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【ヴァンパイアの章】第6幕「スナイパー」
【ヴァンパイアの章】第6幕「スナイパー」
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【21日後
2月15日 東京・阿佐ヶ谷】
JR中央線の「阿佐ヶ谷駅」と地下鉄丸ノ内線の「南阿佐ヶ谷駅」に挟まれたエリアは、本来は静かな住宅街だ。ましてや、夜明け前の時間帯とあれば、なおさらだ。
ところが今は、凄まじい喧噪に包まれている。
青梅街道から中杉通りへの入口には杉並警察署の警察官たちが並び、車両の進入が制限されている。ロクローの自宅は中杉通りからアーケード街のパールセンターとは反対側に100mほど入った場所に建っていたが、周囲の路地もすべて封鎖されていた。警察によって張り巡らされた黄色い封鎖線の向こうに何台ものパトカーが駐まり、明滅するランプが隣近所の民家の外壁を赤く染めていた。
「すげえことになってやがるな・・」
小国雄彦がつぶやきながら上空を見上げた。
ヘリコプターが5機、ライトを点滅させながら旋回していた。報道各社のへりだ。もちろん「メトロポリタン・テレビ」のヘリもいるはずだ。その社会部長・根岸剛一と小国たちは、ロクローの自宅から1ブロックほど離れた駐車場に設置された作戦本部へと案内された。
屋根付きのテントの中にはずらりと机が置かれ、何のために使うのかわからない機械類が並べられていて、何人もの警察官がうごめいていた。普通ならメディア側の人間が立てこもり事件の前線本部にいることなどありえない。しかし、今は事情が違う。吸血男に妻と娘を人質に取られているのは、小国がプロデューサーをつとめるラジオ番組のパーソナリティーなのだ。
パイプ椅子にがっくりとうなだれて座るロクローは、見るも無惨なほど憔悴していた。無理もない。妻の日菜子は切断された指がスタジオに送られてきて生死がわからない。溺愛する一人娘のひなたは変質的な連続殺人犯の人質となっている。さらに愛人のキャバクラ嬢・明日香も殺害され首を切断されているのだ。
小国自身はラジオの生放送中に吸血男本人から、ロクローと一緒に現場まで来るように「招待」されている。
根岸は会社側の責任者として、この場にいる。小国が無茶をしないようお目付役として目を光らせるためでもある。しかし、裏で警視庁の上層部と密約があるのも小国にはわかっていた。カメラの持ち込みは許されなかったが、この現場で見聞きした事は特ダネとして放送する腹づもりだろう。もちろん放送できるのは警視庁幹部が書いてもよいと許可したネタだけだ。補佐役として警視庁クラブキャップの若林も同席を許されていた。
前線本部のある駐車場は、通りから少し引っ込んだ場所にあった。小国はテントから顔を出して、20メートルほど離れたロクローの家を見上げた。3階建ての住宅は外壁にアイボリーの煉瓦が贅沢に貼られ、2階部分には半円形に張り出した大きな出窓が見えた。玄関前には1台分の駐車スペースがある。普段はポルシェが駐められているのだろう。
小国の目の前を黒ずくめの一団が駆け抜けていった。黒い戦闘服の上に防弾ベストを羽織り、防弾バイザー付きのヘルメットをかぶっていた。サブマシンガンを構えながら、ぬかりなく家へとにじりよってゆく。
「SATも出ばって来てるのか」
小国がつぶやいた。
SATとは「警視庁警備部警備第一課特殊急襲部隊」。ハイジャックやバスジャック、立てこもりなど凶悪事件に出動する武装特殊部隊だ。警視庁上層部は銃器使用もやむなしと判断を下したらしい。ということは、どこかに狙撃チームも配置されているに違いない。
テントに引っ込むと同時に、SATの制服を着た180センチ近い長身の男が入ってきた。40代半ばくらいか。頭髪を短く刈り上げ、日本人離れした濃い顔をしている。がっちりとした体格だが、小国と違ってぜい肉など全くない体をしていた。男はロクローや小国、根岸に直立で敬礼しながら言った。
「現場指揮を担当する曽我です」
下の名も階級も名乗らなかった。無駄な事は一切話さないタイプなのだろう。
「早速ですが」
曽我はパイプ椅子でうなだれたままのロクローに声を掛けた。
「お宅の間取りを確認させていただけませんか」
ロクロー宅の見取り図を机に広げた。
