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小田原防衛戦

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 「ええ。新潟や横浜のような破壊活動でもなく、能登沖でのような遭遇戦でもない。
 魔族およそ2200体、魔獣800体を先遣隊とした軍事侵攻です。
 兵数で言えば、一個旅団といったところでしょうか」
 
 戸倉の言葉に、ナッツは思わずアイクを見た。
 それほど大規模な侵攻があったとは、にわかに信じられなかったのだ。

 「……あれは、衝撃的だったぞ。
 あの日から、世界は一変したよ」
 アイクも、その日のことを思い出したのか、硬い表情で頷いた。

 「相模湾より出現し、御幸の浜から上陸した魔軍は、西湘バイパスを超えて、住宅街を破壊、焼き払いながら侵攻。
 途中、御幸ノ浜通り、西海子小路に分かれて北進を続けました。
 現在では、その先にある、小田原城を橋頭堡にしようとしたのではないかと推測されています」
 戸倉が説明を続ける。
 橋頭堡とは、侵攻する際の前進拠点のことである。

 「報せを受けた、桐野首相は、本来、国会の承認を得るべきでしたが、この手続きを省略し、防衛出動を発令しました。
 駒門、坂妻、滝ケ原、さらに座間の駐屯地から、陸自が直ちに出動、さらに習志野駐屯地からは、精鋭無比と言われる第一空挺団も出動しました。
 入間基地からは、空自の航空救難団、横田基地からは……」
 「米軍は?」
 これ以上、細かく聞いても頭に入らないので、ナッツは口を挟んだ。
 「日米安保条約があるだろ」
 「あの時点で、魔族や魔獣の侵攻は、「他国」と定義できませんでしたから、まあ、米軍は様子見というところです。
 日本政府としても、初動から介入されては、後の主導権が握れないと言う打算がありましたしね」
 「生臭い話だな」
 ナッツは小さく鼻を鳴らした。
 
 「戦闘の詳細映像は、後ほど、この部屋を出ることが出来たなら……」
 戸倉は、問うようにサキを見た。
 「心配するな。
 問題が無ければ、きちんと、この部屋から出してやるさ」
 察したサキが、そう答える。

 「ありがとうございます。
 では、小田原防衛戦の詳細は、後ほど、映像と共に改めて説明させていただきます。
 結果として、市民、警察、消防、自衛隊に多くの犠牲者を出しながらも、魔族上陸より15時間後には、撃退に成功しました」
 戸倉は、さらに説明を続けた。

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