帰還者たちは、この世界で再び戦う

七倉イルカ

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電撃

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  ◆◇◆◇◆◇◆

 二度目の電流の波を喰らった五人は、甲高い絶叫をあげながら転げ回った。
 電流が消え去り、動けるようになると、恐怖で引きつった顔で、ナッツから少しづつ距離を取ろうとする。
 その中で、不意に高瀬が大きく動いた。
 「うわわわわわ!」
 声をあげ、壁に向かって駆けだしたのだ。
 入ってきたドアから、逃げ出すつもりだったのだろう。
 中島たち四人も、高瀬の動きの意味に気付き、同じく壁に向かって駆けだした。

 「え、あ!」
 「な、なんだ!」
 高瀬たちはパニックになった。
 入ってきたドアが見つからないのだ。
 「どこだ!」
 高瀬が壁沿いを走るが、ドアは見つからない。
 「どうして、ドアが無いんだよ!」
 壁をバンバンと叩き、かんしゃくを起こしたように叫んだ。

 「お前ら、自分の意志で、ここまでやって来たと思ってんのか?」
 ナッツが問うと、五人はドアを探すことを止め、立ち止った。
 中島、安藤、サユリ、久美が、高瀬に視線を向ける。
 「高瀬、あんたが案内したんでしょ!」
 「どういうことなのよ!」
 サユリと久美が、高瀬に食って掛かる。
 「出せッ! ここから出せ!
 お前のせいだろ!
 早く出せよ、手前ェ!」
 中島が高瀬の胸倉をつかんだ。

 「知らねェよ!
 なんとなく歩いていただけだろ!」
 高瀬は中島の腕をつかむと、自分の胸倉から引きはがした。
 シャツのボタンが飛び散る。
 「大体、お前らが、勝手について来たんじゃねェか!」

 仲間割れを見ながら、ナッツが声をかける。
 「入ってきたドアは、お前らには見つけられないよ。
 垣網を張って、せっかく、この箱網に誘い込んだんだからな。
 簡単に出られないような作りになっているんだよ」
 
 「何、訳の分かんねェことを……」
 中島を突き放した高瀬が、ナッツに怒鳴る。
 その言葉が、途中で途切れた。
 顔が恐怖に強張る。
 四人も目を見開き、蒼白になった。
 ナッツは、三つ目の雷球を手の平に浮かせていたのだ。

 「ほい、パス」
 五人に向け、雷球を山なりに投げた。
 床全体に電気が広がるため、どこにいても同じなのだが、高瀬たちは悲鳴をあげて雷球の落下地点から逃げ出した。

 一ヶ所に集まっている人間モドキたちは、高い弧を描いて投げられた雷球を一斉に見上げた。
 さらに表情が増え、五人とも嬉しそうな顔になっている。
 口を半開きにして、花火を楽しんでいるような表情だ。
 見上げた五人の顔が、雷球の落下に合わせて、スーーッと下がる。
 雷球が床に落ちた。
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