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第6章
水色の寝間着姿で(52p)
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昭和二十年、十月の朝。近所の交番の巡査が、芳子邸の門を叩いた。
「金璧輝は、いるか!」と厳めしい顔で、門番を睨みつける。驚いた門番はおお急ぎで小方に知らせた。
警察が来るとは、ただ事ではない。小方は、寝坊している芳子を叩き起こした。
「芳子様!警察が来ました。身じまいをするように」と言い残し、門の内側から、巡査に「金璧輝は、病気で寝ている」と答えた。
それを聞いた巡査は、門を押し開け芳子の家に踏み込んだ。続いて、外で待機していた数十人の憲兵隊が駆けつけて一斉に、部屋に入ってくる。
「何をするんだ!」
小方は、彼らに立ち向かったが、すぐに突き飛ばされてしまう。憲兵隊は、芳子のベッドを取り囲み後ろ手に手錠をかけた。
寝室から引っ張り出された芳子は、無抵抗で悠然としている。青ざめている小方に、「おはよう」とにっこり微笑んだ。
小方は、水色の寝間着を着たまま、後ろ手にされた芳子の姿に胸が痛んだ。
「芳子様!私が、ご忠告申し上げたのに、まだ、着替えていなかったのですか!」とつい日本語で叫んでしまったくらいである。
小方は、北京語で
「君達は清朝の恩を受けてきた。いやしくも王女様の寝室へ、断りもなく侵入し、寝間着姿で連行するとは、何事だ!恥を知れ!」と抗議した。
憲兵隊長は激怒して
「ばかめ、貴様は何を言うか。職務を妨害すると許さんぞ」と怒鳴りつける。だが、小方は、ひるまず憲兵隊を振り切って、奥から芳子の上着を持って来る。小間使いが、それを受け取って、芳子に着せかけた。
五、六人の憲兵は、小方に銃を突き付けて、手をしばり上げた。顔に黒い布をかぶせられた二人は、車に押し込められ、北海公園に近い迎賓館に拘留されたのであった。
「金璧輝は、いるか!」と厳めしい顔で、門番を睨みつける。驚いた門番はおお急ぎで小方に知らせた。
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「芳子様!警察が来ました。身じまいをするように」と言い残し、門の内側から、巡査に「金璧輝は、病気で寝ている」と答えた。
それを聞いた巡査は、門を押し開け芳子の家に踏み込んだ。続いて、外で待機していた数十人の憲兵隊が駆けつけて一斉に、部屋に入ってくる。
「何をするんだ!」
小方は、彼らに立ち向かったが、すぐに突き飛ばされてしまう。憲兵隊は、芳子のベッドを取り囲み後ろ手に手錠をかけた。
寝室から引っ張り出された芳子は、無抵抗で悠然としている。青ざめている小方に、「おはよう」とにっこり微笑んだ。
小方は、水色の寝間着を着たまま、後ろ手にされた芳子の姿に胸が痛んだ。
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五、六人の憲兵は、小方に銃を突き付けて、手をしばり上げた。顔に黒い布をかぶせられた二人は、車に押し込められ、北海公園に近い迎賓館に拘留されたのであった。
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