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嘘偽りのない
しおりを挟むナッツは、ゆっくりと階段を降りた。
一段降り、後ろのサキが同じ段に降りて、自身の背後に身を隠すのを待つ。
さらに一段降りて、続いたサキが、自身の背後に身を隠すのを待つ。
その二段で降りるのを止めた。
後一段で床に着く位置である。
その位置に立ち、目の前で揺れる人間モドキたちの中から、高瀬に似た一体を指さした。
指の腹を上に向け、ちょいちょいと動かすことで、さらに高瀬モドキを近くに呼ぶ。
高瀬モドキは、驚いたような表情を作り、ゆらゆらとナッツの前に移動した。
ナッツは上半身を傾け、高須モドキの耳に口を近づける。
「全員で、おれの後の人物を叩け」
囁くように命令した。
高瀬モドキは、何度も「うんうん」と頷いた。
一体に伝えることで、他の四体にも伝わるようになっている。
他の四体の人間モドキも、「うんうん」「うんうん」と頷き始めた。
頷きながら、ナッツを回り込むように移動し、五体の人間モドキはサキの側面に立った。
そこで手を伸ばし、サキを叩く。
軽く持ち上げた両手を、手首から先だけで振る様な仕草である。
その動きで、サキの肩や背をペチペチと叩く。
叩くというより、じゃれているようにしか見えない。
ガ、ギギ……?
プレス機が唸った。
プレス機、正確にはプレス機に憑いた付喪神は、主人に危害が加えられているのか、それとも、遊びなのかの判断が出来なかったようである。
それでも念のため、サキは左手を軽く上げてプレス機を制した。
ひとしきり、サキをペチペチと叩いた後、人間モドキたちは、ナッツの正面に戻ってきた。
感情も知性も無いモドキだが、「いい仕事をしました」とでも言いたげな、清々しい表情を作っている。
ナッツは、真ん中の高瀬モドキを指さし、その指先を左に動かした。
指が、高瀬モドキ、中島モドキ、サユリモドキと順番に示していく。
「お前たち、三人に聞く」
ナッツがそう言った。
人間モドキの後ろに座り込んでいる本物の高瀬たちは、黙り込み、何が起こるのかと身を固くしている。
「お前たちは、後ろの御方に危害を加えたのか?」
三体の人間モドキは、「うんうん」と首を縦に振った。
頷きながら「あーー」「あーーうん」「おんおん」と、肯定とも取れる声を発する。
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