「心中はお察しします。しかし、今は、気持ちを強く持っていただきたい。ご家族の救出作戦を迅速に効率よく展開するためには、部屋の配置を正確に把握しておくことが不可欠です。すべては、奥様と娘さんを無事に助け出すためです」
曽我は最後の一言に特に力をこめた。効果はあったようだ。ロクローの灰になりかけていた気持ちにポッと火がともったのがわかった。
ゆっくりと立ち上がり、見取り図を指さして説明を始める。
「1階には2部屋。玄関を入ると右に12畳の洋間、左には和室があって俺の書斎になってる。奥にはトイレとバスルーム。ジャグジー付きだ。2階は壁を取り払って、全部をリビングにした。3階も2部屋だ。西側が子ども部屋・・・」
ここで声が震えた。しかし、こらえて続けた。「東側は俺たち夫婦のベットルームだ。それと、トイレが3階にもある」
頷きながら見取り図と照らし合わせていた曽我が言った。
「熱感知装置やコンクリートマイクを持った監視班が間もなく到着しますが、マルヒはどうやら2階のリビングにいるようです」
マルヒとは被疑者のことだ。この場合は立てこもっている「吸血男」をさす。
「なぜわかるんです?」
小国が訊いた。
「カーテンが引かれていますが、いまさっき電気が消されましたから。リビングには何がありますか?」
「真ん中にイタリア製のソファセットが置いてある。こっちの壁にはでっかい壁掛けテレビ、脇にはオーディオセット。レコードもかけられるやつだ。西側はオープンキッチンになってる。カウンターバー付きだ。小さいがワインセラーも作った。キッチンの近くに一枚板の大きなダイニングテーブルが置いてある」
「窓は四方の壁に?」
「通りに面した方が出窓になってるんだ。反対のベランダ側はサッシに、あとの2面は普通の窓だ」
「カーテンは遮光ですか?」
「いや、完全な遮光じゃないはずだ。ただ、かなり厚手ではある」
そこまで話した時、ロクローがビクッとして飛び上がった。マナーモードにされた携帯電話が内ポケットで震え、羽虫が飛ぶような音をたてている。ポケットから出そうとして、取り落としてしまう。慌てて拾い上げ、耳に当てた。
「もしもし・・・・」
「ロクローさん、元気?」
あっけらかんとした吸血男の声が響いてきた。
「この家の前まで来てくれてるんでしょ。小国さんも一緒かな?」
「ああ、隣にいる」
小国の顔をちらりと見た。曽我がメモ帳を破り、『落ちついて。会話を引き延ばして』と走り書きして目の前に差し出した。ロクローが頷く。
「ひなたは無事か?日菜子は生きてるのか?指を切って治療はちゃんとやってくれてるんだろうな」
「そう慌てないでよ、せっかちは嫌われるよ」
「さっさと答えろ!いや、答えてくれ。頼む。無事なのか、それとも・・・」
「まあ、まあ、焦らなくても、じきにわかりますよ。警視庁からコワ~イ人達が来てるみたいだからね」
「こわい人たち?」
「SATのことですよ。あの人達が本気で調べ始めたら、すぐに明らかになりますよ。2人が生きてるのか、死んでるのかね。それより、約束覚えてますか?」
「なんの約束だ?」
「忘れちゃったの?ラジオの生放送の時、僕に聞いたじゃないですか?人間と同じ姿をしてるのか、って。で、僕は答えた。普段は人間と同じだけど、本当の姿は違うってね。その時、あとでメールで送るって約束したじゃないですか。今から写真を送りますよ。自撮りだから、あんまりうまく写ってないかもしれないけど。じゃ、お楽しみに」
通話が切れた。
ほどなく、携帯がブルブルッと短く震えて、メールの着信を告げた。発信者名は「明日香」となっていた。殺害して首を切り落としたロクローの愛人の携帯から送ってきているのだ。
ロクローが震える手で携帯電話を差しだした。
「あ、あんたが見てくれよ」
小国が受け取って、メールを開いた。文章はない。写真だけが何枚か添付されている。
1枚目の写真には、目が写っていた。片目だけだが、明らかに人間の瞳とは違っていた。まぶたが無く、瞳は金色だった。虹彩が縦に長く走っている。目の周りには黒っぽい毛が密生していた。
2枚目は口元だった。鼻づらがオオカミのように前方に突き出している。犬歯は異様に長かった。5センチ以上はある。唾液で表面がヌラヌラと光り、切っ先はサメの歯のように鋭かった。
最後の1枚は右手だ。
奴がスタジオに掛けてきた電話でこう言っていたことを思い出した。「驚くよ。爪だって異常に長いんだ。横にひと振りするだけで、なんだって一刀両断ですよ」。
