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3. 陰キャ攻×ヤンキー受
しおりを挟む俺は喧嘩をするのが楽しくて、いつの間にか学校で1番強くなっていた。
その日も喧嘩をした。でも相手のバットが当たり怪我をしてしまったから、道端で少し休んでから帰る事にした。
「大丈夫?」
話しかけられて上を向いた。俺はその瞬間一目惚れをした。
でも、人を好きになった事なんて初めてだったから、ずっと話しかけれなかった。そんな俺にも転機が訪れた、蓮と3年で同じクラスになれたのだ。
この機会を逃すまいと、俺は毎日蓮に話しかけた。
そして付き合う事ができた!
恋人同士がする事はした。不安だったけど、蓮になら…って思えたからそんな不安はすぐなくなった。
でも、最近蓮が素っ気ない。
嫌な予感はしていた、そして今日その予感が的中する。
「別れたい。」
「えっ」
…何かの聞き間違いだよな?
「何言っての?そんな冗談面白くねぇよ!」
「冗談じゃない、前から思ってたんだ、ヤンキーって怖いし、それに女の子の方が可愛いなって」
「……は?なんだよそれ…」
「教室でも俺に関わらないで…じゃあね」
ヤンキーが怖い?女の子の方が可愛い?
ヤンキーが嫌われるのはわかるから、蓮と付き合ってからは喧嘩は一切やめた。俺は男だし、付き合えてからも女の子に目移りしないかなとか、胸無いけど俺の体見て興奮してくれるかなとか、色々考えた。
そこを頑張ってカバーしようとしたんだ…蓮に触りたいって思ってもらえるように、肌のケアだってした、胸も少しでも大きくならないかなとか思って、毎日自分で…いじったりしてた……でも、出来てなかったんだな……
「俺だけが好きだったんだな…」
泣いてもどうにもならない…忘れるしかない…
今日の夜は全く眠れなかった。
* * * * *
「おはよ…」
「おは……えっ、なんでそんな目腫れてんの?」
「…なんでもない」
ヤンキーだからといって、友達がいない訳ではない。
蓮はまだ来ていなかった。
(普通にできるかな…あっ、でも話しかけちゃいけないのか…)
「ねぇ今日めっちゃかっこいい人とすれ違ったんだけど!」
「私も見た!転校生かな?」
ガラッ…
「っ、」
「えっ、かっこよ!」
「は?あいつ田中?」
「あんなイケメンだったんだな!笑」
その顔は俺だけが知ってるはずだったのに…
蓮と初めて会った時、俺はあいつの雰囲気に一目惚れした。初めて顔を見たのは、最中にあいつが髪をかきあげた時だ。
俺はその時、
(こんなかっこいい顔見たら絶対みんな好きになっちゃう!そんなの絶対嫌だ!)
って思い、思わず
「お前絶対前髪切らねぇ方がいいぞ、かっこよくねぇから」
とか、思ってもいない事を言ってしまった…
蓮はその長い前髪を切っていた。
「田中ってそんなかっこよかったんだね!」
「ほんとかっこいい!ねぇ今日の放課後遊ばない?」
「なんで髪切ったのっ?」
(女の子にモテるため…?)
もう別れているのに、俺は嫉妬でどうにかなりそうだった。
「好きな子の隣に並べるように少しイメチェンしてみたんだ。……どうかな?」
「「似合ってる!」」
絶対その方がいいよ、など皆口々に話している。
(っ、誰だよそいつっ!)
蓮に好きって思われるその子が本当に羨ましくなった。
「理由もかっこいいね!」
「どんな子なの?」
聞きたくない…けど俺も蓮のタイプに近づけたらまた付き合ってくれるかも…
「可愛くて、元気で、いつも楽しそうに俺の話を聞いてくれる子」
(っ、1つ目から無理じゃん…女の子の方が可愛いって言われちゃったし………)
* * * * *
あの日から1ヶ月たった今日、文化祭2日目だった。
(蓮と回れると思って楽しみにしてたんだけどな……)
1ヶ月間で蓮を忘れるなんて無理だった…
なのにあいつはモテにモテて、いつも周りには女の子がいた…男友達も沢山出来ていた…
(同じクラスなのほんと辛い……)
俺は今日いつもいるグループと回っている。
でも、さっきからみんなの様子がおかしい。
「……柳、俺らお前に謝りたい事があるんだ…」
「…ん?なに?」
「その……」
(?)
「柳が最近元気ないのってあいつと別れたせい?」
「えっ、」
気づいてたんだ…
「…うん、そう」
「っ!柳、ほんとごめん!」
「…なんでお前らが謝んの?」
「俺らが田中に言っちまったんだ…柳が迷惑してるって、前に『陰キャとか一緒にいても楽しくねぇだろ』って言ってただろ?だから、あいつに柳と釣り合ってないとか、お前のせいで柳が無理してるとか…色々……」
…何それ……
俺がそう言ったのは事実だ。でもそれは、こいつらが蓮に興味を持ちそうだったから言ってしまった事…蓮と他の奴が仲良くするのが嫌だったから……
「…そっか、もういいよ、終わった事だし…」
「っ!………本当にごめんっ」
そう、今謝られたところで何も変わらない。だって、俺らはもう終わったから…それに、蓮が別れ話で言っていた事は本音だろう……俺もそう思われるんじゃないかって思ってた事だったから……
その時俺のスマホが鳴った。
俺は学校中から怖がられてるからこいつら以外からの連絡は基本来ない。
(………誰だろ?)
