上 下
37 / 83

小田原防衛戦

しおりを挟む

 「ええ。新潟や横浜のような破壊活動でもなく、能登沖でのような遭遇戦でもない。
 魔族およそ2200体、魔獣800体を先遣隊とした軍事侵攻です。
 兵数で言えば、一個旅団といったところでしょうか」
 
 戸倉の言葉に、ナッツは思わずアイクを見た。
 それほど大規模な侵攻があったとは、にわかに信じられなかったのだ。

 「……あれは、衝撃的だったぞ。
 あの日から、世界は一変したよ」
 アイクも、その日のことを思い出したのか、硬い表情で頷いた。

 「相模湾より出現し、御幸の浜から上陸した魔軍は、西湘バイパスを超えて、住宅街を破壊、焼き払いながら侵攻。
 途中、御幸ノ浜通り、西海子小路に分かれて北進を続けました。
 現在では、その先にある、小田原城を橋頭堡にしようとしたのではないかと推測されています」
 戸倉が説明を続ける。
 橋頭堡とは、侵攻する際の前進拠点のことである。

 「報せを受けた、桐野首相は、本来、国会の承認を得るべきでしたが、この手続きを省略し、防衛出動を発令しました。
 駒門、坂妻、滝ケ原、さらに座間の駐屯地から、陸自が直ちに出動、さらに習志野駐屯地からは、精鋭無比と言われる第一空挺団も出動しました。
 入間基地からは、空自の航空救難団、横田基地からは……」
 「米軍は?」
 これ以上、細かく聞いても頭に入らないので、ナッツは口を挟んだ。
 「日米安保条約があるだろ」
 「あの時点で、魔族や魔獣の侵攻は、「他国」と定義できませんでしたから、まあ、米軍は様子見というところです。
 日本政府としても、初動から介入されては、後の主導権が握れないと言う打算がありましたしね」
 「生臭い話だな」
 ナッツは小さく鼻を鳴らした。
 
 「戦闘の詳細映像は、後ほど、この部屋を出ることが出来たなら……」
 戸倉は、問うようにサキを見た。
 「心配するな。
 問題が無ければ、きちんと、この部屋から出してやるさ」
 察したサキが、そう答える。

 「ありがとうございます。
 では、小田原防衛戦の詳細は、後ほど、映像と共に改めて説明させていただきます。
 結果として、市民、警察、消防、自衛隊に多くの犠牲者を出しながらも、魔族上陸より15時間後には、撃退に成功しました」
 戸倉は、さらに説明を続けた。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

若妻の穴を堪能する夫の話

かめのこたろう
現代文学
内容は題名の通りです。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

私は何人とヤれば解放されるんですか?

ヘロディア
恋愛
初恋の人を探して貴族に仕えることを選んだ主人公。しかし、彼女に与えられた仕事とは、貴族たちの夜中の相手だった…

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

RUBBER LADY 屈辱の性奴隷調教

RUBBER LADY
ファンタジー
RUBBER LADYが活躍するストーリーの続編です

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

ある日、近所の少年と異世界に飛ばされて保護者になりました。

トロ猫
ファンタジー
仕事をやめ、なんとなく稼ぎながら暮らしていた白川エマ(39)は、買い物帰りに偶然道端で出会った虐待された少年と共に異世界に飛ばされてしまう。 謎の光に囲まれ、目を開けたら周りは銀世界。 「え?ここどこ?」 コスプレ外国人に急に向けられた剣に戸惑うも一緒に飛ばされた少年を守ろうと走り出すと、ズボンが踝まで落ちてしまう。 ――え? どうして カクヨムにて先行しております。

聖女としてきたはずが要らないと言われてしまったため、異世界でふわふわパンを焼こうと思います!

伊桜らな
ファンタジー
家業パン屋さんで働くメルは、パンが大好き。 いきなり聖女召喚の儀やらで異世界に呼ばれちゃったのに「いらない」と言われて追い出されてしまう。どうすればいいか分からなかったとき、公爵家当主に拾われ公爵家にお世話になる。 衣食住は確保できたって思ったのに、パンが美味しくないしめちゃくちゃ硬い!! パン好きなメルは、厨房を使いふわふわパン作りを始める。  *表紙画は月兎なつめ様に描いて頂きました。*  ー(*)のマークはRシーンがあります。ー  少しだけ展開を変えました。申し訳ありません。  ホットランキング 1位(2021.10.17)  ファンタジーランキング1位(2021.10.17)  小説ランキング 1位(2021.10.17)  ありがとうございます。読んでくださる皆様に感謝です。

処理中です...