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狙い……
しおりを挟むんん?
ライフルの引き金を引く寸前、オレは目を細めた。
深い森の中である。そしてオレの構えるライフルの先には、外しようのない距離で熊が背を向けている。
でかい熊であった。
半月ぶりの獲物としては、申し分のない大きさである。が、その熊のようすが妙であった。
息を殺すように動かないのである。そのくせ、全身が緊張に満ちていることがよく分かる。まるで、今のオレと同じであった。
細めたオレの目は、熊の向こうに薄茶色のスマートな動物を見つけた。
それはキツネであった。
なるほど。
オレは熊の状態に納得した。キツネを狩ろうとしているのだ。オレと同じである。ただ、オレは熊を狩ろうとし、その熊はキツネを狩ろうとしているのである。
んん?
オレは熊の向こうで身を屈め、こちらに尻尾を見せているキツネの、さらに向こうを見て目を丸くした。
キツネはキジを狙っているのだ。
茂みの中にいるキジを狙っているため、自分がクマに狙われていることに気がついていないのである。
はー。
オレは感心した。こんな偶然もあるのである。
ちょっとまてよ。まさか……。
オレは目を凝らし、キジの顔が向いている方を見つめた。
んん?
そこにはカマキリがいたのである。
驚いたことに、キジはカマキリを狙っていたのである。
んん?
なんということか。カマキリは、さらに向こうにいる、ちいさなコガネムシを狙っている。
これは凄い。うまくいけば、オレは一発の銃弾で、熊とキツネとキジとカマキリとコガネムシを手にすることができるのである。
ようし!
気合を入れ直した時、オレは首筋に冷たいものを感じた。
後ろに、何かの気配を感じたのだ。
んん……。
オレは動けなくなってしまった。
オレの後ろに何がいるのかは分からない。しかし、そいつ確実にオレを狙っているはずであった。
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