吉原お嬢

あさのりんご

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第2章

さ湯のおかわり(26p)

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      ゲホン――ゲホン――
 ふすまが、開いて、咳払いをしながら石井が入ってきた。
「宮様、おさ湯のお代わりをお持ちいたしましょうか?」と恐い顔で言う。
「うるさい!下がれ!!無礼者」
 その優雅な声は一変し、威厳に満ちて勇ましい。両手の拳が握られブルブルと震えている。
「失礼いたしました」
 石井は私を睨みながら出ていく。

 宮様は又、私を引き寄せた。
「鈴子さん……」
「宮様とは住む世界が違います」
 “吉原育ちのド貧”と言いかけて言葉を飲んだ。奥様や、伯爵様に迷惑をかけてしまう。
 竹宮様はジーっと私を見つめた。
「僕は、はじめてお会いした時を忘れません。まるで、別世界から舞い降りてきたようでした。
 あなたとお話しできてよかった。あなたは、どんな女性とも違う。
 住む世界が違うのですね。あなたは……もしかして…かぐや姫ですか……?」

 ああ!宮様はやはり雲の上のお方。こうしてお話してみるとやっぱり、どこまでも高貴で。霞を食べて生きている仙人様のよう。田舎なまりが、月の言葉に聞こえたのか?田舎のなまりなんて、ご存じないから。それにしても…かぐや姫だなんて!

 その日は、月がきれいでナスに穴を開けて月をのぞくという宮中の遊びをしたりして、遅くなってからおいとました。帰る時、竹宮様は
「今日は、ありがとう。楽しかった。私の気持ちは、先日、歌にして手紙でお送りした時と少しも変わっていません。僕は、真剣です。
 鈴子さん、じらすなんて……つらいな……返歌をお待ちしていますよ」
と、微笑まれた。 
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