小国は背筋に寒気が走った。肩口から覗き込んでいたロクローも震えていた。「これが、あいつの正体だってのか・・・」
以前、NHKで見た「アイアイ」の姿を思い出した。「アイアイ」は夜行性の原始的なサルの仲間だ。『アイアイ、アイアイ、おさるさんだよ』という童謡は誰でも幼い頃に歌ったことがあるだろう。だが驚いた事に、テレビで初めて見たアイアイの姿は、とても童謡に歌われているような可愛いものではなかった。特にびっくりしたのは、その指の形状だった。前足の中指がとにかく異様に長いのだ。この長い指を木の穴に差し込んで幼虫をほじくり出して食べる。やしの実などの果実も同様だった。その様子が小国には不気味だった。生息するマダガスカル島では不吉な「悪魔の使い」と呼ばれているというのも納得できた。
吸血男の爪は、その「アイアイ」にそっくりだった。しかし、奴の長い爪は虫や果物を食うためにあるのではない。エサとなる人間を狩り、身体を切り裂くためにあるのだ。
小国は携帯電話をSATの曽我に手渡した。曽我は全く表情を変えずに写真を眺めると、パタンと電話を閉じ、ロクローに投げ返した。
「私はこんなものは信じませんね。今時、特殊メイクでいくらでも作れますから。手の込んだことをして、我々をからかって喜んでいるだけです。こいつが本物の首狩りジャックなのか、それとも奴が言うようにただの模倣犯なのか、現段階では判断はできません。ただひとつはっきりしているのは、奴が頭のおかしい殺人犯で、人質にとられている六浦さんの家族が危機にさらされているということです」
プロの矜恃とでも言うのか、曽我は冷静で論理的だった。その曽我の肩口で、無線がやかましい音をあげた。
「狙撃班、マンション屋上に到着しました」
曽我が小国たちに説明する。「50メートルほど離れた10階建てのマンション屋上に狙撃チームをスタンバイさせました」
曽我が無線に向かって訊いた。
「そこから2階のリビングは見えるか?」
「リビングの窓は完全に照準に入っています。現在は室内灯が消えているため、標的は捕捉できません」
「よし、そのまま別命あるまで待機」
「了解」
狙撃班との会話が終わるのを待っていたかのように、すぐに別の無線が入った。
「こちら、監視班です」
「曽我だ。熱感知装置と音声探知機の設置は終わったか?」
「すぐ隣の民家2階に設置完了し、現在、探索を実行中」
「中の様子はどうか?」
「高性能マイクでもマルヒや人質の話し声はしません」
コンクリート壁を通しても室内の音声を拾えるマイクを使っているのだという。
「テレビがかなりの高音でつけっ放しになっています。ショッピング番組のようです。他に室内から目だった音は聞こえません」
「熱感知の方はどうだ?リビングに人影はないか?」
「2階リビングに人影が3名!」
「3名だな」
曽我が復唱した。
「はい、確かに3名分の反応があります」
ロクローが飛び上がって喜んだ。「てことは、ひなたも日菜子も無事ってことか!だってそうだろ?犯人とあわせて3人だもんな!よかった・・」
今にも泣きそうな顔で笑った。
「マルヒと人質2名、全員生存なんだな?」
曽我が念を押した。
「それが・・・・」
無線の向こうで、監視班の隊員が口ごもった。
ロクローの笑顔が凍りついた。「違うのか・・?」
曽我が命令した。
「監視班、動揺せずに正確に現状を報告しろ」
「ハイ・・。ダイニングテーブルの椅子に2名。一人は大人、もう一人は子供に見えます」
「よかった。ひなた・・・」
ロクローの目から涙がこぼれた。
「2人はわずかにですが動いてます。くっついた状態で座っています。マルヒが娘さんを拘束状態に置いていると思われます。もうひとつの人影は、リビング中央のソファに横たわった状態です。こいつがマズイ状態ではないかと・・・」
「なんだ?何が起きてるって言うんだ?」ロクローの顔は引きつっていた。
「ソファの人影は大きさから見て成人と思われます。ただ、さっきの2人とはサーモグラフの色が違うんです。テーブルの2人は赤ですが、こっちはブルーです。しかも、全く動きません」
「どういうことなんだよ?えっ、どういう意味だ?」
ロクローが曽我にくってかかる。
「体温が低いということです。生きている人間なら、赤系の色に映るはずです」
