奴隷商貴族の領地経営〜奴隷を売ってくれ? 全員、大切な領民だから無理です

秋田ノ介

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第37話 奴隷商、エルフのパンツばかり追いかけてしまう

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フェンリルとは何なんだろう?

僕はシェラが戦っている姿を見ながら考えていた。

巨大な狼と言えばそれまでだ。

しかし、あんな巨大な狼を見たことがあるか?

……あれ、魔法だよな?

しかも、フェンリルは角から雷のような魔法を当たり前のように使っている。

あんな狼はいない!

断言できる。

あれは……猛獣なんて言葉では言い表せない。

魔獣……そんな言葉がしっくりとくる。

だが、それを思いついた所で何が出来るわけでもないんだけど。

頑張れ!

心の中でそれを言うのが限界だ。

両者の戦いは一進一退といったところか。

シェラは魔法が使えない分、少々不利かもしれない。

だが、木をうまく利用して相手の攻撃を華麗にかわしている。

見てはいけないと思ってはいるが、どうしても目に写ってしまう。

シェラのパンツが……

僕はシェラの衣服をぎゅっと握っていた。

「これ、邪魔。持っている」

そう言って、豪快に服を脱ぎ、戦闘に赴いたシェラ。

シャツとパンツだけの出で立ちでフェンリルに挑む彼女は森の狩人になったのだ。

豊かな胸が森を駆け回ると大きく揺れる。

股を大きく開くことも少なくない。

……ダメだ。

集中するんだ。

この戦いで僕は学ばなければならないんだ。

シェラはそのために戦ってくれている。

戦いは長く続いた。

しかし、それも一瞬で勝敗が決したのだった。

「勝機!」

姿の見えない彼女の声が聞こえてきた。

直後、断末魔のような叫びが聞こえるのを最後に静かな森へと戻っていった。

終わったのかな?

「イルス。降りてくる」

シェラの姿にホッとすると同時に戦慄を覚えた。

「シェラ!! 服は……なんで、上半身が裸なんだ?」

大きな胸を恥ずかしげもなく晒しだす彼女に直視していいかどうか、悩んでしまう。

見ても……いいのか?

いいのか?

「服、返す」

そうだった……

服は僕が持っていたんだ。

もうちょっと見ていたかったが、残念だ。

「それで? フェンリルはどうなった?」
「逃した」

逃した?

なんか、妙な言い方だな。

最強の狩人を名乗っていたのに……

「追いかける」

何を? というのはおかしいか。

だが、逃したのならば、そのままにすればいいものを。

「子供、ダメ。大人、探す」

シェラはまだ戦うつもりなのか?

僕には子供のフェンリルにも苦戦しているように見えたが……

「大丈夫なのか?」
「分からない。でも勝つ」

物凄く不安しかないんだけど。

「とりあえず、皆と合流しないか? 討伐はそれからでも」
「ダメ。神孤には負けられない」

……何を言っているんだ。

僕は少し前のことを思い出していた。

「軍、雑魚。エルフ、最強」
「聞き捨てなりませんわ。エルフが最強ですって? 前は負けましたが、森では私に分があります。次こそは勝たせてもらいますわ」

……。

「そういえば、サヤサはどこに行ったんだ?」

この森に入るや否や、姿を消してしまった。

猛獣狩りって趣旨を分かっているかどうか怪しいからな。

また、晩飯用の獣でも獲っているのだろうか?

「知らない。獣に食われればいい」
「仲間なんだから、ちょっとは心配してくれ。とりあえず、戻ろうか」

サヤサも心配だ。

「ダメ。この近くに奴がいる」

奴? ……サヤサか。

それは好都合だ。

「すぐに行こう」
「承知!!」

僕はとんでもない間違いをまたしてしまった。

シェラがサヤサの心配なんてするわけがない。

奴って聞いて、僕はサヤサだと思った。

だけど、シェラにとって奴は……

「そうですよね」

フェンリルの巣がありました。

それはもう……先程のフェンリルが数十匹……いや百はいるか。

しかも、大きさが先程とは比にならないほど。

あの大きさで子供って本当だったんだな。

ああ……間違いない。

僕はここで人生が終わるんだ。

「獲物、たくさん。嬉しい」

何を言って……。

僕は手を伸ばした。

シェラを掴もうと思って。

だけど、彼女はすでにいなかった。

高い跳躍をしてフェンリルを頭上から攻撃を加えようとしていたのだ。

攻撃をすれば、シェラとて無事では済まないはず……

頼む……攻撃をしないでくれ……

「シェラ……?」

僕の願いが叶ったのか、シェラは空中では何もせずに着地をした。

そして、そのままフェンリルの群れをじっと眺めていた。

思いとどまってくれたのか……

「ふっふっふっ」

なんだ?

どこからか笑い声が。

フェンリルの群れの中?

「どうやら、今回は私の勝ちみたいですね! 私が最強!! 森の中では誰も勝てませんわ!!」

この声は……サヤサ!?

姿は見えないが、間違いない。

だけど、どうして……

「帰る」

シェラはそれだけを言って、僕の前から姿を消した。

えっと……僕も帰りたいんですけど……

フェンリルが物凄く睨んでくる。

怖い……

「サヤサ? ……サヤサ、いるんだろ?」

僕は恐る恐る声を掛けた。

ここでサヤサが出てこなかったら、僕の人生は終わりだ。

「なんでしょう。ご主人様」

いた……。

サヤサと出会えて、こんなに嬉しいことはなかった。

今まで、筋トレ馬鹿だと心に思っていたことを強く謝罪したい!

僕は近寄ってくるサヤサに抱きついた。

死地に現れた女神だ!

「ちょ……ご主人様。こんなところで……いけませんわ。もっと、落ち着いた場所で……」

ふう……相変わらずの勘違いをしてくれて良かった。

心がようやく落ち着く。

「サヤサは何をしているんだ?」
「見ての通りですわ」

見ての通り?

見ても何もわからないんだけど。

フェンリルが大人しくしているなぁ、くらいだ。

「えっと……もう一度、聞くけど。何をしているの?」
「調教ですわ。我が神孤族はすべての魔獣の頂点に立つ存在。いたずらをする、あの子達を躾けていました」

……全然分からない。

神孤族っていうのは、サヤサの一族のことだ。

その一族が魔獣の頂点?

というか、魔獣って言葉があったのか……。

それを調教? 全く分からない。

「それで調教は終わったのかな?」
「ええ。この子たちは私の言う事なら何でも聞きますわ。……整列しなさい!!」

……本当だ。

巨大なオオカミたちが従順な羊のように一列に並んでいる。

「お座り!」

おおっ!

「伏せ!」

おおおおおおっ!!

凄い!!

「ご主人様もやってみますか?」
「いやいや。そんなことは出来ないよ。さっきから睨まれているもん」

サヤサと話している僕を睨んでいることは分かっていた。

恐怖がそれを認めたがらなかったけど。

「大丈夫ですわ。さあ!」

「……立ち上がれ」

おおおおおおおおおおっ!!

フェンリルが立ち上がった。

でも、なんで?

「これですわ」

慎ましい胸の上に輝く奴隷紋。

つまり、サヤサの力を僕も使えるってことか?

いや、違うな。

サヤサが従えている者が僕にも従っているんだ。

凄い発見だな。

……だけど、これから、フェンリルたちをどうするんだ?
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