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目撃者・Ⅲ
しおりを挟むすでに奉行所は、総泉寺にある平賀源内の墓を暴いている。
当時は座棺と言い、遺体は桶の形をした棺に座った形で入れられて埋葬される。
火葬ではなく、土葬である。
源内の墓を掘り返すと、朽ちて大量の土が入り込んだ早桶の中から、成人男性一体分の骨が現れた。
しかし、これが源内の骨だと確認する方法は無かった。
埋葬時、源内ではなく、別の遺体が源内と偽られ、埋められていた可能性もあるのだ。
さらに奉行所は、平賀源内の捜索に人相書きを使った。
生前の源内の要望を知る、杉田玄白の協力を得て、源内の似顔絵を制作したのだ。
似顔絵の横に、面長であり、顎やや細いなどと、特徴を記載する。
ここで問題が起こった。
源内が死んだのが、今より37年前、もし生きていれば90歳近い老人である。
死んだ当時のままの人相とするのか、それとも、そこから老いた顔を想像して描くのかで少し議論となったのだ。
結局、死んだ当時より、少し老けさせた人相書きを描くこととなった。
しかし、この人相書きに『人相手配書 平賀源内』と書くことは出来ない。
平賀源内は、公式には37年前に獄死したことになっているのだ。
そのため、『無宿源造』と言う名前、さらに罪状をでっちあげて、あちこちに配布した。
さらにもうひとつ。
『近頃、平賀源内、もしくは平賀源内の身内と偽り、人々をたぶらかす者が出没している。情報を持つ者は、奉行所に届け出よ』という告知を次々に立てた。
平賀源内に似た『無宿源造』という罪人の手配書。
平賀源内と名乗る偽者の手配書。
どちらも『平賀源内』を手配しているものではない。
それであるにも関わらず、弥吉は「平賀源内を目撃した」と証言しているのである。
「弥吉」
後藤は改めて質問をする。
「先ほど、駕籠に乗っていた者が、平賀源内で間違いないと申したが、おぬし、源内を見知っておるのか?」
「知っております」
弥吉は、はっきりと答えた。
「あれは、十歳のころでございます。
そのころの私は、奥州会津に住んでおりました」
弥吉は、そのころのことを思い出すように、わずかに間を置いた。
「……会津には、磐梯山という立派な御山がございます。
私の住む村は、その磐梯山の麓にございました。
……平賀源内は」
弥吉は唾を飲み込んだ。
目に恐怖の色が浮かび上がる。
「……磐梯山の深き場所で、世にも恐ろしい怪獣を造り上げていたのでございます」
※ ここで第2話「会津の怪獣騒動」に繋がります^^;
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