「て、ことは・・・」ロクローが一瞬言葉に詰まってから、つぶやいた。「日菜子は死んでるってことか?」
曽我は答えなかった。
「なあ、そうだろ。日菜子は奴に左手の薬指を切断されてる。ソファに横たわったままで動かなくて、体温が下がったままってことは、死んでるってことだろ」
曽我の肩をつかんで揺さぶりながら叫ぶ。曽我が視線を落として言った。
「その可能性は高いです」
小国が深いため息をついた。かける言葉が見つからなかった。
「ガガッ」と無線がうなり、慌てた声が響いた。
「いま、リビングに明かりがつきました!」
「やつが動いたのか?」
「いえ、動いてはいません。おそらく、手元にリモコンスイッチがあるんでしょう」
「何のために電気をつけたんだ?」
小国が首をかしげた。監視班の興奮した声がした。
「マルヒ、動きます!」
「なにっ?」
3人が目を合わせた。
「マルヒがダイニングテーブルの椅子から立ち上がりました・・あっ、人質も立たせた!・・・・女の子を立たせました!」
切れ切れに無線は続いた。
「一緒に歩き出します!・・・人質の肩を抱いたままです・・・・道路側の出窓の方に近づいていきます!」
同時にロクローの手の中で携帯電話が震えた。メールが着信したのだ。吸血男が持っている「明日香の携帯」からだった。慌てて文面を開いたロクローの顔が一瞬で青ざめた。
「これ、見ろ!」
曽我と小国にメールの文面を向けた。
『もうやけだ。
こんだけ囲まれたら、逃げるのは無理だ。
娘を殺して、僕も死ぬ』
「やばいぞ!」
小国が叫んだ。
「頼む!なんとかしてくれ!」
ロクローも叫んだ。
「そうだ!あのマンションに狙撃チームがいるんだろ!撃ってくれ!撃ち殺して、ひなたを助けてくれ!」
半狂乱で哀願する。曽我が無線をつかんだ。
「狙撃犯、聞こえるか?」
「ハイ」即答が返ってきた。
「そっちからマルヒの姿は見えるか?」
「照準内にとらえてます」
やや興奮した声に聞こえた。小国が曽我に詰め寄る。
「大丈夫なのか?人質に当たる心配はないのか?」
「大丈夫だと思います。狙撃手の腕は確かです。それに今は無風で風の影響も受けない」
小国は駐車場を飛び出した。曽我もロクローも続いた。家を見上げると、カーテンを透かして2人の影がぼんやりと確認できた。
「本当に誤射する心配はないのか?」小国がもう一度尋ねた。
「邪魔すんな!お前は引っ込んでろっ!」ロクローが小国につかみかかる。
無線に監視班の興奮した声が割り込んだ。
「マルヒがさらに窓に寄ります!手には・・・、刃物のようなものを持ってます!子供の首筋に当てて、窓に接近中!」
「刃物に間違いないのか?」
曽我が訊いた。
「間違いないです!長さは約30センチ、先端が細く、金属製です」
「狙撃犯!」
「ハイ」
「人質に弾が当たる可能性は?」
「この位置、この距離なら、ほぼありません」
冷静な声だった。
「ほぼではなく、100パーセントかと訊いている」
「限りなく100パーセントです」
曽我が目を閉じた。大きく息を吸ってから、目を開けて命じた。
「狙撃を許可する」
数秒の間があって、返事が返ってきた。
「了解。狙撃実行します」
周囲の時間が止まった気がした。小国はマンションの屋上を見上げた。暗闇に小さな光が見えた。遅れて乾いた発射音が聞こえた。衝撃波が空気を切り裂いた。2階リビングの窓ガラスが砕けた。そして、何かが倒れる鈍い音が小国の耳にも届いた。
曽我の無線がうなる。狙撃班からだ。
「標的、倒れました。頭部に命中したと思います」
監視班の報告が続いた。
「マルヒ、倒れてます」
曽我が尋ねる。「人質はどうした?」
「無事です。動いてます。倒れたマルヒの脇でうずくまっています」
ロクローが地面に座り込んだ。
「よかった・・、ひなた・・、よかった」
涙を流すロクロ―の肩に曽我が手を置いた。その手を握りしめ、ロクローはさらに泣きじゃくった。
「ありがとう、ありがとう」
その時だった。
ロクローの携帯電話が「ブウウン」と鳴った。
携帯の画面を見てロクローの泣き声が止まった。
唇が震え始めている。
「そんな・・・」
「どうした?」
小国が訊いた。
「奴だ」
「奴って?」
「だから、あいつだよ。吸血男だよ。奴からのメールなんだ」
「ばかな。あいつは狙撃されて・・」
曽我が呻くような声で訊いた。「何て書いてあるんです?」
掠れた声でロクローがメールを読み上げた。
