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嘘をついた場合・Ⅰ
しおりを挟む閻魔大王は、安藤モドキの喉の奥、さらに深くまで二本の指を突き入れ、グリグリと回した後で引き抜いた。
真っ黒な内臓のようなものが、第一関節から爪に絡む形で引きずり出される。
人間モドキに内臓は無い。
複製されるのは外見だけで、内臓までは複製されていないのだ。
しかし、声を出すために、肺に似た器官はある。
声は、空気を吸い込み、吐き出すときに声帯を振動させることで発生させる。
そのため人間モドキも、未熟な声帯、そして、ふいごのような空気を出し入れする器官、それを動かす横隔膜のような部位を胸部に作っている。
これらが、閻魔大王の爪に絡め取られ、周囲の組織ごと、口から引き抜かれたのだ。
「……うッ」
高瀬たちが嘔吐を始めた。
「げッ、うぐ」
「ぐえッ」
一人が嘔吐すると、それに刺激された残る四人が次々とえずき、胃の内容物を吐き散らす。
高瀬たちが嘔吐を繰り返す中、閻魔大王は、久美モドキの口に指を伸ばした。
◆◇◆◇◆◇
閻魔大王は、左手を開いた。
動かなくなった安藤モドキと久美モドキが、ボタッ、ボタッっと、床に落ちる。
複製機能も解除され、ゆっくりと黒く不定形の塊へと変わっていく。
高瀬たちは口の周りを汚し、床に座り込んだまま声も無くしていた。
五人ともに、視線は閻魔大王から離れない。
現状を理解することを拒んでいるのか、どこか緩み、間の抜けたような顔になっている。
全員が、似たような表情で口を少し開き、同じ方向を見詰めている姿はシュールですらあった。
「さて、改めてお前たちに聞くことがある」
ナッツの言葉が聞こえ、高瀬たちは、ギクシャクとした動きで顔を向けた。
……!!
その顔が、驚愕に固まった。
目を見開く。
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