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一案
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「つまらぬことを聞いてしまったな。
では、安全な所まで下がって頂きたい。
我らは、今より、あの妖物を浅草寺より追い出しにかかる」
老僧は手下の一人に案内され、早足に去っていった。
それを確認した佐竹は、周囲の同心たちに目を向けた。
「分かっているとは思うが、ただ、浅草寺より追い出せばいいと言う訳ではない」
はあぴいを討った実績に期待しているのか、視線は景山に向く。
「旗本勢は、風雷神門の外、浅草広小路に陣を敷いておる。
そこへ誘導せねばならんのだ」
江戸の町を焼き払った明暦の大火の後、江戸の各地には、延焼防止のための大きな空き地が作られた。
これを火除地と言う。
広小路とは、通常より広く作られた路で、これも火除地に含まれる。
2000石の知行取り、沢村主税が指揮を執る旗本勢は、この浅草広小路に軍を展開させていた。
佐竹は、改めて、自分たちがせねばならぬことを説明した。
本堂前の魔獣を、今、潜んでいる宝蔵門へと誘い込んで潜らせ、そのまま、参道を約三町、追い立て、最後に、表門である風雷神門を潜らせる。
そこで、広小路で待ち構えている旗本勢が、弓矢、鉄砲を一斉に放ち、魔獣を仕留めるという手順である。
後藤が呆れたような顔をみせた。
「我ら奉行所が、難しいお膳立てをし、旗本は平らげるだけということですか。
旗本たちと、役割を変わってほしいものですな」
毒のある軽口だが、景山も同意したくなった。
佐竹は、後藤の軽口を黙殺した。
「本堂の後ろには、森原殿と石井殿が捕り方たちをまとめている」
佐竹は、他の与力たちの名前を口にした。
「さらに人数を回し、本堂の後から、一斉に追い立て、こちらに誘導する以外に、方法は無いか……」
言葉に迷いが感じられる。
佐竹自身も、それで成功するとは思っていないのであろう。
「追い立て役に襲い掛かるかも知れませぬ」
景山は、一番危惧することを口にした。
ヘタをすれば、人面鳥と戦ったとき以上の惨劇になる。
「一案があります」
景山が視線を向けると、田伏という若い同心であった。
あまり良い評判の無い男である。
では、安全な所まで下がって頂きたい。
我らは、今より、あの妖物を浅草寺より追い出しにかかる」
老僧は手下の一人に案内され、早足に去っていった。
それを確認した佐竹は、周囲の同心たちに目を向けた。
「分かっているとは思うが、ただ、浅草寺より追い出せばいいと言う訳ではない」
はあぴいを討った実績に期待しているのか、視線は景山に向く。
「旗本勢は、風雷神門の外、浅草広小路に陣を敷いておる。
そこへ誘導せねばならんのだ」
江戸の町を焼き払った明暦の大火の後、江戸の各地には、延焼防止のための大きな空き地が作られた。
これを火除地と言う。
広小路とは、通常より広く作られた路で、これも火除地に含まれる。
2000石の知行取り、沢村主税が指揮を執る旗本勢は、この浅草広小路に軍を展開させていた。
佐竹は、改めて、自分たちがせねばならぬことを説明した。
本堂前の魔獣を、今、潜んでいる宝蔵門へと誘い込んで潜らせ、そのまま、参道を約三町、追い立て、最後に、表門である風雷神門を潜らせる。
そこで、広小路で待ち構えている旗本勢が、弓矢、鉄砲を一斉に放ち、魔獣を仕留めるという手順である。
後藤が呆れたような顔をみせた。
「我ら奉行所が、難しいお膳立てをし、旗本は平らげるだけということですか。
旗本たちと、役割を変わってほしいものですな」
毒のある軽口だが、景山も同意したくなった。
佐竹は、後藤の軽口を黙殺した。
「本堂の後ろには、森原殿と石井殿が捕り方たちをまとめている」
佐竹は、他の与力たちの名前を口にした。
「さらに人数を回し、本堂の後から、一斉に追い立て、こちらに誘導する以外に、方法は無いか……」
言葉に迷いが感じられる。
佐竹自身も、それで成功するとは思っていないのであろう。
「追い立て役に襲い掛かるかも知れませぬ」
景山は、一番危惧することを口にした。
ヘタをすれば、人面鳥と戦ったとき以上の惨劇になる。
「一案があります」
景山が視線を向けると、田伏という若い同心であった。
あまり良い評判の無い男である。
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