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第5章
大恩人様(50p)
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芳子は、日本から逃亡して来た彼をどうしても助けたいと思った。この屋敷には活動家が出入りしている。日本軍の関係者も多く、長居は危険だ。頼れる人はいないだろうか。
そう!うってつけの人がいる。
馬漢三!
彼は、かつて国民党のスパイで田中少将が素性を見破り拘束した男だ。それを、私が命ごいをして、助けてやった。此処で、出会った時は、とても懐かしがっていた。
芳子は、早速、馬漢三に、山家の事情を説明し匿ってもらうように頼み込んだ。事情を知った馬漢三は、山家の安全を約束してくれた。山家は、馬漢三の計らいで、長春の市街地から離れた田舎で暮らす事になった。長春は、満州の首都で、山家のかつての赴任地で土地勘もある。しかし、芳子がいる開封からは、遠い。芳子は、別れが辛くもあった。
山家が長春に旅立つ日、芳子は、不安になって聞いてみた。
「バイ・クァンは?日本までおじ様を追いかけて行ったのでしょう?長春まで、追いかけてこない?」
「ああ――刑務所まで、面会に来たけれど会わなかった」
「彼女は、どこにいるの?」
「すぐに自分の国へ戻ったよ。国民党の映画に出るらしい。悪役だが、張り切っていた。満州のプロパガンダ映画に出るよりは、ましだと言ってね。鼻っぱしが強い所は、若い頃の君にそっくりだ」
「そうかな?僕と違って、彼女は女らしい。おじ様と、結婚するかなと思っていた」
「俺が本当に結ばれたい人は…昔から変わってないよ。でも、高嶺の花さ」
「満映の女優は、皆、山家亨の、お手つき―――って噂だけれど、おじ様は、日本に妻も子もいるのでしょう?ひどいわね」
「妻は病気で随分昔に亡くなっているよ―――俺は、独身。ヨコちゃんに妬いて貰えるなんて……光栄だ」
「べつに、妬いているわけじゃない」
「俺の思い過ごしか……はっはは……王女様に、大変失礼な事を申し上げた。ヨコちゃんは、僕の大恩人様。おかげで、大陸で生き伸びる事ができる。元気でな!また、会おう」
「ああ。きっと、会える!おじさまも、お元気で!」
芳子は山家の手をしっかりと握りしめた。
そう!うってつけの人がいる。
馬漢三!
彼は、かつて国民党のスパイで田中少将が素性を見破り拘束した男だ。それを、私が命ごいをして、助けてやった。此処で、出会った時は、とても懐かしがっていた。
芳子は、早速、馬漢三に、山家の事情を説明し匿ってもらうように頼み込んだ。事情を知った馬漢三は、山家の安全を約束してくれた。山家は、馬漢三の計らいで、長春の市街地から離れた田舎で暮らす事になった。長春は、満州の首都で、山家のかつての赴任地で土地勘もある。しかし、芳子がいる開封からは、遠い。芳子は、別れが辛くもあった。
山家が長春に旅立つ日、芳子は、不安になって聞いてみた。
「バイ・クァンは?日本までおじ様を追いかけて行ったのでしょう?長春まで、追いかけてこない?」
「ああ――刑務所まで、面会に来たけれど会わなかった」
「彼女は、どこにいるの?」
「すぐに自分の国へ戻ったよ。国民党の映画に出るらしい。悪役だが、張り切っていた。満州のプロパガンダ映画に出るよりは、ましだと言ってね。鼻っぱしが強い所は、若い頃の君にそっくりだ」
「そうかな?僕と違って、彼女は女らしい。おじ様と、結婚するかなと思っていた」
「俺が本当に結ばれたい人は…昔から変わってないよ。でも、高嶺の花さ」
「満映の女優は、皆、山家亨の、お手つき―――って噂だけれど、おじ様は、日本に妻も子もいるのでしょう?ひどいわね」
「妻は病気で随分昔に亡くなっているよ―――俺は、独身。ヨコちゃんに妬いて貰えるなんて……光栄だ」
「べつに、妬いているわけじゃない」
「俺の思い過ごしか……はっはは……王女様に、大変失礼な事を申し上げた。ヨコちゃんは、僕の大恩人様。おかげで、大陸で生き伸びる事ができる。元気でな!また、会おう」
「ああ。きっと、会える!おじさまも、お元気で!」
芳子は山家の手をしっかりと握りしめた。
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