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通路
しおりを挟む「みなさんは、どのようにして、転生界へ移動されたのでしょうか?」
戸倉が問い、誰かが答える前に自分で説明を始めた。
「人気のない森の中や浜辺、村はずれで目が覚めた。
もしくは、目が覚める前に、親切な村人に助けられ、その方の家で目が覚めた。
そういった感じではないでしょうか?」
誰も反論しない。
肯定である。
ナッツも、遺跡が埋もれた密林で目が覚めた。
服は学生服のままである。
途方に暮れ、怪物に追われていたところをサキに助けられたのだ。
「このように、現実世界で昏睡状態となり、転生界で目覚めることを我々は『転生』または『転移』と呼んでいます。
ですが、魔族が同様の方法で、転生界から、この現実世界へ攻め込んできているとは考えにくいものがあります。
お分かりと思いますが、このようなランダムな『転移』では、軍として行動することは不可能だからです」
戸倉の説明は納得できる。
「我々は、転生界の魔族がこちら側と行き来できるシステムを開発した。
もしくは、そういう通路のような場所を発見したのではないかと推測しています。
そのシステムや通路を使い、こちら側に攻め込んでくる。
そして、その場所は、おそらく……」
「海中と言うことか」
サキが言った。
「これを通路と仮定しよう」
そう続けたのは井沢である。
「転生界にも人類はいる。
きみたちの仲間もそうだろう。
魔族の中ですら、友好関係を築ける者もいたのかも知れない。
しかし、現状、そういう人類に友好的な者たちは、こちらの世界に現れてはいない。
これは、通路を管理している者が、我々に強い敵意を持っているためであろう。
我々人類と友好関係を結ぶ可能性のあるものは、通路を通さない。
もしくは、通るものに対しては洗脳処理などを行っているのかも知れない」
井沢はいったん、言葉を切った。
「……我々は、この通路を敵から奪い取る。
そして、脅威を排除し、転生界の人類と友好を結ぶことを目標としている。
協力してもらえないだろうか」
井沢は、うまくまとめた。
ナッツにしても、リーザ、エルシャ、ハンク、シモンたち仲間と再会することが大きな望みである。
おそらくアイクにしても、サキにしても、転生界に会いたい人間はいるはずである。
互いに求めるものが同じならば、協力はできる。
……だけど。
あまりにも上手く、まとまり過ぎている気がする。
やはり何かが引っ掛かっていた。
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