味をこめて……私はこの階層をゼロフロアと名付ける」
 「マスター。その名前はちょっと……」

 いいじゃんかっこいいじゃん! 私だって16歳なんだもん!

 気を取り直して、残りポイントで1階の部分も強化しないと。ゴブリン村もといゼロフロアがバレたら、そこで作ってる物からして私までダンジョンの仲間って事はバレちゃうので誰も地下には通したくないからね。
 
 私は普通の無害なダンジョンですよ~って顔をしなきゃいけないのだ。いやダンジョンの時点で無害じゃないか。

 それになんかエリーがそろそろ1階も強化しとけってうるさいんだもん。ダンジョンの顔~って冒険者も来ないのに誰に見せるのよ。
 1階に行くと薄暗くて石の壁っていういかにもダンジョンな雰囲気で私のなのに少し怖い。

 「コボォ!!」
 「うひゃぁぁ! なになに! お化け? 幽霊?」

 そんなモンスター配置してな……ってよく見たらコボルトじゃん。背丈は私のお腹までくらいでちっちゃいから、4匹くらいが周りに集まってくるとちょっと可愛いかも。手に持ってる斧さえ無ければだけどね……。

 さっそく部屋をもう1つ増やす。これはただの部屋じゃない。なんと! 私のマスターとしてのランクがあがったから新しく作れるようになったボス部屋です!
 
 ポイント累計量が増えるたびにランクがあがるんだけど、交易のコインをポイントに変えたら上がったんだよ~。

 ボス部屋はまぁ冒険者にとってもおなじみだね。簡単にいうとここを突破しないと先に進めない部屋だね。ボスは……奮発してオークだ!

 これでポイントはぴったり0だけどオークは強いよ~。私1人だったら勝てないくらいには……。
 でもなんでエリーは急に強化しろって言い出したんだろ。

 「エリー。1階は今まででも魔物追い返せてたのに、なんで強化するの?」
 「それはですね。実は3日後にダンジョンコアとマスターの集会があるんです」

 「えっ早く言ってよ。それに強化する必要ある?」
 「すみません。それは言うよりも体験した方がいいと思いますが……簡単にいうとマスターには荒くれ者が多いので……」
 
 い……いきたくない……。でも他のダンジョンがどんな感じかは少し気になるかも。それに前にエリーが言ってた交易を真似できる所が無いってのも気になるしね。



 3日後。ゴブリンキングも現状把握が終わったと言ってたからゼロフロアの開発でも……と思いながらウルフと遊んでたら急に体が消え始めた。隣を見たらエリーも。

 なにこれどういう事!? 怖くなってつい目をつぶる。何も起きない。おそるおそる目をあけるとそこは私のダンジョンじゃなくて、お城とかにありそうな大広間だった。
 
 テーブルがたくさん並んでて山盛りの料理があるのは嬉しいんだけど……周りはホーンラビットから上級悪魔までの百鬼夜行。

 「エ、エリー。何ここ。天国か地獄?」
 「マスターが天国に行けると? 違いますよ。前に伝えたマスター達の集会です」

 確かによく見るとどのモンスターも普通に言葉を話してる。横にコアみたいなのを連れてる人ばっかだし。ていうか人間0!? 全部モンスターじゃん。

 「私が他に交易をするダンジョンは無いって言った意味わかりました?」
 「確かにこれなら交易した瞬間に自分が商品になるね……」

 まぁ人間に化けられるモンスターもいるらしいけど高いからね。そんなのが召喚できるなら交易以外をした方がいいよね。
 謎が1つ解けてスッキリした。でもなんでエリーは1階部分を強化しろって言ったんだろ?

 2つ目の謎もすぐに解ける事になった。私の横を頭に0.16って書いてある亀が歩いている。二足歩行で。もう驚かないよ。

 「エリー。あの数字なに?」
 「あれはダンジョンが出来てからの年数です。あの亀なら2か月くらい。ダンジョンは1年ごとにいっせいに生成されるので私たちの同級生ってわけですね」

 へ~じゃあ声かけてみよっかな。友達が出来るかも。
 そう思って近づくと私よりも先に亀に近づいていく集団がいた。こっちも同級生のウルフ系3人。
 
 おっ異種族でも仲良くするんだ。やっぱり同じダンジョンマスターの仲間だもんね。私も仲間に入れてもら……。

 「おいてめぇトロくて弱そうだな。ちょっとダンジョンを見せてみろよ」
 「えっ急になんだい? ぼくのダンジョンまだ出来たばかりで弱いからやだよぅ……」
 
 「えぇ? 断るの? それどういう意味か分かってる?」
 「分かったよぅ……ほらこれ」

 そういって亀はマスター画面を表示させる。ゴブリン数体とスライムが5匹のあんまり強くなさそうなダンジョンだった。
 逆にウルフ集団のうちの1匹が表示させたの画面にはオークまで映ってる。

 「えぇ。まだこんだけ? 2か月何してたの? なぁ俺らとダンジョンバトルしない?」
 「そんなぁ。無理だよぅ……でも分かったよ……うぅ」

 この集会に来てからまだ5分でこれを見た私のショックを誰か想像してみてほしい。友達はおろか敵を作らないことすら試練じゃん。

 でも亀も断ったらいいのに……。助けた方がいいのかな。オークくらいならうちにもいるし。
 そんな事を考えていたら私の心の声が漏れてたのか、後ろから声が聞こえた。

 「この業界だと同じ時期に生まれたダンジョンに、ダンジョンの顔となる1層を見せろと言われたり、ふっかけられたバトルを断ると腰抜けって見られてカモにされるのよ。
 それならまだ受けて立って負けた方がいいって考えね。
 命まで取られる事は無いしね。ちなみに累計ポイントを見せろと言われても同じよ」

 乱世かな? 山賊の方がまだ優しいんじゃないだろうか?
 エリーのアドバイスありがとう。いやほんとに。

 「教えてくれてありがとう。えっと……あなたは?」
「私はイエナ。よろしくね人間さん」

 どんな人かと思って後ろを見るとウサギが歩いてきた。
 真っ白でふわふわ……ではなく全身が返り血のような真っ赤な色になっている。

 私と同じくらいの身長で二足歩行。そしてめちゃくちゃスタイルがいい。いや別に気にしてるわけじゃないからね! ほんとに!

 「あとあの亀は助けなくていいわよ。亀さん。あなたの累計ポイントを見せてくれない?」
 「あぁ? あいつらよりは物を知ってるみたいだな。ちっ……養分にならねぇか。ほらよ」

 そこに表示されたのは3125ポイントという数字。ちなみにさっきのウルフ系マスターのは2200。多分負ける。そっか……見せなきゃいけないのはダンジョンの顔となる1層だけだから……。
 
 ちなみに2層以降は秘密のあるダンジョンも多いらしくて見せないのは当然って考えらしい。ここはなんの差なんだ。

 「きっとポイントも見させられるという事まではさっきのウルフ集団も知らなかったんじゃないかしら。愚かなものね」

 ウルフもウルフなら亀も亀。この場にいるなかで良い人って呼べるのはこのイエナちゃんくらいかも。

 「あぁそうだ。こんな話をするために来たんじゃないのよ。あなた人化したモンスターでもない本物の人間らしいわね。叩き潰してあげるからポイントを見せてちょうだい」

 もう帰りたい……。
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