帰還者たちは、この世界で再び戦う

七倉イルカ

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外法召喚Ⅰ

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 わずかな間を置き、ナッツの言葉の意味を理解したのか、サユリが甲高い声で叫んだ。
 「どうして、こんな酷いことをするのよ!」
 
 ナッツは、少し首を傾げて問い返した。
 「お前らこそ、どうして、ひと一人を自殺に追い込むほどに酷いことをしたんだ?」
 
 「ま、まさか、自殺するなんて、思ってなかったわよ……」
 サユリの声が小さくなる。
 「そうよ。だって、あれは、遊びの延長だったのよ。
 それを、サキが気にし過ぎて……」
 久美が視線をそらしながら言う。

 「そんなに辛かったら、言ってくれれば……」
 「そうだよ。軽いいじりだったんだよ。
 サキだって、おもしろがっていると思ってたんだ」
 高瀬と中島も続ける。
 謝罪が通じないと分かり、「悪気はなかった」「そんなつもりは無かった」との言い訳に、切り替えたようであった。

 「……分かった。
 お前らは、行き違いがあったと思っているんだな。
 本当に、そう思っているなら、すぐに解放してやるよ」
 ナッツはそう言う。

 一瞬、高瀬たちが目配せをした。
 うまく話を合わせることが出来れば、助かると思ったのであろう。

 「ただ、お前らの心の中なんざ、おれには知ることなんかできないしな」
 
 「ウソじゃない!
 誓って本当のことを言う。
 もちろん、おれたちにだって悪いところはあった。
 でも、ここまで羽森が傷ついていたなんて知らなかった……」
 「薄っぺらい言葉はいらねえから、ちょっと待ってろ」
 勢い込んで話し出した高瀬を抑え、ナッツは、さつきまで自分がいた、ギャラリーを見上げた。
 「言葉の真偽は、こっちで確認するさ」

 …………。
 しばらくすると、ナッツの後ろに、いきなりサキが現れた。
 正確には、見えない階段の一段上である。
 ナッツが使用した、階段を使って降りて来て、今、カメレオンワームから出てきたのだ。
 ナッツと同じく、パーカーを着ている。
 うつむき加減で大きなフードを深く被っているため、外からは顎先しか見えない。

 サキは、ナッツと同じ段に降りた。
 そして、五人の視線から隠れるように、ナッツの背にピタリと身を寄せた。
 ナッツには、サキが小さく震えていることが分かった。

 高瀬たちは、急に出現した、黒いロングパーカーの小柄な人物に驚いたようだが、それがサキだとは分かっていないようであった。
 
 ナッツは首を後にねじり、囁くように、サキに言葉をかけた。
 「あのプレス機なんか、ちょうど良い感じと思いませんか?」
 ナッツがいう、プレス機とは、二人の立つ位置から向かって左側に設置されている、油圧式の300tプレス機である。
 高さは約4メートル、幅は約3メートル、厚みは約2メートル。
 本体は緑の塗料が塗られているが、あちこちが剥がれ、オイルの汚れが目立つ。
 金型を取り付けて上下する、部分はオレンジ色に塗られていた。
 これはスライドと言われる、プレス機の核とも言える部分である。
 保護カバーの隙間から、スライドを上下させる二本のメイン・シリンダーが見える。
 全体的には、バカでかい四角柱の形をしている。
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