「『あ~あ、やっちゃったね。僕は生きてるよ。えっ?じゃあ、死んだのは誰?』」
曽我の顔から初めて冷静さが消えていた。
2月15日 東京・阿佐ヶ谷】
JR中央線の「阿佐ヶ谷駅」と地下鉄丸ノ内線の「南阿佐ヶ谷駅」に挟まれたエリアは、本来は静かな住宅街だ。ましてや、夜明け前の時間帯とあれば、なおさらだ。
ところが今は、凄まじい喧噪に包まれている。
青梅街道から中杉通りへの入口には杉並警察署の警察官たちが並び、車両の進入が制限されている。ロクローの自宅は中杉通りからアーケード街のパールセンターとは反対側に100mほど入った場所に建っていたが、周囲の路地もすべて封鎖されていた。警察によって張り巡らされた黄色い封鎖線の向こうに何台ものパトカーが駐まり、明滅するランプが隣近所の民家の外壁を赤く染めていた。
「すげえことになってやがるな・・」
小国雄彦がつぶやきながら上空を見上げた。
ヘリコプターが5機、ライトを点滅させながら旋回していた。報道各社のへりだ。もちろん「メトロポリタン・テレビ」のヘリもいるはずだ。その社会部長・根岸剛一と小国たちは、ロクローの自宅から1ブロックほど離れた駐車場に設置された作戦本部へと案内された。
屋根付きのテントの中にはずらりと机が置かれ、何のために使うのかわからない機械類が並べられていて、何人もの警察官がうごめいていた。普通ならメディア側の人間が立てこもり事件の前線本部にいることなどありえない。しかし、今は事情が違う。吸血男に妻と娘を人質に取られているのは、小国がプロデューサーをつとめるラジオ番組のパーソナリティーなのだ。
パイプ椅子にがっくりとうなだれて座るロクローは、見るも無惨なほど憔悴していた。無理もない。妻の日菜子は切断された指がスタジオに送られてきて生死がわからない。溺愛する一人娘のひなたは変質的な連続殺人犯の人質となっている。さらに愛人のキャバクラ嬢・明日香も殺害され首を切断されているのだ。
小国自身はラジオの生放送中に吸血男本人から、ロクローと一緒に現場まで来るように「招待」されている。
根岸は会社側の責任者として、この場にいる。小国が無茶をしないようお目付役として目を光らせるためでもある。しかし、裏で警視庁の上層部と密約があるのも小国にはわかっていた。カメラの持ち込みは許されなかったが、この現場で見聞きした事は特ダネとして放送する腹づもりだろう。もちろん放送できるのは警視庁幹部が書いてもよいと許可したネタだけだ。補佐役として警視庁クラブキャップの若林も同席を許されていた。
前線本部のある駐車場は、通りから少し引っ込んだ場所にあった。小国はテントから顔を出して、20メートルほど離れたロクローの家を見上げた。3階建ての住宅は外壁にアイボリーの煉瓦が贅沢に貼られ、2階部分には半円形に張り出した大きな出窓が見えた。玄関前には1台分の駐車スペースがある。普段はポルシェが駐められているのだろう。
小国の目の前を黒ずくめの一団が駆け抜けていった。黒い戦闘服の上に防弾ベストを羽織り、防弾バイザー付きのヘルメットをかぶっていた。サブマシンガンを構えながら、ぬかりなく家へとにじりよってゆく。
「SATも出ばって来てるのか」
小国がつぶやいた。
SATとは「警視庁警備部警備第一課特殊急襲部隊」。ハイジャックやバスジャック、立てこもりなど凶悪事件に出動する武装特殊部隊だ。警視庁上層部は銃器使用もやむなしと判断を下したらしい。ということは、どこかに狙撃チームも配置されているに違いない。
テントに引っ込むと同時に、SATの制服を着た180センチ近い長身の男が入ってきた。40代半ばくらいか。頭髪を短く刈り上げ、日本人離れした濃い顔をしている。がっちりとした体格だが、小国と違ってぜい肉など全くない体をしていた。男はロクローや小国、根岸に直立で敬礼しながら言った。
「現場指揮を担当する曽我です」
下の名も階級も名乗らなかった。無駄な事は一切話さないタイプなのだろう。
「早速ですが」
曽我はパイプ椅子でうなだれたままのロクローに声を掛けた。
「お宅の間取りを確認させていただけませんか」
ロクロー宅の見取り図を机に広げた。
「心中はお察しします。しかし、今は、気持ちを強く持っていただきたい。ご家族の救出作戦を迅速に効率よく展開するためには、部屋の配置を正確に把握しておくことが不可欠です。すべては、奥様と娘さんを無事に助け出すためです」