「っ!」
『今日の後夜祭の時、教室に来てほしい』
蓮からだった。
(なんで?)
疑問しか浮かばなかった、それにいい話じゃないだろう…また傷つくかもしれない。けど、今の俺はそんな事よりまた蓮と話せる事実が嬉しかった。
『わかった』
* * * * *
「…久しぶり」
「うん…話って何?」
(蓮だ、また蓮と話せてる…)
この時点で俺は既に泣きそうだった
(傷つく事を言われるかも……そうなったら俺絶対泣いちゃうよ…?)
「……」
蓮が深呼吸した。
「ん?」
「好きです、俺と付き合ってください!」
「…えっ」
…どういう事?
「…何言ってんの?俺らもう別れたじゃん」
「最低な事してんのはわかってる。けど、好きなんだ」
「…じゃあなんで振ったの!?」
俺にはその言葉が信じられなかった。
「直が陰キャの俺といても楽しくないって言ってるの聞いちゃったんだ、直の友達にも言われた、直が迷惑してるって…」
「っ、それはっ」
「直は優しいから、自分から別れを切り出せなかったんだなって思ったから、俺から別れ話を切り出した。でもやっぱり諦めきれなくて、陰キャじゃなかったら、直はまた俺と一緒にいたいって思ってくれるかもって思ったからこの1ヶ月頑張ったんだ。」
「っ、何それっ」
俺はお前が隣にいてくれるだけで良かったのに…
「だから、俺との事もう一度考えてくれませんか?」
本当に?また蓮と一緒にいれるのか?
もう嘘でも良かった、また蓮と付き合えるなら
「俺も好き!」
「えっ?」
「陰キャといても楽しくないって言ったのは、あいつらが蓮に興味持ちそうだったから言ったんだ…蓮と仲良いのは俺だけが良かったから……」
「……そうだったんだ」
「うん、だから俺も蓮と付き合いたいっ」
「………嬉しい、直」
「っ、んっ」
蓮がキスしてくれた
「直、大好きだよ」
「俺も大好き!………次別れるって言ったら許さないからなっ」
「うん、絶対言わない。本当にごめんね」
「………やっぱ許さない」
「っ、どうしたら許してくれる?」
「………させて」
「ん?」
「キスマーク付けさせて…」
「っ、いいよ。」
俺は蓮の首に3個キスマークを付けた。
「これ隠さないとやばいね…」
「なんで隠すんだよ……付けた意味ねぇじゃん」
「バレちゃったらどうするの?」
「っ、蓮はやっぱ俺との事バレたくない?」
「俺は別にいいよ、っていうか言いたい。でも、直は嫌だろ?」
「蓮が良いなら俺は言いたいっ!蓮がモテてるの見るのやだったから、蓮は俺のって言いたい!」
「っ、ねぇ直、俺も直にキスマ付けていい?」
「っ!うんっ、付けてっ」
嬉しい…蓮が俺に、キスマを付けたいって思ってくれただけで、とても幸せな気持ちになれた。それに、俺は蓮が寝てる間にこっそり付けた事あったけど、蓮が俺に付けてくれるのは初めてだ。
「ん、あっ、ふぁっ」
「直、声可愛い…もっと聞きたい」
(あっ……)
俺は思い出してしまった。
「…蓮待って」
「…やっぱ嫌だった?」
「違う!…蓮俺より女の子の方が可愛いって言っただろ?……ど、どうしたら蓮のタイプになれる?」
「っ、本当ごめん、それも嘘だ。直を突き放すような事言ったら別れても直は罪悪感を感じないと思って……直は可愛いよ、女の子の方が可愛いなんて思ったこと一度もない」
「…ほんと?」
「うん、ほんと」
「…前髪切ったのは?」
「陰キャの暗いってイメージを無くしたかったから。前にかっこよくないから切るなって言ったよな?だから抵抗もあっ……」
俺から蓮にキスした。
「違う!かっこよくないって言いたかったんじゃなくて、蓮の顔見たらみんな好きになっちゃうと思って…そんなのやだったから切ってほしくなかった、ちゃんと伝えられなくてごめんっ」
「……そうだったんだ。ふふっ、よかった」
「…なにが?」
「直が俺の事かっこいいって思ってくれてるって事でしょ?……って言うのは冗談……」
「うんっ、かっこいい!だから蓮が前髪切った時、別れてたのに嫉妬でおかしくなりそうだった」
「っ、そっか…。直、傷付けて本当にごめんね」
「もういいよ、俺も悪かったし。……それより今日うち泊まってけよ」
「っ!」
俺は中学の時親を亡くしてから、1人暮らしをしている。
親がいなくなってから、親戚に引き取ってもらったが、その頃はとにかく1人になりたくて、1人暮らししたいって話したら、「わかった。でも生活費は出させてね」って言われた。バイトもしているが限界もあるから、そこは甘えさせてもらっている。
だから家には誰もいない。蓮はそれを知っているから、俺が寂しくないようにっていつも遊びに来てくれた。………泊まりも俺の家だから、泊まってけとはそう言う事で…
* * * * *
次の日同じタイミングで蓮と俺の首にキスマークが付いていたため、噂はすぐに広がった。
何か聞かれるたびに俺は、
「蓮は俺のだから手出すなよ」
って答えた。
蓮もそれを微笑みながら見守ってくれた。
そうして俺らは学校1の有名カップルになった。
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