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第2章
ガーデンパーティーは、日曜日(16P)
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お種さんに、お歌の意味を聞いて驚いた。
み、み、宮様が私なんかに?と、と、とんでもない。
お種さんから、話しを聞いて、奥様は怒っているかもしれない。
憂鬱な気分なので、ゆっくりと夫人室に向かう。
「鈴子さん、お待ちしていましたわ。学校はいかが?」
夫人室に入ると鶴子奥様は、いつもと変わらず華やかに笑っている。
よかった。御機嫌はいい。
「はい。もう慣れました」
「そう。それはなによりです。お種さんから聞きましたよ。お歌を頂いたのね。
竹宮様は、お妃選びがまだですから。ちょうどいいわ。鈴子さんに園遊会のお知らせをしょうと思って、お呼びしたの。来週の日曜日ね。園遊会には竹宮様もお招きしていますから。鈴子さん。紫出原家の為にも、失礼のないように」
「園遊会…?」
「紫出原家の毎年の恒例行事ですの。お庭に屋台が出来たり、楽団の演奏があったりして、楽しいわよ」
「では、純一朗様も、お喜びですね」
「え?純一郎さんはいないわ」
「いない?」
「ええ。寮に入ったの。男子は質実剛健に育てなければいけないから。
私から伯爵さまにお願いしたのよ。女人禁制の寮で朝は庭掃除をしてから学校よ。
それに、帰ると剣道、柔道でしごかれて、座禅で精神修養もするの。ほっほっほ。あの、弱虫さんも、強くなれる」
「……いつ帰れるのですか?」
「わからないわ。でもね、こんな贅沢な暮しでは遊惰文弱になってしまうでしょう?男の子は、スパルタ教育すべきなの」
ええっ!
父親が再婚し家族からはみ出したジュン。その傷ついている小さな男の子に更に試練を与えるスパルタ教育をするなんて、可愛いそう。私とお手玉で遊ぶのを楽しみにしていたのに。ジュンに会いたい……あの、可愛い笑顔が見たい。涙がポロポロこぼれてきた。
「あら?泣いていらっしゃる?
なんてはしたない!人前で、感情を出すのはとても下品な事ですよ。
それにね。気味が悪いわ。純一郎さんの事で泣くなんて。”紫の上”じゃあるまいし」
「え?意味がよくわかりませんけど」
「源氏物語の、紫の上よ。光源氏が子供に恋をしてその子を自分好みに育てるってお話。純一郎さんも異常に鈴子さんを好きみたいだし。薄気味悪い……
あ、私はこれから用事がありますの。失礼」
奥様は屏風の後ろに消えた。
とぼとぼと、自分の部屋へ歩く。人気のない廊下は磨きぬかれ、階段の壁には豪華な油絵がかけてある。高価な品物が溢れるこの屋敷に、ジュンはいない。まま母が、ジュンを追い出してしまった。でも、私は何もできないのだ。
み、み、宮様が私なんかに?と、と、とんでもない。
お種さんから、話しを聞いて、奥様は怒っているかもしれない。
憂鬱な気分なので、ゆっくりと夫人室に向かう。
「鈴子さん、お待ちしていましたわ。学校はいかが?」
夫人室に入ると鶴子奥様は、いつもと変わらず華やかに笑っている。
よかった。御機嫌はいい。
「はい。もう慣れました」
「そう。それはなによりです。お種さんから聞きましたよ。お歌を頂いたのね。
竹宮様は、お妃選びがまだですから。ちょうどいいわ。鈴子さんに園遊会のお知らせをしょうと思って、お呼びしたの。来週の日曜日ね。園遊会には竹宮様もお招きしていますから。鈴子さん。紫出原家の為にも、失礼のないように」
「園遊会…?」
「紫出原家の毎年の恒例行事ですの。お庭に屋台が出来たり、楽団の演奏があったりして、楽しいわよ」
「では、純一朗様も、お喜びですね」
「え?純一郎さんはいないわ」
「いない?」
「ええ。寮に入ったの。男子は質実剛健に育てなければいけないから。
私から伯爵さまにお願いしたのよ。女人禁制の寮で朝は庭掃除をしてから学校よ。
それに、帰ると剣道、柔道でしごかれて、座禅で精神修養もするの。ほっほっほ。あの、弱虫さんも、強くなれる」
「……いつ帰れるのですか?」
「わからないわ。でもね、こんな贅沢な暮しでは遊惰文弱になってしまうでしょう?男の子は、スパルタ教育すべきなの」
ええっ!
父親が再婚し家族からはみ出したジュン。その傷ついている小さな男の子に更に試練を与えるスパルタ教育をするなんて、可愛いそう。私とお手玉で遊ぶのを楽しみにしていたのに。ジュンに会いたい……あの、可愛い笑顔が見たい。涙がポロポロこぼれてきた。
「あら?泣いていらっしゃる?
なんてはしたない!人前で、感情を出すのはとても下品な事ですよ。
それにね。気味が悪いわ。純一郎さんの事で泣くなんて。”紫の上”じゃあるまいし」
「え?意味がよくわかりませんけど」
「源氏物語の、紫の上よ。光源氏が子供に恋をしてその子を自分好みに育てるってお話。純一郎さんも異常に鈴子さんを好きみたいだし。薄気味悪い……
あ、私はこれから用事がありますの。失礼」
奥様は屏風の後ろに消えた。
とぼとぼと、自分の部屋へ歩く。人気のない廊下は磨きぬかれ、階段の壁には豪華な油絵がかけてある。高価な品物が溢れるこの屋敷に、ジュンはいない。まま母が、ジュンを追い出してしまった。でも、私は何もできないのだ。
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