曽我は最後の一言に特に力をこめた。効果はあったようだ。ロクローの灰になりかけていた気持ちにポッと火がともったのがわかった。
ゆっくりと立ち上がり、見取り図を指さして説明を始める。
「1階には2部屋。玄関を入ると右に12畳の洋間、左には和室があって俺の書斎になってる。奥にはトイレとバスルーム。ジャグジー付きだ。2階は壁を取り払って、全部をリビングにした。3階も2部屋だ。西側が子ども部屋・・・」
ここで声が震えた。しかし、こらえて続けた。「東側は俺たち夫婦のベットルームだ。それと、トイレが3階にもある」
頷きながら見取り図と照らし合わせていた曽我が言った。
「熱感知装置やコンクリートマイクを持った監視班が間もなく到着しますが、マルヒはどうやら2階のリビングにいるようです」
マルヒとは被疑者のことだ。この場合は立てこもっている「吸血男」をさす。
「なぜわかるんです?」
小国が訊いた。
「カーテンが引かれていますが、いまさっき電気が消されましたから。リビングには何がありますか?」
「真ん中にイタリア製のソファセットが置いてある。こっちの壁にはでっかい壁掛けテレビ、脇にはオーディオセット。レコードもかけられるやつだ。西側はオープンキッチンになってる。カウンターバー付きだ。小さいがワインセラーも作った。キッチンの近くに一枚板の大きなダイニングテーブルが置いてある」
「窓は四方の壁に?」
「通りに面した方が出窓になってるんだ。反対のベランダ側はサッシに、あとの2面は普通の窓だ」
「カーテンは遮光ですか?」
「いや、完全な遮光じゃないはずだ。ただ、かなり厚手ではある」
そこまで話した時、ロクローがビクッとして飛び上がった。マナーモードにされた携帯電話が内ポケットで震え、羽虫が飛ぶような音をたてている。ポケットから出そうとして、取り落としてしまう。慌てて拾い上げ、耳に当てた。
「もしもし・・・・」
「ロクローさん、元気?」
あっけらかんとした吸血男の声が響いてきた。
「この家の前まで来てくれてるんでしょ。小国さんも一緒かな?」
「ああ、隣にいる」
小国の顔をちらりと見た。曽我がメモ帳を破り、『落ちついて。会話を引き延ばして』と走り書きして目の前に差し出した。ロクローが頷く。
「ひなたは無事か?日菜子は生きてるのか?指を切って治療はちゃんとやってくれてるんだろうな」
「そう慌てないでよ、せっかちは嫌われるよ」
「さっさと答えろ!いや、答えてくれ。頼む。無事なのか、それとも・・・」
「まあ、まあ、焦らなくても、じきにわかりますよ。警視庁からコワ~イ人達が来てるみたいだからね」
「こわい人たち?」
「SATのことですよ。あの人達が本気で調べ始めたら、すぐに明らかになりますよ。2人が生きてるのか、死んでるのかね。それより、約束覚えてますか?」
「なんの約束だ?」
「忘れちゃったの?ラジオの生放送の時、僕に聞いたじゃないですか?人間と同じ姿をしてるのか、って。で、僕は答えた。普段は人間と同じだけど、本当の姿は違うってね。その時、あとでメールで送るって約束したじゃないですか。今から写真を送りますよ。自撮りだから、あんまりうまく写ってないかもしれないけど。じゃ、お楽しみに」
通話が切れた。
ほどなく、携帯がブルブルッと短く震えて、メールの着信を告げた。発信者名は「明日香」となっていた。殺害して首を切り落としたロクローの愛人の携帯から送ってきているのだ。
ロクローが震える手で携帯電話を差しだした。
「あ、あんたが見てくれよ」
小国が受け取って、メールを開いた。文章はない。写真だけが何枚か添付されている。
1枚目の写真には、目が写っていた。片目だけだが、明らかに人間の瞳とは違っていた。まぶたが無く、瞳は金色だった。虹彩が縦に長く走っている。目の周りには黒っぽい毛が密生していた。
2枚目は口元だった。鼻づらがオオカミのように前方に突き出している。犬歯は異様に長かった。5センチ以上はある。唾液で表面がヌラヌラと光り、切っ先はサメの歯のように鋭かった。
最後の1枚は右手だ。
奴がスタジオに掛けてきた電話でこう言っていたことを思い出した。「驚くよ。爪だって異常に長いんだ。横にひと振りするだけで、なんだって一刀両断ですよ」。
小国は背筋に寒気が走った。肩口から覗き込んでいたロクローも震えていた。「これが、あいつの正体だってのか・・・」
