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真偽
しおりを挟む「正直、討てないだろうな。
ジェーマインは、そんな簡単な相手じゃないだろ」
アイクは小さく首を振り、あっさりと否定した。
自身の最大功績を捨てたことと同じである。
この種の欲の無さが、アイクを勇者にした要因の一つかも知れない。
「ボクデン先生からも、魔王には、決して一人で立ち向かうなと言われたことがある。
パーティを組んでの戦いだけが、唯一の勝機だとな」
「もういい」
井沢がアイクの言葉をさえぎった。
「勇者アイク・アモンは、転生界で魔王ジェーマインを討ち取り、人類側を勝利に導いた。
これは、すでに公式で発表していることだ」
井沢の目は、サキに向けられている。
これ以上、この件に対する議論を拒絶するような目である。
「そ、それに、あの、コハルさんだけじゃなくて、ほかにも目撃者はいるわ。
主戦場に出ていた転生者も、何人か帰還しているの。
魔王殿の最上部が、光に包まれて爆発するのを見たって……」
由美香が、あたふたと補足説明をする。
「その目撃証言に何の意味がある。
アイクが、魔王を討った証明になると思っているのか?」
サキは面倒臭そうに由美香を見る。
由美香が視線を伏せて黙り込むと、戸倉が口を開いた。
「まあまあ、そんなに尖がらないでください。
ぶっちゃけて言いますと、今、こっちの世界での戦いは、押されているんです。
それも、かなり苦戦しています。
だから、転生界で魔王を討伐した勇者が帰還したと公表し、士気をあげる必要があるんですよ。
さっきの何とかと言う王子が、魔王討伐戦で戦線に出たことと同じです。
今回、アイクさんがケルベロスを討ったことも、盛大に発表する予定になっています」
「黙れ、戸倉」
あっさりと内情を吐露する戸倉を井沢が睨む。
「でも、井沢さん。
こう言うことは、腹を割って話した方がいいと思いますよ」
戸倉が肩をすくめて、反論する。
「お前たちの都合や劣勢など、知ったことじゃない。
だけど、ひとつ教えておいてやろう」
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