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1. 気になる視線

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「おはよう!」
俺にとって数少ない友達、柊溱斗がいつものように挨拶してくる。
「おはよう」
俺もいつもと変わらず返事をする。
「・・・」
(まただ…) 
今日もまたあの視線を感じる。



中学からあまり目立つ性格ではなかったため高校に入ってからも数少ない友達と静かに過ごしている。そんな学校生活は2学年に上がってから変化が起きる。それは同じクラスになった八神翔がいつも俺を睨んでいると言う事だ。最初は何かしてしまったのかと焦っていたがそんな覚えは一つもない。
それでも何かされたりする事はなかったため八神と接する事はなかった。 



「もうすぐで体育祭だね!」
「溱斗は運動得意だから良いよなぁ、俺は運動苦手だから今年も目立たず楽そうな競技を選ぶよ」
来週行われる体育祭の競技について俺たちは話していた。
「そんな事言わず蒼馬もリレーとか出ようよ!俺がサポートしてやるからさっ!」
「絶対やだ。俺は応援してるから」
「つまんねぇの~。あっ、そういえばこのクラス八神いるんだったな、絶対あいつは選抜出るよなー、去年は学年一位だったみたいだし。」
「そーだな」

そんな会話を繰り広げた後の授業は体育祭の選手決めだった。

「八神一緒に借り物競走出ようぜー!」
「八神は選抜だろ?」
「八神くんって好きな子とか居るのかな?借り物競走出るなら【好きな人】とか引いてくれたら激アツじゃないっ?」
「あんた天才!!八神くん借り物競走出てみないっ?」

クラスの男子が騒いでいる中こそこそ話していた女子が八神に聞く。すると八神は
「じゃあ出てみようかな。選抜も出たい人居なかったら俺出るよ。」
(これだから陽キャはすごいよな)
俺だったら絶対断る未来しか無い。臨機応変に対応できる八神を俺は素直にすごいなと思った。

「じゃあ選手決めはこれで終わり!みんなで練習も本番も頑張ろー!」
学級委員がそう仕切り1限が終わった。ちなみに俺は玉入れで溱斗はリレーに決まった。

そして体育祭当日。
「リレーお疲れ様」「蒼馬もお疲れ様!」
俺と溱斗の種目は終了し、後は残りの種目を見るだけだ。次は借り物競走みたいだ。すると周りがざわざわしはじめた。

「今年は誰か引くのかなー?」
「誰だろうねっ!八神くんだと良いなー!」

この学校の借り物競走には一つだけ【好きな人】と書かれている紙が混ざっている。だから毎年その紙が誰に渡るのか皆が注目する。借り物競走は2年生しか参加できない為学年で1番人気とも言われている八神がその紙を手にしないかと、さっきから周りが騒がしくなったのだ。
そして借り物競走がはじまった。
やはり1番速いのは八神で最初に紙を手に取った。すると
5秒ほど八神が固まった。どうしたのかと周りが心配する中再び動き出した八神は辺りを見渡し、俺のいる方へ走り出した。

「来て!」
「「「え?」」」
手を取られたのはまさかの俺だった。
そのまま2人で走り出し一着でゴール。
(どうしよう。話したこともないのに。)
内心焦っている俺は何か会話をしようと必死に言葉を探す。
そして、
「お題ってなんだったの?」
(どうせクラスで静かな人とかだろうけど。けど身長には自信あるから背の高い人とかかな?)
そんな事を考えていると八神は、

「ひっ、ひみつ!」
「え、、、なんで?」
「加藤には言えない!」

(なんだそれ?よっぽど酷い内容だったのか?)
そのまま内容は言わず八神は走ってその場を去っていった。「?」
気のせいだろうか。息切れもしていなかった彼の耳が赤く見えたのは……

体育祭が終わり借り物競走のお題の【好きな人】は誰が引いたのか、皆が気になったが結局誰か分からなかった。
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