以前、NHKで見た「アイアイ」の姿を思い出した。「アイアイ」は夜行性の原始的なサルの仲間だ。『アイアイ、アイアイ、おさるさんだよ』という童謡は誰でも幼い頃に歌ったことがあるだろう。だが驚いた事に、テレビで初めて見たアイアイの姿は、とても童謡に歌われているような可愛いものではなかった。特にびっくりしたのは、その指の形状だった。前足の中指がとにかく異様に長いのだ。この長い指を木の穴に差し込んで幼虫をほじくり出して食べる。やしの実などの果実も同様だった。その様子が小国には不気味だった。生息するマダガスカル島では不吉な「悪魔の使い」と呼ばれているというのも納得できた。
吸血男の爪は、その「アイアイ」にそっくりだった。しかし、奴の長い爪は虫や果物を食うためにあるのではない。エサとなる人間を狩り、身体を切り裂くためにあるのだ。
小国は携帯電話をSATの曽我に手渡した。曽我は全く表情を変えずに写真を眺めると、パタンと電話を閉じ、ロクローに投げ返した。
「私はこんなものは信じませんね。今時、特殊メイクでいくらでも作れますから。手の込んだことをして、我々をからかって喜んでいるだけです。こいつが本物の首狩りジャックなのか、それとも奴が言うようにただの模倣犯なのか、現段階では判断はできません。ただひとつはっきりしているのは、奴が頭のおかしい殺人犯で、人質にとられている六浦さんの家族が危機にさらされているということです」
プロの矜恃とでも言うのか、曽我は冷静で論理的だった。その曽我の肩口で、無線がやかましい音をあげた。
「狙撃班、マンション屋上に到着しました」
曽我が小国たちに説明する。「50メートルほど離れた10階建てのマンション屋上に狙撃チームをスタンバイさせました」
曽我が無線に向かって訊いた。
「そこから2階のリビングは見えるか?」
「リビングの窓は完全に照準に入っています。現在は室内灯が消えているため、標的は捕捉できません」
「よし、そのまま別命あるまで待機」
「了解」
狙撃班との会話が終わるのを待っていたかのように、すぐに別の無線が入った。
「こちら、監視班です」
「曽我だ。熱感知装置と音声探知機の設置は終わったか?」
「すぐ隣の民家2階に設置完了し、現在、探索を実行中」
「中の様子はどうか?」
「高性能マイクでもマルヒや人質の話し声はしません」
コンクリート壁を通しても室内の音声を拾えるマイクを使っているのだという。
「テレビがかなりの高音でつけっ放しになっています。ショッピング番組のようです。他に室内から目だった音は聞こえません」
「熱感知の方はどうだ?リビングに人影はないか?」
「2階リビングに人影が3名!」
「3名だな」
曽我が復唱した。
「はい、確かに3名分の反応があります」
ロクローが飛び上がって喜んだ。「てことは、ひなたも日菜子も無事ってことか!だってそうだろ?犯人とあわせて3人だもんな!よかった・・」
今にも泣きそうな顔で笑った。
「マルヒと人質2名、全員生存なんだな?」
曽我が念を押した。
「それが・・・・」
無線の向こうで、監視班の隊員が口ごもった。
ロクローの笑顔が凍りついた。「違うのか・・?」
曽我が命令した。
「監視班、動揺せずに正確に現状を報告しろ」
「ハイ・・。ダイニングテーブルの椅子に2名。一人は大人、もう一人は子供に見えます」
「よかった。ひなた・・・」
ロクローの目から涙がこぼれた。
「2人はわずかにですが動いてます。くっついた状態で座っています。マルヒが娘さんを拘束状態に置いていると思われます。もうひとつの人影は、リビング中央のソファに横たわった状態です。こいつがマズイ状態ではないかと・・・」
「なんだ?何が起きてるって言うんだ?」ロクローの顔は引きつっていた。
「ソファの人影は大きさから見て成人と思われます。ただ、さっきの2人とはサーモグラフの色が違うんです。テーブルの2人は赤ですが、こっちはブルーです。しかも、全く動きません」
「どういうことなんだよ?えっ、どういう意味だ?」
ロクローが曽我にくってかかる。
「体温が低いということです。生きている人間なら、赤系の色に映るはずです」
「て、ことは・・・」ロクローが一瞬言葉に詰まってから、つぶやいた。「日菜子は死んでるってことか?」
曽我は答えなかった。
「なあ、そうだろ。日菜子は奴に左手の薬指を切断されてる。ソファに横たわったままで動かなくて、体温が下がったままってことは、死んでるってことだろ」
曽我の肩をつかんで揺さぶりながら叫ぶ。曽我が視線を落として言った。
「その可能性は高いです」
小国が深いため息をついた。かける言葉が見つからなかった。
「ガガッ」と無線がうなり、慌てた声が響いた。
「いま、リビングに明かりがつきました!」
「やつが動いたのか?」
「いえ、動いてはいません。おそらく、手元にリモコンスイッチがあるんでしょう」
「何のために電気をつけたんだ?」
小国が首をかしげた。監視班の興奮した声がした。
「マルヒ、動きます!」
「なにっ?」
3人が目を合わせた。
「マルヒがダイニングテーブルの椅子から立ち上がりました・・あっ、人質も立たせた!・・・・女の子を立たせました!」
切れ切れに無線は続いた。
「一緒に歩き出します!・・・人質の肩を抱いたままです・・・・道路側の出窓の方に近づいていきます!」
同時にロクローの手の中で携帯電話が震えた。メールが着信したのだ。吸血男が持っている「明日香の携帯」からだった。慌てて文面を開いたロクローの顔が一瞬で青ざめた。
「これ、見ろ!」
曽我と小国にメールの文面を向けた。
『もうやけだ。
こんだけ囲まれたら、逃げるのは無理だ。
娘を殺して、僕も死ぬ』
「やばいぞ!」
小国が叫んだ。
「頼む!なんとかしてくれ!」
ロクローも叫んだ。
「そうだ!あのマンションに狙撃チームがいるんだろ!撃ってくれ!撃ち殺して、ひなたを助けてくれ!」
半狂乱で哀願する。曽我が無線をつかんだ。
「狙撃犯、聞こえるか?」
「ハイ」即答が返ってきた。
「そっちからマルヒの姿は見えるか?」
「照準内にとらえてます」
やや興奮した声に聞こえた。小国が曽我に詰め寄る。
「大丈夫なのか?人質に当たる心配はないのか?」
「大丈夫だと思います。狙撃手の腕は確かです。それに今は無風で風の影響も受けない」
小国は駐車場を飛び出した。曽我もロクローも続いた。家を見上げると、カーテンを透かして2人の影がぼんやりと確認できた。
「本当に誤射する心配はないのか?」小国がもう一度尋ねた。
「邪魔すんな!お前は引っ込んでろっ!」ロクローが小国につかみかかる。
無線に監視班の興奮した声が割り込んだ。
「マルヒがさらに窓に寄ります!手には・・・、刃物のようなものを持ってます!子供の首筋に当てて、窓に接近中!」
「刃物に間違いないのか?」
曽我が訊いた。
「間違いないです!長さは約30センチ、先端が細く、金属製です」
「狙撃犯!」
「ハイ」
「人質に弾が当たる可能性は?」
「この位置、この距離なら、ほぼありません」
冷静な声だった。
「ほぼではなく、100パーセントかと訊いている」
「限りなく100パーセントです」
曽我が目を閉じた。大きく息を吸ってから、目を開けて命じた。
「狙撃を許可する」
数秒の間があって、返事が返ってきた。
「了解。狙撃実行します」
周囲の時間が止まった気がした。小国はマンションの屋上を見上げた。暗闇に小さな光が見えた。遅れて乾いた発射音が聞こえた。衝撃波が空気を切り裂いた。2階リビングの窓ガラスが砕けた。そして、何かが倒れる鈍い音が小国の耳にも届いた。
曽我の無線がうなる。狙撃班からだ。
「標的、倒れました。頭部に命中したと思います」
監視班の報告が続いた。
「マルヒ、倒れてます」
曽我が尋ねる。「人質はどうした?」
「無事です。動いてます。倒れたマルヒの脇でうずくまっています」
ロクローが地面に座り込んだ。
「よかった・・、ひなた・・、よかった」
涙を流すロクロ―の肩に曽我が手を置いた。その手を握りしめ、ロクローはさらに泣きじゃくった。
「ありがとう、ありがとう」
その時だった。
ロクローの携帯電話が「ブウウン」と鳴った。
携帯の画面を見てロクローの泣き声が止まった。
唇が震え始めている。
「そんな・・・」
「どうした?」
小国が訊いた。
「奴だ」
「奴って?」
「だから、あいつだよ。吸血男だよ。奴からのメールなんだ」
「ばかな。あいつは狙撃されて・・」
曽我が呻くような声で訊いた。「何て書いてあるんです?」
掠れた声でロクローがメールを読み上げた。
「『あ~あ、やっちゃったね。僕は生きてるよ。えっ?じゃあ、死んだのは誰?』」
曽我の顔から初めて冷静さが消えていた。
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